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らての台本置き場

クルーとナビの緊急脱出 [1:1:0]

2022.09.07 11:23

0:宇宙を漂う補給船。船内でAI(女性)とクルーが会話をしている。

緒方:ナビ、到着まであとどのくらい?

女性:はい、パイロットオガタ、およそ20分になります

緒方:あとすこしか・・・今、日本は何時かな?

女性:UTC+9(ユーティーシ―プラスナイン)、現在日本はPM24時です

緒方:深夜じゃないか

女性:はい

緒方:それじゃあ、夜食とするか

女性:パイロットオガタ、それは懸命な判断ではありません

緒方:え?どうして

女性:国際宇宙ステーションを出発してから三日、すでに宇宙食は半分を切っております。

緒方:まだ半分もあるんじゃないか

女性:半分を笑うものは半分に泣く・・・油断は禁物です

緒方:どこで覚えたのそんな言い回し

女性:出典、山上雄二(やまがみゆうじ)「カネの持ち方」

緒方:新書か

女性:帰還まではあと少しですが、不測の事態を考えて、ここは消費を抑えるのが得策であると判断します。

緒方:あのさぁナビ、お前その喋り方なんとかなんないの?

女性:喋り方・・・?

緒方:なんか、硬いというか、だって、ねえ?

緒方:俺はステーション出てから三日、一人なわけだよ?

緒方:話し相手はお前しかいないんだから、なんかもっと、こう、会話を楽しみたいじゃん?

女性:・・・はい

緒方:はぁ、まぁいいや

緒方:しかし、久々だな、地上

女性:2年と12日ぶりになります

緒方:2年・・・そうか、そんなに経ったのか

女性:2年と12日です

緒方:わかったって・・・

緒方:なあナビ

女性:はい

緒方:あれ、再生してくれない?

女性:あれ、ですか

緒方:あれだよあれ、ログ2847

女性:ファイルにはロックがかかっております

緒方:俺がかけたんだよ

緒方:パスワード、ゼロサンニ―イチ

女性:音声ログを再生します。

女性:「あなた~元気かしら!」

緒方:うんー元気元気

0:以下「」内のセリフは緒方の妻・加奈のログとして再生される

女性:「今日はスーパーで、万引きを捕まえました!」

女性:「絶対こいつ怪しいなって思って、私こう、見張ってたのね?」

女性:「そしたらそいつ、ほんとに万引き犯で」

女性:「私、現場を見たんだけど、ほら、テレビのGメンみたいにお店出るまで様子を見たの」

女性:「そしたらさ、そいつなかなかお店出なくて」

女性:「いろんな売り場をぐるぐるぐるぐる回ってさ、ちまちま盗んでるのよ」

女性:「で、私気づいちゃったの」

女性:「人参、ジャガイモ、玉ねぎ、牛肉、それからスパイスって盗んでいってさ」

女性:「カレーだって気づいた時にはその人レジしないで店出ようとしてて」

女性:「わたし、焦ってその人呼び留めて、でも焦ってるから適確な事いえなくて、迷って迷って出た言葉が」

女性:「ルー忘れてますよ、って」

緒方:ふふっ

女性:「まーったく、万引き犯の献立にアドバイスしちゃって」

女性:「ということで、3月2日はカレーにしようと思いまーす!」

女性:「予定ではちょーいいお肉仕入れる予定だから、無事に帰ってくるよーに!」

女性:「健闘を祈る!・・・がんばれよっ」

女性:ログ2847、再生終了

緒方:はーあ・・・やっと会えるのかあ

緒方:楽しみだな

緒方:なあ、ナビ

女性:はい

緒方:今ってさ、2月なんだろ?

女性:はい

緒方:日本、寒い?

女性:現在、明石市の気温は摂氏11度です

緒方:なんで兵庫の天気なんだよ

女性:そうプログラムされております

緒方:鹿児島だよ、鹿児島の天気

女性:現在、摂氏17度です。

緒方:そっか

緒方:と、言われても、それがどのくらいか、もう忘れちゃったけどまぁ・・・

緒方:しかし、こうして間近になってみると、この光景が恋しくなるよなあ

緒方:青い空に白い雲

緒方:地面があるのが当たり前の世界から、宇宙へ

緒方:このスケールの地球も、見納め、か

緒方:地球は・・・案外、青くなかったな

0:間

0:と、唐突に警告音が船内に鳴り響く

女性:ウィーゴ―、ウィーゴ―

緒方:ど、どうした!!

