論文等:アメリカの公判外供述
法律時報2022年9月号から、連載企画「公判外供述の比較方研究」が開始されました。メンバーの中で私が最年長だということで、企画趣旨を書きました。また、連載の最初に扱う国がアメリカと決まり、私が最初に執筆することになりました。アメリカの公判外供述については、5回の連載となります。ご批判いただけますと幸いです。
以下に連載企画の趣旨の抜粋を掲げます。
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本企画は、刑事手続における公判外供述の証拠法上の取扱いについて、比較法および日本法における沿革を研究し、その成果を公表するものである。
周知のように、司法制度改革審議会意見書において直接主義・口頭主義の徹底が唱えられ、裁判員制度が導入されてから、伝聞法則とその例外の解釈や供述録取書の証拠採用の情況に影響を与えてきた。そのような状況下で、日本の伝聞法則および伝聞例外に関する諸規定を、比較法的あるいは沿革的に分析して相対化し、今後の解釈や立法において採りうる選択肢を意識することには、短期的にも中長期的にも意味があるものと考える。
また、公判外供述を証拠法上どのように取り扱っているかは、その国が証拠の採否においてどのような価値を重視しているかという問題や、捜査手続を含む証拠の保全の在り方、公判手続の在り方とも密接に関連している。公判外供述は、その国の刑事司法制度の特色や、その国が歴史的に重視してきた価値を浮き彫りにして、日本の制度を考える視点を豊かにする点でも、分析するに値する。
しかしながら、先行研究をみるに、諸外国の伝聞法則や直接主義について部分的に紹介するものは存在するが、その国の公判外供述の扱い全体を俯瞰する形で研究するものはごく限られている。また、1つの連載の中で複数の国々を扱うこと自体もこれまでにない試みであろう。
本企画では、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツ、戦前の日本を取り上げ、そこでの公判外供述の取扱いの全体構造を明らかにしていく予定である。【中略】
この企画を通じて、公判外供述の証拠能力の在り方について議論をする基盤を整備することを目指したい。この連載は、緑大輔(一橋大学)、斎藤司(龍谷大学)、成瀬剛(東京大学)、川島享祐(立教大学)、大谷祐毅(東北大学)、佐藤友幸(西南学院大学)の6名のメンバーで行う研究会の成果を公表するものである。公判外供述に関する議論がより一層多様な観点から活性化することを願っている。