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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

帝国の時代26-「レ・ミゼラブル」

2022.09.12 11:13

1862年ヴィクトル・ユーゴーの傑作「レ・ミゼラブル」が出版された。このときユーゴーは帝政に反対して亡命してチャネル諸島に住んでおり、出版社に「?」と打電すると「!」という返事が返ってきたらしい。彼は帝政が終わると、英雄の如くパリに迎えられた。

ユーゴーは、「エルナニ」で大成功をおさめ、子爵となりルイ・フィリップ時代に貴族院議員となる。48年の二月革命では国王継承に賛成し、共和制になるとまた議員になり、今度は共和主義者になった。そしてルイ・ナポレオンの当選に尽力するが、帝政には最後まで反対して亡命した。

「レ・ミゼラブル」の執筆は45年から始まったが、発表されるまでのフランスの激動の社会を描くことになった。政治的に目まぐるしく変わった彼の思想の根本は人道主義である。「海洋よりも天空よりも壮大な光景、それは人の魂の内奥である」人が悪になるのは、社会が悪いのだ。

物語中ジャン・バルジャンを回心させたのは三リエル司教だが、ユーゴーは、現実のキリスト教には失望して、人道主義的な真のキリスト教を求めていた。社会を変えるだけではダメで、人間が変わらなければならない。「レ・ミゼラブル」はその人道主義の金字塔といえる。