ことば
半世紀にわたる舞踊家生活を振り返りながら、さらなる未来への思いを込めて竹屋啓子が紡ぐ、いま、この時の<物語る>ダンス。
1.はじまりの時
ニューヨーク 1975~76
すべてはどのように始まるのだろう。はじまりというものなどは無いように、私には思える。そう、ただ、つづいているのだ。(マーサ・グレアム)
2.足もとの模様
ヘレン・ケラーに請われて、マーサは彼女に「ジャンプすること」を教えた。第一ポジションで宙をとぶマース・カニングハムの腰に手をあてた彼女は、やがて歓喜の表情を浮かべて言った。「考えることとおなじだわ。こころの動きとそっくりよ」
3.それぞれの場所
ただ野生の花は美しい、という理由だけで、道ばたの草木を守れ、と言っているのではない。秩序ある自然界では、草木はそれぞれ大切な、かけがえのない役目を果たしている。(レイチェル・カーソン)
4.物語
わたしのダンスは象徴的なものだと思う、と少女に言われた。その通り、と私は答えた。「あなたがオレンジジュースを飲むとき、あなたはオレンジの象徴を飲んでいるのです。わたしにとって、象徴化とはそんなことです。全体をあらわす何か」(マーサ・グレアム)
5.小さな祝祭
美は前に
美は右側に
美は左側に
美の中を歩く
我こそは美なり
(ナヴァホ族の唄/ナヴァホ族はアメリカ南西部の先住民族)
6.石の呼吸
どの技法にも流れというものがある。収縮では引いて、引っ張ること。内にこもってはいけない。収縮はとはポジションではない。何かに飛び込む動きである。水の中に投げ込まれる小石のようなものだ。(マーサ・グレアム)
7.はじまりの時 ふたたび
Sens of Wonder/神秘さや不思議さに目を見張る感性(レイチェル・カーソン)