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白濱雅也「浄土と穢土~還るところ」

2022.09.09 16:04

2022年9月13日(火)ー9月25日(日)※会期中無休

■白濱雅也

展示構成,写真, 絵画,素描,ビデオ&サウンドシンセサイザー 

Guest Artist 

片平 仁 (CGクリエイター)  3DCG at 福島

熊本年孝(ドローン音楽作家)  ドローン音楽 at 香川

佐々木健(ナレーター)  ナレーション at 千葉 

木箱(ミュージシャン)  ナレーション at 栗山 

白濱 真紀 (美術家 コーディネーター) モデル ナレーション at 帯広

写真工房(写真ラボ) プリント協力 at 帯広


快復が難しい状況の義父の見舞いに夫婦で行った時のことである。妻が、やや苦しそうに眠る義父の手を握って傍に座り込んだ。この労わりの行動は私には思いもつかないことで、驚きと共に記憶に焼き付いている。治療という視点でいえば、妻の行動は全く無意味である。モーレツ社員で典型的な仕事人間であった義父にこの温もりはどう感じ取られたであろうか。無意味なことと思っただろうか。

美術 / 芸術は今、この出来事に例えれば、患者自身の生きる欲望であったり、医師や看護師の治療であったりする方向に向かっているように感じる。私は妻の手の温もりのようなものでありたいと願っている。 浄土といえば、死せる者の魂が安らかに鎮まるところであるが、生きる者が裸の意識を怖れることなく自覚できる場もまた、そう呼んで良いのではないだろうか。それは天上の遠い彼方ではなく、日々の一瞬に現れる。その蜃気楼のような瞬間を美術で留めおくことはできないだろうか。今回そのようなことを試みた。


―――――貴方がこのメールを読む頃には、私はもう旅立っていると思います。

パンデミックになって貴方と会えなくなって随分経ちますね。

貴方と逢えないなら、私はここにいる意味がないと感じました。

私が貴方にあげたマスクを貴方は友達にあげましたよね。

それは貴方の優さからだと知ってますので、それを責めるつもりはありません。

あのマスクは数年に一枚しか作れないもので、とても貴重なものなんです。私は貴方を守りたかった。それだけ。

でも、そんな気持ちから作ったものも、貴方の優しさからも争いが生まれてしまうことになって、私はとても悲しい。人間の世界は難しい。

もう会うことは難しいけれど、メールでやりとりはできます。

何かあった らいつでも遠慮なく。


■白濱雅也 hirahama Masaya 

1961年岩手県釜石市生まれ、多摩美術大学卒業。90年代より物語的な不条理絵画や立体を発表する。震災後、鎮魂の意を込め た木彫に取り組み、既存の木像や油彩をリノベーションする作品に発展する。震災をテーマにしたグループ展 POST3.11を企画、 東京都美術館で開催、続編を原爆の図丸木美術館で、2019年には本郷新記念札幌彫刻美術館でも開催した。その傍ら風景画の可能性について模索する展示を企画開催している。近年はメキシコ、中国など海外での活動を展開している。2021 年より軽トラの移動美術館「Art Van 福寿走」で全国をめぐる。2014年より十勝在住、自主ギャラリーArtLabo 北舟/NorthenArk 主宰。


【白濱雅也「浄土と穢土~還るところ」】

〇会期

2022年9月13日(火)ー9月25日(日)※会期中無休

〇営業時間

10:30-20:00〈ラストオーダー19:30〉

〇会場

TO OV cafe / gallery

ト・オン・カフェ/ギャラリー

札幌市中央区南9条西3丁目2-1マジソンハイツ1階

(地下鉄「中島公園駅」より徒歩1.5分)

お問い合わせ 011-299-6380