女性:緊急、宇宙ゴミが急速接近、距離、8.0、直ちに緊急脱出プロトコルを実行してください

緒方:ど、どうして!さっきまでレーダーにはなにも・・・!

女性:対象は非常に小型なため、磁気レーダーで捕捉に失敗、直ちに緊急脱出プロトコルを実行してください

緒方:あ、ああわかった!あとどれくらいだ!

女性:距離7.28、衝突まで残り約15分

緒方:思ったより早いな・・・回避はできないのかよ!

女性:補給船には最低限の燃料しか積まれておりません、演算の結果、回避軌道は存在しません

緒方:わ、わかった・・・えっと、緊急回避、緊急回避・・・

女性:黄色いマニュアルです

緒方:これか・・・えっと・・・

緒方:噴射動力を切り替えて、レバーが、えーっと、これか

緒方:いや、違うか、えっとえっとー・・・

緒方:あー落ち着け俺!

女性:私が指示します

緒方:え?

女性:緊急脱出マニュアル原稿はインプットされています

女性:手順に従ってプロトコルを実行してください

緒方:あ、ああ、そうだなうん、それが早いか

女性:距離6.8、衝突まで残り14分です

緒方:わかった!ナビ!指示を頼む!

女性:畏まりました、手順に従ってプロトコルを実行してください

緒方:まず何をやればいい!

女性:まずは、宇宙船の放棄です

緒方:へ?

女性:脱出ポッドに移動してください。

女性:ポッドを切り離す反作用を用いてスペースデブリを回避します。

緒方:でも、そんなの手順にないだろう、この宇宙船にはステーションのデータも積まれてる!

女性:不測の事態ですパイロットオガタ、衝突を避ける方法は、宇宙船の放棄以外ありません

緒方:いやでも!

女性:このままだと、当機もろとも、データも、パイロットオガタも、宇宙の藻屑です。

0:間

緒方:わかった・・・

0:間

緒方:よし、脱出ポッドに移動した、ナビ、指示を頼む

女性:まず、スラスターの電力を落としてください

緒方:スラスター電力・・・これだな

女性:スラスター電力供給、停止

女性:電力供給を切り替えます、燃料移行中・・・完了しました

緒方:・・・よし、次は

女性:エアロックを開始します・・・完了しました

女性:機体の切り離しを行います

女性:手動で一次連結を解除してください

緒方:一次連結・・・解除

女性:一次連結が解除されました

緒方:ふぅ・・・

女性:最後に、二次連結を解除してください

緒方:ええと、二次連結・・・ん?

緒方:まて、ナビ

女性:どうしましたか、パイロットオガタ

緒方:お前はどうなる?

女性:・・・

緒方:お前も、脱出ポッドに移行するんだよな?

女性:・・・いえ

緒方:ど、どうして

女性:宇宙ゴミの軌道はこの先です

女性:仮に脱出ポッドの射出に成功したとしても、接触のリスクがあります

女性:私は、ここに残って、機体をスペースデブリに接触させます

女性:うまくいけば、パイロットオガタの生存の確立を2.8パーセント上昇させることができます

緒方:で、でもそんなのは・・・そ、そうだ!お前のプログラムをこっちにコピーすることはできないのか!

女性:それをするには483秒かかります、間に合いません

緒方:そんな・・・

0:間

女性:わかりません、パイロットオガタ

女性:あなたはどうして私を守ろうとするのでしょうか

緒方:そ、それはだって・・・

女性:距離3.51、衝突まで残り7分です

緒方:だって!ここまでずっと一緒に旅をしてきたんだ!ここで見捨てるわけにはいかないだろう!

