ラジカル塗料・嘘と本当
最近シリコン樹脂よりハイグレードと謳われる「ラジカル塗料」というワードがあります。
結果から申し上げますと、
ラジカル塗料というものは存在しません。
今まである既存技術のラジカル制御により予算を投入した塗料=ラジカル制御系塗料となります。
そのため、既存技術を今さらアピールするのは間違いであると突っぱねるメーカーさん(例えば水谷ペイント)もいるくらいです。
ラジカル制御とは
外装用材料は基本的にホワイトベースにカララント(着色顔料)を投入することで色が作られます。
そのホワイトベース塗料の白を形成しているのが白チタンです。
この白チタンは紫外線に触れると暴れだす性質があり、塗膜破壊・劣化の原因とされています。
このチタンが暴れるのを羽交い締めして抑える技術、これがラジカル制御です。
昔からある技術で、新しいものではありません。
トップ画像は関西ペイントのアクアセラシリコン(2液反応硬化型シリコン樹脂・左)、ダイナミックトップ(ラジカル制御シリコン樹脂・右)の塗り板比較です。
見た目にはほとんど違いがわかりません。
ラジカル塗料と呼ばれるものの始まり
元々、日本ペイントさんがこのラジカル制御に焦点を当て、アクリル樹脂に強いラジカル制御をもたらしたパーフェクトトップを発売しました。
高価なシリコンを配合しないため、材料価を低く抑えられ、営業しやすい展開とした商材のため営業会社を中心に広まり、彼らがラジカル塗料と謳い煽ったと言うのが現状で、言葉としては間違っています。
ものをわかる人が見れば、通常のシリコン樹脂塗料よりも艶が鈍いなどの初期機能に対する懸念はあります。
また、シリコン樹脂を越えると謳う根拠が不明瞭なため、当方で扱わない材料のひとつです。
シリコン樹脂そもそも話
シリコン樹脂って何という話。
一般的なシリコン樹脂というカテゴリーの外壁塗料はアクリル樹脂に無機材料のシリコンをハイブリッドしたものになります。
アクリル樹脂は有機(例えるなら油)、シリコンは無機例えるなら水)、水と油は混じり合いませんが、うまく橋を渡して結合させる技術を使い一体化させています。
アクリル樹脂耐久が5年程度に対してシリコン配合率により8年~15年耐久に伸ばすことができています。
ここに強いラジカル制御をすれば高価なシリコンを使うことなく、安価に高耐久を目指せる、またはシリコン樹脂にプラスすれば更に強いものにできるというのが今の潮流です。
ラジカル制御系材料が続々と
続いてエスケー化研さんがプレミアムシリコンを発売しました。
こちらはシリコン樹脂を配合し、アクリルシリコン樹脂に強いラジカル制御をかけて更に耐久性を上げようとした意欲作。
しかし、エスケー化研さんでは樹脂設計を行っていないため、何か問題があった場合の対処が遅れることを当方は懸念して、こちらも採用しておりません。
営業会社もオリジナルを
某営業会社もリファインというラジカル制御系材料を出しています。
オーストラリアのメーカー材料を日本に輸入または国内OEM生産として展開している模様(輸入はハードルが高いため、レシピを元に日本の樹脂メーカーが製造していると思われる)ですが、現地ではあまり知られていないメーカーだそうで、どの程度の実力があるのか、不明な点が多く、評価ができない現状があります。
関西ペイントがラジカル制御の最終兵器を
社内でも反対意見があったようですが(潮流に流されることを嫌う真面目な技術屋のため)、最終的に他社を凌駕するものでラジカル制御の独り歩きを止めるという営業判断が下り、アレスダイナミックトップが発売されました。
基礎研究~製造まで行う、釜から樹脂を炊く事に拘りを見せる関西ペイントとして、国産の純度の高いシリコンを使い、新しい考え方でラジカルを制御する技術、さらには湿潤面でも塗布でき、乾燥面ではjis規格の2倍の接着強度で剥がれにくく、高い艶も出る製品に仕上がっています。
当方でも数多く施工させていただいており、高い評価を受けている材料です。
最後は塗装店の材料目利きにかかる
当方ではリファイン以外はすべて、テストペイントを行い、実際に評価を行っています。
その評価も踏まえ、採用不採用を決めています。
ツボイ塗工ではメーカーさんとの関わりで関西ペイントや水谷ペイントの製品が主体となりますが、それは単に信じているメーカーだから。
今までトラブルなくしっかりとした材料を提供してくれているからこそ使っています。
逆にテストペイントの段階でダメだなと思うメーカー製品は使いません。
過去にも沢山のメーカー製品を使っていますが、ダメだなと思えば、使いきらずに廃棄や塗り直しを行います。
材料に対する理解を深めたいと思うからこそ、常に探求をし、より良い製品に出会う門戸を開いています。
ラジカル塗料と話している時点で
材料のことをよく知らない業者さんだなと思ってください。
もっとモノを知る業者さんは他にも沢山いますから。
言葉に踊らされない事が肝要です。
是非、後悔のない外壁塗装をじっくりとお考えくださいね。