民法のお勉強 総論 第11日
6 公益法人制度の改革
(1)従来の法人制度とその問題の背景
※日本の公益法人制度は、民法制定以来、抜本的な見直しが行なわれることなく、新しく作られた非営利法人制度(NPO等)が実施され、法体系が複雑になった中で、時代の変化に対応出来なくなっていた。
※そのほか、一部公益法人の不適切な運営が取り上げられるようになり、大きな社会問題となったことである。
【問題の背景】
・国会議員の逮捕にまで及んだ「KSD事件」では 中小企業の経営者を対象に、労災保険などの事業を行っていた財団法人が公益法人を私物化する事態となった。
⇒その資金で政界工作を行っていたとして、業務上横領容疑で逮捕。
※国会議員の汚職事件に発展することになる。
※当時の公益法人制度に対する批判と問題の指摘として、以下のようなものがあった。
① 公益法人の設立許可基準や公益性の定義が明確でないこと。
⇒公益性の判断が主務官庁の自由裁量で なされていること。
② 公益の名の下に税金を免除されながら公益法人としているが、
⇒もっぱら収益事業に力を入れて、民間ビジネスを阻害している場合もあること。
③ 主務官庁が設立を許可し、監督する部分があること。
⇒官僚ら公務員が天下る受け皿(官益法人) となり、補助金や助成金が無駄に使われることに結び付いた。
④ 行政と深く結びついた行政代行型の公益法人が多く存在していたこと。
⇒法令で指定されて特定の事業を独占したり、国家資格の試験の実施を独占するなど。
※民間企業との競争がないままに、大きな「特権」を持たされて、非効率な経営になりがちであったこと。
⑤ 経営の透明性が少ない点。
⇒KSD事件などの不祥事を起こす温床にもなったこと。
※公益法人改革は、こうした事情の中で「行政改革」の一環として取り組まれた課題の一つであり、平成15年6月に閣議決定された。
※「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」
⇒公益性の有無に関わらず準則(登記)
①設立できる新たな非営利法人制度の創設
②税制上の措置
③移行措置についての検討
※平成15年11月には、「基本方針」を受けて、行政改革担当相の下に、
⇒「公益法人制度改革に関する有識者会議」の設置
平成16年11月19日に最終報告書が出来上がる。
(2)平成18年の公益法人制度改革
※この公益法人制度を抜本的に改革するため、平成18年3月に「公益法人制度改革関連3法案」が閣議決定され、同年5月に第164回通常国会において法案が成立。
※平成20年12月から施行され、新制度に移行している。
⇒その柱は、法人格取得と公益認定の切り離し、準則主義による非営利法人の登記での設立、主務官庁制廃止と民間有識者からなる合議制機関による公益認定、公益認定要件の実定化、中間法人の統合、既存の公益法人の移行・解散などである。
(3)公益法人制度改革関連三法
・公益法人制度改革関連三法とは、以下の三つの法律から構成される。
1 「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」
(平成18年法律第48号。一般社団・財団法人法)
2 「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」
(平成18年法律第49号。公益法人認定法)
3 「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」
(平成18年法律第50号。関係法律整備法)