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金山知明税理士事務所・国際税務コンサルティングオフィス

国際課税勉強会22(移転価格税制に関する推定課税)

2022.09.17 07:30

本日は国際課税一角塾に参加し、移転価格税制上の推定課税の可否と内容が争点となった東京地裁平成23年12月1日 判決についての報告を聞きました。

この事件は、原告法人が香港子会社から仕入れている材料の仕入れ価格が高すぎるとして、移転価格税制により課税庁が算定した独立企業間価格に基づき追徴課税を受けたため、原告法人がそれを争ったものです。

この事案の特殊な点は、原告法人が課税庁が調査の過程で提出を求めた関係書類を完全には提出しなかったため、課税庁が移転価格税制に定める推定課税(当時の措置法66条の4⑥)を行ったことです。

推定課税は、納税者が書類提出に応じなかった場合の課税手段として課税庁に与えられた権限なのですが、この件で、原告法人は提出を完全拒否したわけでなく、独立企業間価格の算定について課税庁と違う独自の主張をすると同時に、一定の文書の提出にも応じていました。

課税庁サイドの見解により必要とされる書類のすべてを提出しないと、算定用件も緩やかな独立企業間価格による推定課税が簡単に許されるとすると、納税者が過剰に不利な立場に置かれるという批判もあるようです。

現在では、国外関連者と取引を行う納税者には、文書化義務が課されていて、かなり細かく作成すべき文書が規定されています(措置法66条の4⑥)。これによって何が必要書類かという判断にはある程度の客観性が確保されたともいえそうです。

ただ、この文書化義務による納税者の事務負担は非常に大きく、これを怠ると罰則に加えて推定課税を受けることになるので、やはり不利な立場にあると考えます。この点について、法に従って一定水準の文書を備えている法人に対しては、何らかの尊重優遇措置があるべきと思います。

写真は昨日のマリンパーク(大学の前)

memo

Secret Comparableに対する懸念 OECD移転価格ガイドライン2022 S3.36