京都へでかけた日のこと、他2日

2022/09/02(金)

華族アンソロ。京都に残った公家華族を中心に据えたいと考えていたものの、具体的な暮らしがイメージができず悩んでいたところ石井行昌という人物に行き当たる。石井氏は明治中頃から大正にかけて京都の写真を撮影していた子爵。アーカイブに残された彼の写真はどれも素朴で写っている人物の表情も柔らかく惹かれるものがあった。夜はひたすらフリーペーパーを折り、手帳の日記を書く間も無く眠る。

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2022/09/03(土)

歴彩館へ。卒論のためにフィルムを見に行っていたかつての資料館の前庭には雑草が生い茂っていた。コンクリートから突き出た草々。少し高くなった空。歴彩館は何度か訪れたことがあるけれども目的を持って行ったのは初めてだった。石井氏の来歴についてまとめられた論文を複写したり博覧会の報告書や写真を閲覧する。別のテーブルでは古文書を見ながらタブレットにペンでさらさらと書き下している男の子がいた。時代は変わったと思うと同時にやることをやっている人はいつでも格好良いと思う。高速で複写し昼前に出る。

イカヅチうどんでとり天うどん。のちフリーペーパーと上林暁『文と本と旅と』を持って善行堂さんへ。ずっと気になっていた大阿久さんの『のどがかわいた』と置き去り詩人文庫の上井正三詩集を購入し、持参品をお渡しする。山本さんはフリーペーパー（私のものに限らず）は本を買ってくれた人を見て、合いそうだと思った方に手渡す、またネットを使って本を買う方の中には本屋のない地域の方もいるから、通販に封入すると仰っていた。この「本屋のない地域の人」のことが自然に想定されているのが、本屋のない地域に育った私には嬉しかった。「本は発売されたらすぐに買うべきだ」「古本なんてけしからん新刊で買うべきだ」というような地域や経済の格差なんて1ミリも想像されていない、それがマジョリティ側の言説だという自覚もなしに発せられる言葉に日々しんどさを感じているというところもある（もちろん作り手売り手側が発信するのは致し方ないと思う）。

今とか、すぐとか、新しいとか、今までにないとか、アップデートとか。それこそが価値あるものだという価値観から善行堂はいったん遠ざけてくれる。安心する。それは『文と本と旅と』を読んでいるときの体感に似ている。上林氏の私的な日記に登場するようにごくごく自然に描写される川端や谷崎。文学という権威からいったん遠ざけて彼らを見せてくれる上林氏の素朴な姿勢と文章に私は安心する。

私は地はミーハーだし、古本も（とういか本も）全然知らないし、上井正三氏のこともはじめて知ったし、夏葉社と善行堂がいなければ上林氏も知らないままだった。けれども私はこういう、昔のものが好きだったなあと、今この日記を書きながら、泣きそうになっている。

この日記も、未来に向けて、過去をのこしていくような感覚で書きたい。死んだ後のことを思うように、今はまだ私のことを知らない、後の人のことを思いながら書いてみたい。心象と情景のアーカイブを残すように本を作りたい。

山本さんは期待をかけるでなくごく自然に「このペーパーは続きがでるのですか」ときいてくださった。それがとても嬉しかった。

横断歩道を渡ると、夏の名残のような空に大文字がくっきり見えた。

次に恵文社へ寄り『昔日の客』を買う。これもずっと欲しかったので夏葉社フェアをきっかけに買おうと思ったのだ。しかしノベルティはなくなってしまっていたようだった。ペーパーの設置をお願いしてから叡電へ。元田中を過ぎたあたりから激しい夕立。西本願寺の特別拝観へ行こうと思っていたけれども疲れていたので諦めてどこかに入ることにする。帰りを見越して六曜社の地下へ。タブレットに考え事を書き殴る。落ち着いた後、寺町を南下。まだ開いていないサンボアを横目にムモクテキへ。セールでワンピースを買う。ロンドンヤでロンドン焼のヘギ10個入りをお土産にして帰路につく。安い居酒屋行きたいと言ったのを覚えていてくれたのか、家族で焼き鳥屋へ。座敷には子連ればかりで居心地が良かった。ハイボール2杯に日本酒2杯飲み、手帳の日記を書く間も無く眠る。

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2022/09/04(日)

夏頃に注文したカメラが届いたと連絡が来たので、図書館のちにショッピングモールへ。5年近く一緒にいた一眼レフを下取りに出す。5年使ってレンズへの執着がほとんどないという学びを得たので新しいカメラは高級コンデジの部類にあたるものにした。

対応してくれた店員さんは、私は数多い客の一人なんだよなあと感じるような接客で悲しくなった。今回は下取りがあったから店舗へ行ったけれども、ネットで買う方がストレスがなくいいなと思うことが年々増えている（神経質になっているだけなのかもしれない）。他の付属品も頼んでいたがキャンセルしネット配送に切り替える。