重力
人間の身体は地球上で生活するようにできているので重力は常に一定方向にかかっています。
なるべく重力に逆らわないでいた方が楽です。
そこまでは誰でも考えることです。
人間の身体を構造物と考えて物理的に正しい位置というのを割り出して、これが正しく負担の少ない位置と言い張る訳です。
しかし、実際の臨床ではそれが叶わない。
やってみればわかるとおり叶わないことの方が圧倒的に多い訳です。
なぜでしょう?
構造物でありながら動物であるからです。
常に動くということを前提にしているからです。
静止物だと考えるとうまくいく範囲が極端に少なくなるという訳です。
そしてそれは個人的に全く違います。
例えば背中がかなり曲がった高齢者や側弯症の人などはどれだけ頑張っても正しい位置が基準とは合いません。
だから物理的に正しい位置が正解かというとそうではないということです。
その人にとって良い位置、その人にしか適応しない位置というのがある訳です。
だから静止構造物として人間の身体を見ても良い答えは導き出せません。
様々な症状を訴えている人にWii Fit のバランスボードで計ってみると結構中心に来ていることがあり、バランス的には悪くない。
Wii Fit は前後、左右の重心をリアルタイムで見ることができます。いわゆる動揺度を計ることができます。
様々な症状があっても重心は中央に来ている状態になっていることがあります。もちろんそうでない場合もあります。
この事実が単なる構造物でないということを物語っています。
動的構造物だということです。それは常に揺れ動いているということを意味しています。
ここが人間の身体の面白いところなんですよね。
感情にももの凄く左右されます。
例えば満員電車の中で真っ直ぐ立っていたとします。
かなり気を遣ってバランスをとるように立っています。
男性の場合なら目の前を美人の女性が良い香りを漂わせて通ったとします。
見ただけでアンバランスになるのです。
人によっては美人だということに反応する人もいます。
それと同時に臭いに反応する人もいます。
過去の記憶を呼び起こしたり想像力を働かせたりすることもあります。
注意がそちらにむく訳です。
それだけでバランスは変わります。
静止物なら美人が通ってもバランスが変わることはありませんよね。
これが人間です。
心の動揺と肉体の動揺は常に連動しているということです。
意識と動きは常に連動しているということです。
それを無視するからうまくいかないのです。