「ローマの魅力まるかじり ―巡礼ルート⑤―」
巡礼路のコロナーリ通りのすぐ南に、ローマで最も人気のあるヴォーナ広場がある。極端に横長の楕円形をしているのは、古代の円形競技場跡に造られたため。噴水が3つある。北側の「ネプチューンの噴水」はジャコモ・デッラ・ポルタ作、そして真ん中はベルニーニの傑作「四大河の泉」(ちなみに、南側の「ムーア人の噴水」はベルニーニのデザインに基づくアントニオ・マーリ作)。
四大河はナイル、ガンジス、ドナウ、ラプラタで、それぞれの擬人像とその地域に棲息する動物がオベリスクをダイナミックに取り囲んでいる。この広場とそこに面するパラッツォ・パンフィーリを整備させた教皇インノケンティウス10世の 教皇紋章(パンフィーリ家)もしっかり刻まれている。やや見づらいが、オベリスクのてっぺんに目をやろう。何が載っているか?十字架ではない。「オリーヴの小枝を口にした鳩」。これもインノケンティウス10世の教皇紋章のデザイン。ベルニーニは単なる広場の装飾としてこの噴水を造ったのではない。直接の目的は依頼主である教皇の称揚だが、より大きくはキリスト教世界(カトリック世界)の称揚であり、それを通じての信仰心の喚起である。この泉で乾いたのどを潤したローマの民衆や巡礼者たちは、それを与えてくれる教皇、キリスト教(カトリック)に感謝の気持ちを新たにするとともに、世界(四大河が流れる四大陸)に君臨するキリスト教の偉大さをこの噴水から実感するのだ。この広場に立って、「四大河の泉」をじっくり眺めていると、バロック精神の何たるかがじわじわと伝わってくるように感じる。
(ナヴォーナ広場)
(ベルニーニ「四大河の泉」)
(ベラスケス「教皇インノケンティウス十世」ドーリア・パンフィーリ美術館)
(ネプチューンの噴水)
(ムーア人の噴水)