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らての台本置き場

静かな夜のソノリティ [0:0:2]

2022.09.07 11:29

0:二人はキャンプを終えて、バンガローに戻ってきて、しっぽり飲んでいる。

上村:カンパーイ

笹本:か、乾杯

0:酒を飲む二人

上村:あーづがれだー

笹本:ほんとだね

上村:キャンプってこんなに疲れるもんだったっけ

笹本:全部自分たちでやったからね

上村:いやーほんと、笹本様様だよな

笹本:あはは

上村:ここ以外にもあるんだろ?こういうとこ

笹本:そうね、ばあちゃんのだから具体的にどれだけあるかはわかんないけど

上村:すげーよな

上村:だってあれだろ?極端な話、火つけて山火事起こしてもお咎めなしってことだろ?

笹本:そんなことしないでよ・・・?

上村:極端な話だよ、たとえたとえ

笹本:うん、まぁ、そうね、基本は好きにしておっけーだよ

上村:ははーん

0:少しの間

上村:しっかしまぁ、まさかお前とここまで仲良くなるとはな

笹本:うん、それは確かに

上村:俺お前と高校の時出会ってたら100パーいじめてた

笹本:ひどいなぁ

上村:大学でよかったよ、ほんと

笹本:でも僕(私)も、上村君みたいな人、いままで喋ったことすらなかったから、最初はちょっと怖かった

上村:え?俺が?

笹本:うん

笹本:結構威圧的だったし

上村:ええ?そうだった?

笹本:そうだよー

上村:俺はただ迷ってただけで

笹本:体育館どこかしってる?って

笹本:上村君の後ろに、でっかい字で体、育、館って書いてあるんだもんなぁ(笑)

上村:いやね?俺もうっすら思ってたのよ?これが体育館じゃねーかなーって

笹本:嘘だ(笑)

上村:いや、ほんとほんと

笹本:あはは

0:間

笹本:あ、上村君さ

上村:ん?

笹本:統計学のレポートなに調べた?

上村:は?

笹本:統計学、取ってたよね?

笹本:レポート、なんか題材迷っちゃってさ

笹本:先生なんでもいいって言ってたけど、ミクロに行くかマクロに行くか・・・

上村:なあ笹本

笹本:ん?

上村:お前真面目過ぎ

笹本:えっ?

上村:あのさ、周り見てみろよ

笹本:周り・・・?

上村:ほら、見まわして

笹本:え、うん・・・

0:周りを見回す笹本

笹本:うん

上村:何が見えた?

笹本:えっと・・・丸太の、壁?

上村:(大きくため息をつく)はぁ・・・

笹本:な、なに?

上村:それだから彼女(彼氏)できないんだよ

笹本:どういうこと!?

上村:いいか、笹本

笹本:う、うん

上村:人里離れた山の中、小屋の中には暖炉があって、室内を温めてる

上村:ランプの明かりが、少し不格好でささくれたログハウスの壁を照らして

上村:小さく囲われた窓の外、澄んだ空気のその先には、何千万年(なんぜんまんねん)前の光が・・・

笹本:光?

上村:星だよ

笹本:え、星の光って数十年とか多くて何百年なんじゃない?

上村:あ?

笹本:だって、見える天体で一番遠い星でも250光年だし、何千万年(なんぜんまんねん)前の光ってなるとそれはもう・・・

上村:あーうるさいなあ!

笹本:ええ・・・

上村:いいの!そういう細かいのは!

上村:要はな?今を楽しもうって事だよ

上村:俺らはこうして旅行に来たわけなんだから、レポートの話なんかは無し!

上村:ほら、酒飲んでさ、今日はお互いの事、語り明かそうぜ

笹本:(少しうとうとして)語り明かす・・・

上村:そうそう!

上村:特にお前、なんか頭カチカチって感じだしさ

上村:たまにはやわらかく、今を楽しもうぜ

笹本:そうだね・・・

上村:ほら、グラスが空ですよー

笹本:(ちょっと目覚めて)あ、ああ、ありがとう

上村:いいのいいの

上村:はい乾杯

笹本:うん、乾杯

0:二人、二敗目を飲み干す

上村:ぐぁー効くぜ・・・

笹本:上村君、お酒強いよね

上村:まあな、俺のこれは親譲り

笹本:お父さん?

