秋の夜長に思う
【詳細】
比率:性別不問1
現代・その他
時間:約5分
【あらすじ】
「寂しいって気持ちはどう表現したらいいんだろう」
秋の夜。
月を見ながら考える。
*こちらのシナリオは女性口調で書いておりますが、性別不問とさせていただきます
男性の方が読まれる際には、一人称の変更、作中の「長女」を「長男」、「お姉さん」を「お兄さん」に変更してお読みください
*こちらのシナリオは、『秋の夜長に声を』と対のシナリオとなっております
【登場人物】
私:『強い人』だと周りから思われてしまう人。
誰かに甘えるのが苦手。
●自宅・ベランダ・夜
ぼんやりと月を眺める。
私:
「秋か……」
夜が長いといつもなら頭の隅に追いやってしまっていることを持ち出してきて、考えてしまう
そして、その大半のことは考えても堂々巡りになってしまって、最後には自己嫌悪に陥ってしまう
そんな時、どうしても感じてしまう
私は、独りなのだと
「……寂しいって気持ちはどう表現したらいいんだろう?」
素直に「寂しい」と口にすることが出来たら、どんなに気持ちが楽になるのだろうか?
私は幼い頃から人に弱い所を見せるのが苦手だった
長女だってこともあったし、近所で年が近い子たちの中で一番年上だったってこともあって、いつでもしっかりしていなきゃいけなかった
『完璧』とまではいかないが、頼れるお姉さん。そうじゃなくちゃいけなかった
それが私にとっては当然のことで、周りの大人に求められていることだって思っていた
唯一違ったのは祖父母で、子どもらしくない私をよく心配してくれていた
失敗しても呆れることなく、間違ってしまっても残念な顔をされることはなかった
あの頃はダメな私でも甘やかしてくれることが不思議で仕方がなかった
育った環境に不満があるわけではない。家族仲だって悪いわけじゃない、と思う
でも、甘えられるかって聞かれたら、出来ない。どうやって甘えたらいいのかわからないんだ
甘えたら迷惑が掛かってしまうんじゃないかって思ってしまって……
それはなにも家族間だけじゃない。私は誰かに甘えるのがも苦手だ
自分が誰かを助けることは苦にならないのに、自分が誰かに頼るのはどうしたって抵抗がある
私なんかが、「助けて」って言うのはお門違いな気がして……
どんなに苦しくても、忙しくても自分で処理しないといけないって思ってしまう
そして、その度に私はまた孤独になっていく
『強い私』を作り上げてしまう
その結果、溜めこんだものが爆発してしまう
その爆発は小さい時もあれば大きい時もある
爆発が小さい時はまだいい
そういうときは美味しいものだったり、好きなものをお腹いっぱいになるまで食べて眠ってしまえばいいから
でも、大きい時は厄介だ
大きい時は食べることすらも、好きなことすらも全てどうでもいいことに思えてしまう
一人で空を見つめ、気が付いたら時間が経過していて一日が終わってしまう
そして、そのことに自己嫌悪してしまう
そんな時にいつも思ってしまう
寂しいと
これは私の悪い癖だから、私自身がどうにかしないとってわかってはいる
わかってはいるけれど、なかなかに難しい問題だ
さぁ、今日はもう寝てしまおう
夜が長いのは物事を考えるのには静かでいいけれど、思考の海に溺れてしまっては本末転倒だ
そう、ゆっくり休んだら、また明日にはいつもの『強い私』に戻れるから
―幕―
2021.10.05 ボイコネにて投稿
2022.09.08 加筆修正・HP投稿
お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)