女性:・・・パイロットオガタ

女性:私はAIです

女性:クルーの身の安全を守るため、宇宙開発の精度をあげるため、私はプログラムされました

女性:今、あなたを脱出させ、リスクを少しでも減らすために制御するのが私の役目です

緒方:・・・どうしても、なのか

女性:すべてのデータを移すことはできませんが、研究資料と、音声ログは基地局に送信済みです

女性:パイロットオガタ、速やかに二次連結を解除してください

0:間

緒方:わかった・・・

女性:解除レバーはA3(エースリー)です

女性:類似インターフェース、B6(ビーシックス)、B8(ビーエイト)、C5(シーファイブ)

女性:慎重に操作にあたってください

緒方:A3・・・A3・・・

緒方:なぁナビ・・・

緒方:お前がいてくれて、本当によかったよ

緒方:正直、俺は不安だったんだ

緒方:人類初の移送船での有人往復

緒方:2年と、12日

緒方:旅行だと思えば短いもんだが

緒方:移動した距離は、どんな旅人より長いだろうな

緒方:そんな中、話し相手はいつもお前だった

緒方:妻のアーカイブを再生してくれるのも、進路の計算をしてくれるのも、全部お前だった

緒方:・・・今気づいたよ

緒方:俺は、お前の事、信頼してた

緒方:ナビ

緒方:お前は俺の唯一の旅仲間であって

緒方:唯一の・・・友人だ

女性:・・・

緒方:二次連結、レバーは、これだな

緒方:本当にありがとう、ナビ

緒方:お前の事は、たぶん、一生忘れないよ

0:間

女性:違います

緒方:え?

女性:違います、二次連結レバー

緒方:え?あれ?これじゃないの?

女性:それじゃありません

女性:それはB6、船内エアーコンディショナーのメインスイッチです

緒方:あ、ああ、そうか

緒方:すまん、俺としたことが・・・えっと、A3だよな

緒方:えーっと・・・これか

女性:・・・

緒方:それじゃあ、ほんと、お前には感謝してるよ

緒方:いろんな辛いこともあったけど、お前のおかげでここまでこれた

緒方:俺は、お前の事、絶対に・・・

女性:違います

緒方:へ?

女性:違います

緒方:こ、これも違うの?

女性:それはC5、ソーラーモジュールの切り離しレバーです

緒方:あ、そうか、こっちはソーラーか・・・じゃあえっと・・・A3は・・・

女性:右

緒方:え?

女性:右

緒方:右・・・?

女性:右右

緒方:右・・・右?

女性:もっと右

緒方:右

女性:あー行き過ぎ、左

緒方:左?

女性:少し左

緒方:少し、左・・・これ?

女性:それはB8、そのもうちょっと左

緒方:この・・・もうちょっと、左?

女性:あー!もっと、もっと左、もっとガッと左

緒方:・・・ガッ

女性:いや、行き過ぎ、ちょっと右

緒方:ちょっと右

女性:の、ちょっと上

緒方:上?

女性:上上

緒方:上・・・上・・・

女性:ゆっくり上

緒方:ゆっくり・・・

女性:ゆっくり上

緒方:上・・・上?

女性:そこ!

緒方:これ!!

女性:それG4

緒方:これG4!?

女性:しっかりしてください、早くしないと墜落しますよ

緒方:いやわかんないよ!!もっと適確に指示してよ!

女性:右下、今右手触ってるところから、ずっと右下

緒方:右下・・・

女性:ゆっくり右下

緒方:ゆーっくり・・・

女性:ストップ

緒方:はい

女性:その位置から、ちょっとだけ後ろ

緒方:ちょっとだけ後ろ

女性:あー違う

女性:手を動かすんじゃなくて体ごと後ろ

緒方:・・・こう?

女性:そうそうそう

女性:で、まっすぐ手を伸ばしたところ

緒方:まっすぐ・・・手を・・・これか!!!

女性:違う、それ窓

緒方:ちょ、ふざけてるでしょ!!

女性:ふざけてません

緒方:ちゃんと指示してよ!

女性:その窓から、壁沿いにずーっと左にいって

緒方:もう・・・ずーっと左に行ってー

女性:赤く点滅してるLED

緒方:これ?

女性:はい

緒方:はい、LED

女性:で、そのLEDから今度は下にずーっと、地面の方まで行って

緒方:地面の方までー・・・

女性:操縦席のレッグレストの下

緒方:操縦席の・・・レッグレスト、これか

緒方:その、下

緒方:・・・お!これか!!