上村:も、母ちゃんも、どっちも

笹本:へぇ

上村:うち、地元が鹿児島だからさ、水みたいに焼酎飲むのよ

笹本:あ、なんか聞いたことあるそれ、度数が違うんでしょ?

上村:そうそう、俺から言わせればこっちの焼酎は薄いね、ティッシュよりペラペラ

笹本:そんなもんなのかぁ

上村:笹本は?

笹本:え?

上村:地元

笹本:ああ、僕は北海道

上村:おお、いいねえ北海道

上村:どこ?札幌(さっぽろ)?小樽(おたる)?色丹(しこたん)?

笹本:最後ロシアだけど、北見(きたみ)ってとこ

上村:北見・・・

笹本:知らない?

上村:知らん。何があんの。

笹本:えっとね、サロマ湖

上村:オスカー・ワイルド?

笹本:それサロメ・・・上村君ってものしりだよね

上村:お前には負けるよ

上村:でもそーかー、北海道かー

上村:いいなー、雪とか降るんだろ?

笹本:当たり前にね(笑)

上村:へぇー、うらやましい

笹本:あはは・・・

上村:でも、結局人間ないものねだりだよな

笹本:(また眠気が襲う)まぁねぇ・・・

上村:北海道の人からして見たら、雪降らない方がいいのかもしれないし

上村:この前俺もさ

上村:佐伯(さえき)に「海いいなー」って言われて

上村:ほらあいつ群馬じゃん?

上村:俺は、海あるの当たり前だったから、そういう感覚なのかってびっくりしたよ・・・

上村:あれ?北見って海ある?

0:うとうとしている笹本

上村:笹本?

笹本:んっ、はっ、えっと、はい

上村:・・・

笹本:北見ね・・・玉ねぎが有名だよ

上村:笹本?

笹本:ん?

上村:眠いの?

笹本:ん、ううん、眠くないよ

上村:嘘だ、眠そうだよ

笹本:・・・うん

上村:なんだよ、眠いなら言えよな

笹本:いや、でも・・・

上村:いいよ、ほら、明日もあるんだし、疲れたよな

笹本:うん・・・

上村:寝よ寝よ

笹本:うーん・・・

上村:ほら、お前そっちな、俺片付けやっとくから

笹本:うん・・・

上村:はい、はいはいはーい、おやすみー

笹本:うん、おやすみ・・・

上村:はいおやすみ

0:間。

上村:(伸びをして)うーーーん

上村:暖房、危ないな・・・消しとこ

上村:・・・さてと、片付けちゃうか

上村:えっと、ビニールビニール

上村:で、缶と、缶と、缶、ビン、ビン、缶

0:笹本はごみの仕分けを始める

0:すると、笹本が口を開く

笹本:ズゴビン

上村:ん?

笹本:(すやすや寝てる)

上村:笹本?

笹本:(すやすや寝てる)

上村:気のせいか・・・

上村:えっと、缶、ビン、缶・・・

笹本:ズゴビン

上村:え?

0:間

上村:笹本?

笹本:・・・ズゴビンドン

上村:・・・何?

笹本:ズ・・・

上村:ず?

笹本:ズズ・・・

上村:ずず・・・?

笹本:(これでもかというほど大声で)ズゴビンドン、ドンドラ、バギボンドン!!!!

上村:うわぁ!

0:立ち上がる笹本

笹本:バンドラ!ボギンドン!ドンゴラズゴバンドン!ズゴバンドン!

上村:ちょ、さ、笹本!?

0:踊り出す笹本

笹本:ゴリンギッチャバンデルスドロバビデン!バードゥーバードゥーバードゥー!

上村:ちょ、笹本!笹本!おい!大丈夫か!

笹本:ズゴバーーーーーーン!

上村:笹本ぉぉおおお!

0:上村の張り手が笹本にヒットする

上村:あっ!

上村:ご、ごめん笹本!

笹本:ううん・・・

上村:さ、笹本・・・?

笹本:あれ・・・?どうしたの・・・?

上村:え?

笹本:ごめん、変なところで僕寝ちゃってた?

上村:え、ええ?

笹本:ああ、ごめんね、そっか、布団、布団で寝るね

上村:あ、あの笹本・・・

笹本:洗い物とか、明日僕もやるからね

上村:笹本!

