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旅の記憶。

森鷗外が俄然、輝きを増す(かもしれない)。

2018.02.19 15:00

ちょっと前ですが、千駄木にある森鷗外記念館に行って来ました。こちらで開催されているイベント「鷗外ミーツアーティスト」という企画展に興味がありまして。

この日は川崎市で開催されてたMJ(みうらじゅん)フェスにも行ったというなんとも落差のあるアートな一日。みうらじゅんについては長編コラムくらい長くなりそうなのでまた後日(多分)。


かつて鷗外の邸宅であった「観潮桜」を訪れた美術家たちの作品を展示。小説家、翻訳家、陸軍軍医など八面六臂の活躍で知られる鷗外は美術に対しる厳しい批評家でありつつ、良き理解者だったそうな。鷗外に作品を評価された洋画家・藤島武二、鷗外作品のモデルにもなった水彩画家・大下藤次郎、東京美術学校で鴎外の講義を受けた彫刻家・高村光太郎、鴎外の著書の装丁を多数手がけた洋画家・長原孝太郎などなど美術界における旧派と新派の価値観がせめぎ合う中で、鷗外は彼らにどのような眼差しを向けてきたのでしょうか。そして美術家たちの眼は鴎外自身と鴎外作品に何を見出したのでしょうか。観潮楼に届いた美術家たちの書簡、鴎外の美術批評、鴎外作品を彩った装丁本など当館のコレクションを通して、「鴎外が見つめた美術家」と「美術家が見つめた鴎外」に迫ります(森鷗外記念館HPより)。

中学生の頃からサブカル街道まっしぐらだった私。その時出会った太宰治の「津軽」を読んで以来、もはや太宰はアイドル化しているところがありまして。最初に出会ったのが太宰作品の中でも比較的明るい「津軽」だったのが良かったのでしょう。「人間失格」だったら今以上に厄介なめんどくさい人間になっていたかもしれません(十分めんどくさいけど)。

太宰治、夏目漱石、坂口安吾、萩原朔太郎、谷崎潤一郎を読み漁りながらマイケルを聴き、後にエレファントカシマシにガツンとやられ、今に至る。
当時、太宰を片手にインディーズのライブや小劇場の芝居なんかにひとり足を運んでおりまして。今思うと、"みんなとはちょっと違うあたし”、に酔っていたところもあったんだろうなぁ。

そんなちょっとめんどくさい学生時代を送ったわたし。いわゆる文豪の作品はひと通り読んだけれど、森鷗外は、鷗外にについてはどーも食指が動かなかった。


だって難しいんだもん。

いっこも面白いと思えなんだもん。



「青春」「山椒大夫」「舞姫」「雁」。名作と言われる作品は数多くあれど、完読したのって多分「雁」だけ。しかも相当頑張って。。。「青春」に至っては5〜6回手にとったけれど、途中挫折。「舞姫」の主人公太田豊太郎については大嫌いです。


夏目漱石が大衆向けなら、鷗外は学者向け。これは父が言った言葉。おばかな私にはわからなくて当然という父なりの慰めだったのか?

ぶっちゃけますとですね、日露戦争における鷗外の行動が好かんのです。鴎外は当時、「意地」だけで麦飯導入を拒んだことで約25万人の脚気患者を生み出したと言われています。 戦中戦後、鴎外を非難する声は陸軍内部にもあったのに、けっきょく鷗外が責任を取ることはありませんでした。 農学者・鈴木梅太郎がビタミンを発見したのちも、鷗外は一貫して細菌説に固執。そして、その筆力をもって栄養説を批判、鈴木を罵倒する論文をたびたび発表。。。  「農学者が何を言うか、糠が効くのなら小便でも効くだろう」とまで言ったとか言わないとか。

それは鷗外の側面の一つでしかないことはわかるけど、いかんせん難解な書物も合間って、生理的に受け付けない文豪・鷗外。でも、「鷗外ミーツアーティスト」に出かけたことで、ちょっと印象が変わりました。

堅苦しい頑固者の鷗外が、美術家たちの良き理解者だったということ。印象的だったのは画家・宮芳平との交流です。 鴎外が審査主任を務めていた文展に落選し、その理由を尋ねるため観潮楼を訪ねてきた宮。宮の純粋な性質を見抜いた鴎外は、良き理解者として彼を支えたとのこと。無名だった宮の作品を購入し、観潮楼の居間に飾っていたそうです。

そのほかにも、美術家たちが鷗外に寄せた書簡なども展示。「権力大好き・俺天才」という印象だった鷗外のあたたかい部分に触れられたようで。なんだか優しい気持ちになった。

記念館の庭にあるこのイチョウは、鷗外が生まれる前からあったもの。

鷗外がドイツに留学していたことにちなんで。カフェではドイツプレートがいただけます。

鷗外どら焼きをお土産に。


さてさて。私の偏見とは裏腹に。鷗外が好きすぎて歌にまでしちゃったのがエレファントカシマシの歌係・宮本浩次。「鷗外ミーツアーティスト」を観たことで、彼の目に映る森鷗外に近づけたとは言いません。でも、少しだけ、ほんのちょびっとだけ、わかるような気がしないでもない。
なんちゃって。