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Pink Rebooorn Story

第5章 その3:「投与しません。」

2018.02.22 13:36




 パクリタキセルを投与しなかった一週間がある。




 一刻も早く完全奏功へ向けてひた走りたいのに、どうしても行きたいところがあった。

 それは「東京デザインウィーク2015」だ。




 数か月前、旧知のクリエイターさんに依頼され、このデザインウィーク出店のための企画書をつくるという仕事をした。彼女が事業を立ち上げた時からデザインの仕事で携わらせていただいていて、思い入れも大きかった。




 岡山から新幹線で三時間以上かかる東京へ、体力的に行けるかどうか自信はなかった。でも、できれば行きたい… という気持ちはあった。

 そして、ちょうど次の投与日と重なっている。免疫の回復サイクルを考慮すると投与を前倒しにすることはできないから、行くとなれば投与を先延ばしにするしかない。




 悩みに悩んで、尾田平先生に相談した。







と、いうわけで・・・行ってきましたー!







 同行してくれた夫と一緒に現地でクリエイターさんと会い、彼女の出店ブースを目にした時には、「本当に来て良かった」と思えた。

 そして、岡山に戻り、36歳の誕生日を迎えた。




 パクリタキセルが終わったあとの手術については、尾田平先生からすこしずつ説明があった。病院が手術日を調整してくれるのだけれど、どうやら入院から退院まで、年越しの可能性が濃厚になってきた。

 毎年、年越しは自宅でのんびり、新年は祖父母の家や、夫の実家でにぎやかに、というパターンだったので、まさかのひとりぼっち病院とは…。




 そして、11月26日、ついに人生最後の抗がん剤。日記には、「まつげは一本もありません」と書いている。

 前日採血の時ですら「今日で最後…」と、胸にこみあげてくるものがあった。長くてつらくて…… がんばったな、私。




 緊張のせいか、最低数値での投与になってしまい、翌日は顔が真っ赤になって、歯茎もじくじく痛んだ。でもすべてが最後だと思えたら、感謝の気持ちしかなかった。

 特に、数か月間に渡る看病、病院送迎をしてくれた家族、夫……。




みんな、ありがとう。







TOKYO DESIGN WEEK 2016における火災事故につきましては、クリエイティブに携わる一人の人間として重く受け止め、謹んで哀悼の意を表します。