笹本:ん、どうしたの?

0:間

上村:変だったよ

笹本:え?

上村:いや、お前、なんか、変だったって

笹本:変・・・?

上村:う、うん

笹本:なに、変って・・・

上村:え・・・いやなんか・・・

0:少しの間

上村:ズゴバンドン!バンドラビン!土瓶蒸し(どびんむし)!

0:少しの間

上村:みたいな・・・

笹本:あ、ああ

上村:?

笹本:あー、ごめん、そっか、そうだよね

上村:え・・・?

笹本:上村君に言ってなかったもんね、ごめん、そっか、あー、あははは

上村:あ、あの・・・笹本?

笹本:(真顔で)いびき

上村:は?

笹本:いびき

上村:・・・え?

笹本:ん?

上村:え、いやいやいやいやいや!

上村:え?いびき!?

笹本:うん、いびき

上村:いや、いびきじゃないよ!

笹本:いや、いびきだよ

上村:いや、いびきじゃなかったよ!

笹本:いびきだよ

上村:だって、ねえ?

上村:ズゴボンドン!バンドズゴバン!

上村:・・・だよ?

笹本:うんいびき

上村:え、え、えぇぇぇ

上村:・・・あれいびき?

笹本:ちょっと変だよね、家族にも言われるんだけど、なにせ無意識の時だから直しようがなくてさ

上村:いや、え、うん、ああ、そうなの?

笹本:うん、中学の頃とか結構それでいじられてさ

笹本:ほら、修学旅行とかで

上村:あ、ああ・・・そういう、そうか・・・そういうやつか・・・

笹本:ん?

上村:あいやっ

上村:ごめん

笹本:えっ、なんで謝るの

上村:いやその、そういうやつって知らなかったから、いきなり来て、ちょっと怖くなっちゃって

笹本:いやいや、いいの、言わなかった僕も悪いし

上村:うん・・・

笹本:(あくびをして)ふわぁーあ

笹本:ごめん、やっぱ眠いや・・・

笹本:えっと、寝ていい?

上村:う、うん・・・

笹本:じゃあほんと、洗い物とかそのままにしておいてね

上村:ああ・・・

笹本:おやすみー

上村:おやすみ・・・

0:間。すやすやと寝ている笹本

上村:・・・寝たか?

上村:(笹本をつんつんして)寝てる・・・

上村:寝つき良いな・・・

笹本:(すやすや)

上村:まあ、いびきなら、うん、まぁ、仕方ないか

笹本:(すやすや)

上村:でも、な、あんまり気にするのも悪いよな

上村:いびきだし、いびきぐらい、まぁ、人間なら、うん、かくよな

上村:うん・・・

笹本:ズゴビンドン

上村:・・・

笹本:ズゴビンドン

上村:ズゴビンドン・・・

笹本:(狂喜乱舞して)ズゴボンドン!バンドズゴバン!ビリリリリリリリ!!

上村:いびき・・・これはいびき・・・

笹本:ドリドリダンダン!ドリダンダン!

上村:友達・・・笹本は友達・・・

笹本:バレビン!ドリバレビン!ビラビラ!ビレバラン!ビレバン!

笹本:(完全に目を開けた状態になって)ビレバン

上村:えっ?

笹本:ビレバン

上村:ビレバン・・・?

笹本:そう、ビレバン

上村:あれ?笹本

笹本:ビレバン

上村:ビレバン?

笹本:そう、ビレバン

上村:起きてる・・・?

0:間

笹本:(再び目をつぶって踊り出す)ビレバリバンドン!

上村:あーーー!!!!!

笹本:アンドロポリタン!!ポピータパピータ!

上村:笹本!おい!起きろ!笹本!

笹本:パリピ!パリピャアアアアアア!

上村:笹本ぉぉぉおおおお!

0:上村の張り手が笹本にクリーンヒットする

笹本:ん・・・んん

上村:笹本!しっかりしろ!笹本!

0:再び笹本の頬を張り手する上村

笹本:痛っ!

上村:笹本ぉぉぉ!!

笹本:ちょ、痛い!痛いって上村君!

