絵本『めん たべよう!』
子供たちの視野や思考の広がりをどのように進めていくのかを常に考えていますが、一つの言葉の括りの中にどれくらいの種類があるのかを考えさせるように努めていると同時に、多角的に物事を見る癖もつけてほしいと常に願っています。そのようなことが楽しくできる絵本を取り上げます。
麺料理に焦点を当てたこの作品はうどん、スパゲティ、蕎麦、ラーメンの4つの括りの中でそれぞれにいろいろな種類の麺料理が登場します。
うどんの括りの中ではきつね、たぬき、月見、鍋焼き、おろし・・・同じうどんでもどこがどのように違うのかを視覚で楽しんで理解することができます。些細な事に気づく感度を持っている子供は、どうして油揚げがきつねで、天かすがたぬきなの?というような質問を持っています。その点に気づくかどうかが思考力の違いで、子供の中にそのような小さな疑問が生まれる環境を作ることが重要だと考えています。
さてきつねかたぬきかの答えですが、きつねは関西発祥で商売繁盛のゲン担ぎのきつねが好きな油揚げを載せたことが始まり、たぬきは関東発祥で天かすの色がたぬきの毛色を表すということが理由のようです。親もこのようなことを学びながら子供と楽しく会話をしてみると新たな視野や思考が広がるかもしれません。
次に登場するスパゲティに至っては日本発祥のナポリタンが真っ先に登場していますが、本場イタリア人にとってはナポリタンはパスタではないことも子供に伝えましょう。イタリア発祥の様々なパスタを作り、そのパスタ名をただの言葉として捉えるのではなく実体験で精査し、資格と味覚の刺激により違いを理解することが語彙力や思考力・暗記力を鍛えることにもなります。
小西英子氏の作品は細かな描写が美しく、さらに美味しそうに見えることが絵本の世界から現実世界へと導いてくれる魅力が詰まっているように思います。どのような食材が使われ、どのように調理され、盛り付けや器も併せて楽しんでいただけると注意力への働きかけにもなります。
先日ある生徒さんとウクライナ関係の話から小麦のみならずあらゆるものの値上がりで、大好きなスパゲティ麺を値上がり前に大量買したと話してくれました。このような会話を受けて「そうなんだね」と会話を終わらせてしまうよりも、お母さんの苦労や日常の変化を思考させると同時に新たな社会性の問題点を投げかけることも必要だと考えます。例えば食料の自給率問題や日本経済の置かれている状況、グローバルな世界に於いては他国の問題が生活に直結することなど視野を広げるための種蒔きを大人がどれだけできるのかにより、子供の視野や思考の広がりに影響を与えるのだと考え働きかけをしてほしいものだと考えます。
今回はこの絵本を通して麺料理にはたくさんの種類があることに気付くことから始めてみてはどうでしょうか。