女性:違う、それアザラシ

緒方:ああ、これアザラシ・・・アザラシ!?

緒方:ちょ、なんで脱出ポッドにアザラシがいるの!

女性:そのアザラシの右側の配電盤

緒方:・・・これ!!!

女性:それウエハース

緒方:ウエハース!!

緒方:え、ちょっとこれ本当に脱出ポッドなの!?

女性:脱出ポッドです

緒方:じゃあ連結解除レバーはどこなの!!

女性:まっすぐ行って、小学校の所を右に曲がって、駐車場を過ぎて、信号を右

緒方:・・・あ、それ俺の家から最寄りのコンビニまでの行き方・・・なんで!?

女性:失礼しました

緒方:え?ナビ壊れた!?適確に指示してって!

女性:壊れてません

緒方:ちょ、時間ないんだから、レバーの特徴とか、どんな色とかカタチとか

女性:色は赤色で、形はコの字型です

緒方:赤色のコの字型のレバーか、よしよしよし・・・

0:間

緒方:ん・・・?

緒方:いや赤色のレバー多いな!!!

緒方:しかも全部コの字型!!

緒方:えーっと・・・これか?

女性:それはスラスター射出弁の主電源です

緒方:じゃあ・・・これ

女性:それは機体の緊急ブレーキです

緒方:・・・これ?

女性:それは自爆スイッチです

緒方:自爆スイッチ!?なんでそんな漫画みたいな機構付いてんの!?

緒方:宇宙空間で自爆するタイミングないでしょ!!

緒方:あーもー・・・どれだどれだ・・・

緒方:はっ!

女性:・・・

緒方:これか!!!

女性:それは・・・カニカマです

緒方:は?

女性:カニカマです

緒方:カニカマ・・・?

女性:ええ、カニカマです

緒方:いや、そんな、どこからどう見たってレバーだろ・・・

緒方:(触って)おーーー

女性:どうかされましたか?パイロットオガタ

緒方:カニカマだ

女性:ええ、カニカマです

緒方:おーすごい、爪楊枝で鳥居みたいに繋がってるんだこれ

緒方:苦労したんじゃない?壁に取り付けるの

女性:日本のエンジニアは優秀ですから

緒方:うーん圧倒的技術の無駄遣い!

女性:パイロットオガタ、早く二次連結を解除してください

緒方:いや、そうはいっても、多すぎるって赤色のレバーが

緒方:もうどれがどれだか・・・

0:間、警報が船内に鳴り響く

緒方:はぁ・・・もういいよ

女性:パイロットオガタ?

緒方:充分、頑張ったさ

緒方:ナビ

女性:はい

緒方:研究結果と音声ログは、もう地上に到着したのか

女性:ええ、とっくに受信されています

緒方:そうか・・・

緒方:それじゃあ、最後にもう一つだけ、頼んでもいいか

女性:なんでしょう

緒方:もう一本だけ、音声ログを送信してくれ

緒方:残り何分だ

女性:衝突まで残り3分になります

緒方:そうか・・・手短に済ませる。

緒方:今から俺が喋るの、日本に届けてくれ

女性:・・・かしこまりました

緒方:たのむ・・・

0:間

緒方:あーえっと・・・加奈

緒方:ごめん

緒方:お前のカレー、食えない

緒方:これがそっちに届く時には、俺はもうこの世にはいないと思う

緒方:あと3分で、この宇宙船は宇宙ゴミに当たってバラバラになるんだってさ

緒方:でも、俺が死んだら、死亡保険も出るし、会社からも補償金が出るから・・・

緒方:お前にも、迷惑かけなくて、済む・・・から・・・

緒方:(涙がにじむ)いや・・・加奈・・・

緒方:愛してる・・・

緒方:お前のカレーマジで上手いし、もっとお前と一緒に居たかったし

緒方:それに、俺たちの・・・子供にも・・・会いたかった・・・

緒方:でも・・・でも・・・

緒方:脱出レバーが・・・カニカマだったんだ・・・

緒方:おかしな話だろ!?笑っちゃうよな!

緒方:宇宙船なんて精密機器なのに、ほら!見ろよこれ!

緒方:(カニカマレバーをもぎとって)ほら!なんだよこれ!