上村:笹・・・ああ・・・目が覚めたか笹本・・・

笹本:いったぁ・・・

笹本:ど、どうしたの・・・?

上村:・・・やばいって

笹本:え?

上村:やばいって・・・笹本・・・

笹本:やばいって?

上村:いびきじゃないって・・・

笹本:ど、どういうこと?

上村:いびきじゃないって・・・絶対違うって・・・

笹本:ちょ、上村君?大丈夫?

上村:ううん、大丈夫じゃない

上村:俺も大丈夫じゃないけどお前も大丈夫じゃない

笹本:え?僕は普通だけど

上村:普通じゃないって!

笹本:ちょっと、上村君なんかおかしいよ!

上村:おかしいのはお前なんだって!

上村:悪いことは言わない、病院行こう!

笹本:えっ、病院!?

上村:病院と神社行こう、な?

笹本:な、なんで神社?

上村:(笹本の手を引っ張る)いいから!

笹本:ちょ、上村君痛いって!引っ張んないでよ!

上村:早くしないとやばいって!

笹本:ちょ、一旦落ち着いてよ!行くにしても山の中だよ!?

笹本:朝になってからでもいいでしょ!?

上村:(ピタッと止まって)・・・朝?

笹本:う、うん

上村:朝まで我慢しろっていうの・・・?

笹本:え、ちょ・・・ほんとどうしたの?

上村:いやだから・・・お前のいびき・・・

笹本:いびき?

上村:その、いや、これはその・・・もう、言っちゃうけどさ・・・

笹本:う、うん・・・

上村:変だって・・・おかしいって・・・

笹本:そ、そんなにおかしい?

上村:おかしいよ・・・だってもう・・・

上村:ズゴビンドン!バンドラボビデン!モリブデン!

上村:・・・だぞ?

笹本:そっか・・・

上村:うん・・・

0:間

笹本:わかった

上村:え?

笹本:病院行く、神社も行く

上村:・・・ほんとに?

笹本:うん、上村君の言う通りにする

笹本:もし、僕が寝て、上村君が怖いっていうのなら、頑張って起きてる

上村:笹本・・・

笹本:それに、今までは家族と一緒だったから、なんとなく許されてきたけど

笹本:実際僕自身、寝てる間自分がどうなっちゃってるのか、人づてにしか聞いたことなかったから、不安だったんだよね

上村:うん・・・

笹本:家族とか友達とかに聞いても、あんまり教えてくれなくてさ

笹本:今思うと、気を使ってくれてたのかもしれないけど・・・

笹本:その、ありがとね

上村:な、なにが

笹本:はっきり、変だって言ってくれて嬉しかった

笹本:僕も不安だったし、これで決意も決まった

笹本:僕、治すよ、いびき

上村:笹本・・・

笹本:だしさ・・・こんなことで、せっかくできた大学の親友を無くしたくないからさ

上村:笹本ぉぉ!!

笹本:ごめんね、怖い思いさせて

上村:いや・・・いいんだ・・・

0:間

笹本:よし、じゃあ朝まで飲もう!

上村:お、おう・・・!

笹本:お酒まだあったっけ

上村:うん、まだ冷蔵庫にあったと思うよ

笹本:おっけー・・・あれ?暖房消したの?

上村:あ、ああ、寝る時危ないと思って

笹本:ああ、ありがとう

笹本:でも、もう寝ないから、点けるよ?

上村:あ、ああ(笑)

笹本:うー、さぶっ

上村:さすがに山は冷えるよな

笹本:うーん、あ、ちょっとまって

上村:ん?

笹本:くしゃみ出る

上村:あはは、いちいち言わなくていいよ(笑)

笹本:(くしゃみ出そうになりながら)いや、そうじゃなくて

上村:ん?

笹本:はっ・・・はっ・・・

上村:え・・・

笹本:ヘクチティーーーン!

上村:笹本?

笹本:ヘクチテンタラ!

上村:笹本・・・?

笹本:トンツカタンタカ!テリトンタントコタチテントン!

笹本:あー、よいよい、ヘクチントン、あー、よっこい、ヘクタンチン

上村:笹本ぉぉおおおおお!!!!

笹本:はーどっこいどっこいどっこいハクションどっこいどっこいハクションどっこい・・・

0:次第に画面がブラックアウトして、エンドロール