仮想通貨の税務申告
平成29年度の確定申告において、ビットコインなどの仮想通貨取引によって、一定の利益を上げた人には、所得税がかかることになります。
以下、概略を整理してみます。
1 株式投資との比較
株式の売買によって得た利益の税率は、分離課税方式で、他の所得と分離して、申告が
できることになっていて、しかも、税率は、一律約20パーセントなのに対し、仮想通貨
取引によって得た利益については、総合課税により他の所得を合算して、申告することに
なり、しかも、税率は、累進課税方式により、合算所得が多いほど税率も高くなります。
具体的には、課税所得金額(収入から各種控除を差し引いた金額)が
195万円以下の分 ・・・・ 5パーセント
195万円超~330万円以下の分 ・・・・10パーセント
330万円超~695万円以下の分 ・・・・20パーセント
695万円超~900万円以下の分 ・・・・23パーセント
900万円超~1800万円以下の分 ・・・・33パーセント
1800万円超=4000万円以下の分 ・・・・40パーセント
4000万円超 ・・・・45パーセント
この他、これに、一律10パーセントの住民税が加算されることになります。
2 取引利益の計算方法
原則 仮想通貨の(売却額-取得額=)差額が利益と見なされる。
注意1 仮想通貨の値上がりで、「含み益」が生じていても、売却しなければ
=すなわち、利益が確定していなければ、「利益」とは見なされないので、申告
の必要がないことになる。
注意2 仮想通貨の利益は、株の売買などの損失と相殺したり、仮想通貨取引自体によ
る損失を翌年以降に繰り越すことは認められていない。
3 今年平成30年になって、「含み損」が生じている場合
昨年は、仮想通貨一般の高騰により利益が生じていても、今年にはいって、コインチェ
ックによる顧客から預かっていた仮想通貨が流出したこと、国家機関による仮想通貨の取
扱業者に対する規制の動きなどの情報から、ビットコインほかの仮想通貨が大幅に値下が
りしてしまいました。
しかし、今年度に現在生じている損失状況は、あくまで今年度の所得にかかわるもの
で、昨年度の損益との通算は認められないわけですから、現時点で、昨年度分の取引利益
が巨額に上っていれば、多額の納税義務が生じており、今年になって被った損失とは関係
なく納税しなければならないことになります。
4 以上からすると、仮想通貨取引をしている人は、「利確」というタイミングを意識して
いる方がほとんどとは思いますが、昨年から取引している仮想通貨について、いつ「利
確」するかを慎重に見極める必要がありそうです。 (文責 弁護士 福島政幸)
以 上