秋は夏の燃え殻
9月に入ってから朝晩は大分涼しくなった。日中も、陽射しは暑いけれど空気はカラッとしている。蝉の声も、少し遠くなった。Twitterでも、道端に咲いている彼岸花の写真が頻繁に見られたりして、ああもう秋だなあと感じる。
どの季節もそれぞれ風情があって良いけれども、四季の中で一番好きなのは秋だ。暑くもなく、寒くもない、丁度良い気候が気持ちが良いし、大好きな金木犀が咲く季節でもあるから。
金木犀の、あの小さな花から、あんなに甘い香りが強く馨るのが、少し不思議な気がする。濃い緑の葉群れに瞬く星のように咲く橙色の小さな花。地面に散っても尚、色鮮やかでアスファルトがオレンジ色に染まっているのも綺麗に思う。
去年だったか、金木犀が二度咲いて驚いた。
調べてみたら、金木犀は条件が揃うと稀に二度咲くらしい。今年はどうだろうか。
金木犀の開花を、今か今かと待つ気持ち。
近所に植えられている金木犀の樹を見上げて、そわそわしている。
秋と言えば、食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋、芸術の秋。
私は専ら読書の秋だけれど(秋に限らず、年中本は読んでいるが)他の方はどうだろう? 読書垢の人達はやっぱり(寝ても醒めても)読書の秋だろうか。
秋になると夜空を見上げたくなる。
月や星が美しいから。
昨日は中秋の名月だった。良く晴れていたので、綺麗な満月が見られた。満月も毎月見られるものだけれども、やはり秋の満月は特別に思う。
饅頭などのお供えはしないけれど、ベランダからまんまるな月を眺めて、暫しうっとり。
天体に思いを馳せると、ふと思い出すのは宮沢賢治の作品だ。
何となく、宮沢賢治の作品は秋と冬に読むのが相応しいのではないかと思うのだ。もっと言うなら、空気が澄んだ季節の真夜中に。耳を澄ませば、星の瞬きが聞こえそうな程、静かな夜に、ゆっくりと彼の本を読みたい。
(今、少しずつ読んでいるけれど、文章が綺麗だなあとしみじみ思う)
秋は夜風も心地いい。
テレビを消して、窓を開けて、月光を招き入れて、時折吹き込む夜風に当たりながらの読書も格別だ。あんまり気持ちが良いのでうっかり眠たくなってしまうけれど。
夜風に乗って馨る秋の匂いは少し寂し気だ。
枯れ木と朽葉の匂い。
何かが燃えて灰になってゆくような匂いがする。
それは夏が焼け落ちて、燃え尽きていく匂いなのかもしれない。