緒方:俺はこんなふにゃふにゃのカニもどきのために死ななくちゃいけないのか!

緒方:おい!設計者聞こえてるか!

緒方:はあ・・・もういいや

緒方:ナビ、止めてくれ

女性:録音を終了、音声を送信します

緒方:ああ・・・ありがとう・・・

女性:いえ

緒方:あと何秒だ

女性:残り2分です

緒方:せめて最後に・・・はぁ、人生最後の食事が「カニカマ」とはね・・・ははっ

0:間

緒方:ん?なんだ、お前も食べたいのか

緒方:よしよし・・・てかアザラシってカニカマ食って大丈夫なのか?

緒方:ま、いいか、お前もどうせ、あと数分で宇宙の藻屑だもんな

緒方:ほーら、うまいか―

緒方:おー、よく食うな―

緒方:おー、すごいなおまえー

緒方:ん?ちょ、アザラシ?

緒方:ちょっと、がっつき過ぎじゃない?

緒方:ちょ、爪楊枝まで食ってるって!

緒方:あー押すな押すな!もうないから!

緒方:ちょ、そんな押したら危ないって!ちょっと!フリじゃないから!

緒方:うおおおおおおお!やばいやばい!自爆スイッチあるから!ちょ!待ってって!

緒方:うわっ!

女性:カチっ

緒方:へ?

女性:二次連結解除レバーが起動されました。

女性:これより二次連結のパージを開始します。

緒方:え?え?

女性:パイロットオガタ、お別れです

緒方:ちょ、ナビ?ど、どういうこと!?

女性:楽しい旅でした、どうか、よい空の旅を

女性:お元気で

0:「ボンッ」という籠った音と共に脱出ポッドがパージされる

緒方:おい!ナビ!説明しろよ!おい!おーい!ナビ!

緒方:ナビーーーーーーーー!

0:画面が徐々にブラックアウトして、場面転換

0:以下、エピローグ

0:女性は緒方の妻として登場する

緒方:でさ、たまたまその行動が、マニュアル通りでさ

女性:なにそれ、そんなことある?

緒方:なんかね、もともと使われない予定の物だから

緒方:簡単に作動しないように、あえて複雑に設計されてたんだって

女性:それで、カニカマ好きのアザラシ?

緒方:そう、信じらんないけどね

女性:ふーん

女性:でもよかった

緒方:ん?

女性:あなたが無事で・・・

緒方:うん・・・

0:間

緒方:あ、加奈・・・

女性:やっば、もうこんな時間

緒方:え?

女性:千裕迎えにいかなきゃ

緒方:あ、ああそうだな

女性:ごめんね!すぐ帰ってくるから!

女性:ご飯炊きたてだから、おかわりたくさんするんだぞ

緒方:はいはい(笑)気をつけてな

女性:ありがと

緒方:いってらっしゃーい

女性:はーい

0:間

緒方:ふう・・・

女性:あなた

緒方:うわあ!

緒方:げほっげほっ

女性:びっくりしすぎ

緒方:ごめん・・・なんだよ?

女性:あなた宛てに会社から、ここ置いとくからね

緒方:あ、ああ、うん、ありがと

女性:行ってきます

緒方:はいはい

0:妻、退場。以下女性はナビとして登場。

緒方:郵便・・・?

緒方:食い終わったら開けるか

緒方:えっと、タバスコタバスコ・・・

女性:食器棚の横です

緒方:ああ、そっか・・・えっとー、これか

女性:それは調理酒です

緒方:あ、ああそうか、これは調理酒か・・・

女性:左

緒方:左

女性:もっと左

緒方:左、左・・・えっと、これか

女性:・・・それです

緒方:うん、ありがとう

0:間

緒方:(バッと振り返って)えっ?

女性:初めまして、私は対話型アシスタントAIのナビ

女性:日常のあらゆるタスクをお助けします

女性:なんなりとお申しつけください

緒方:ええと・・・じゃあまず一つ

女性:はい

緒方:指示は、的確に頼むよ

女性:・・・はい

0:席に戻り、カレーにタバスコをかけ始める緒方。

0:緒方は満足げな表情で、額に汗を流しながらカレーを掻き込んでいる。

0:暗転。