絶版
本というのはどうして絶版になってしまうのでしょうか。
いや、わかりますよ。わかるんですが「とてもいい本だ!」と思っていても、相当な売り上げを記録した本以外は、あっという間に絶版になってしまう。
そんな本の中でも僕の記憶からどうしても消えないのが、高校生の時に読んだエレクトーン奏者の方の書いた本で…ええと、タイトルがやっぱりどうしても思い出せないのですが、レッスンを受ける上での、音楽を学ぶ上でのとても大切なことが山ほど書いてある本を読んだのです。
その本が、僕の中で音楽と向き合うときの根幹のようになっているのです。
もしかすると記憶が美化しすぎているかもしれないのですが、それにしても、大人になってプロとして活動している今、もう一度その本を読んでみたいと、ネットで散々調べても一切出てこない。記録くらいあるだろうと思っても本当に何も出てこない。
俺は…夢を…夢を見ていたのかもしれない。
そっか〜、夢オチかぁ〜
いやいや、そんなことはない。
もう25年前のこととは言え、ネットのどこを探しても本の存在すら出てこないとは。結構意外でした。
そして、最近また絶版被害に遭いまして…トランペットのレッスンをしている生徒さんの中で小中学生や初心者の方へ使っていた教則本があったんです。だいぶ前にヤマハへ行って初心者でも使える教本ないかと片っ端から読み漁って一番良いと思った本。
ただ、僕のところへいらっしゃる生徒さんは、経験年数が長くて奏法に悩みを持った方が圧倒的に多いので、最近まで初心者の生徒さんの入会がなく、その本の存在をすっかり忘れていたのですが、ここのところ初心者の方がたくさん入られたのでまとめて欲しいと思ったらまさかの絶版。
えー。すごい使いやすかったのに!
アマゾンで中古が9,000円で売ってますよ。買うか!
思えば、大手から出版されている日本人奏者が執筆した教則本て、瞬間で絶版になりますよね。なんかあれ凄くムゴい。
大人の事情がいろいろあるんだと思いますが、でもそれを使ってレッスンする側にとってはその本をどのように使っていくかのひとつのストーリーを作っていて、良い本であればあるほど、これから先の未来にレッスンに訪れる生徒さんにも使いたいと思うものです。
でも日本の教則本はどれもこれもすぐ絶版になって、逆に「もうそれ古すぎぃ!」って内容の本がずっと残ってる。記憶あるだけでも僕が中学生のときに部室にあった本、数冊が未だヤマハの棚に置いてある。それはもういい。
だから結局安定の外国教本を使うんでしょうね。アーバンとかクラークとか。
僕が3年ほど前に出版した「トランペット ウォームアップ本」も、どういった形式で出版しようかいろいろ考えていたんですが、なによりも一番避けたかったのが絶版です。
そんな本あったねー
なんだったっけねー
となるのもイヤですが、それ以上に、日本の管楽器奏者というのは年度ごとに初心者が一定数生まれ、それに合わせて一定数売れる可能性があるのに、絶版になってその機会を逃してしまうのは非常にもったいない。ずっとたくさんの人に使ってもらいたい。
ということで書店に並ばなくともオンデマンドの形式で永遠に販売できるタイプを選んだわけです。
こうなったら、初心者の方が使いやすい教則本も早く書こう。ハイノート本と平行して作っていこう。
「超初心者本」とかどうですか?
荻原明(おぎわらあきら)