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粋なカエサル

「ミケランジェロのローマ」①

2018.02.26 23:46

 ″Sacco di Roma ″(サッコ・ディ・ローマ)。ローマを理解するには欠かせない世界史上の大事件。「ローマ劫略」、「ローマ略奪」と訳される。神聖ローマ皇帝カール5世の軍勢が イタリアに侵攻し、教皇領のローマを破壊した事件。1527年に起きた。背景には1517年からルターによって本格的に始められた宗教改革がある。皇帝軍の主力をなしたドイツ兵の多くはルター派。ローマ・カトリックに憎悪を抱いている。戦闘の初期に指揮官を失ったこともあって、この軍隊、すさまじい殺戮、破壊、強奪、強姦を繰りひろげた。路上の死体1万、ティベレ川に浮かんだ死体3千と言われる。モンタネッリは「殺人と破壊の饗宴」と呼んだ。「ルネサンスの都ローマ」は壊滅されてしまった。それでも残ったものもある。ヴァチカンで最も権威ある礼拝堂、システィーナ礼拝堂に描かれたミケランジェロの「天井画」だ。側壁部分も含めると800㎡(テニスコート3面!)の広大な天井に天地創造を中心とした旧約聖書の物語が展開している。描かれている人物は300人余り。ひとつひとつの場面にミケランジェロ特有の聖書解釈も見られ、旧約聖書を知ったうえで眺めるとおもしろさも倍増するが、それ以上におもしろいのがこの絵が描かれた経緯だ。もともとミケランジェロは彫刻家。それまでフレスコ画を描いた経験がなかったミケランジェロが、この天井画を描くようになったのは教皇ユリウス2世の命令による。二人の間にあった確執。いやそんな生易しいものではない。激闘と呼んだ方がいい。その関係は、映画『華麗なる激情』(The Agony and the Ecstasy 1965年 キャロル・リード監督)を観るといい。チャールトン・ヘストンがミケランジェロ、レックス・ハリソンがユリウス2世を演じている。

 ところで、このユリウス2世。″IL PAPA TERRIBILE ″(「恐るべき教皇」)と呼ばれた。好物は、ウナギ、キャビア、乳のみ仔豚。持病はもちろん痛風。愛人に生ませた娘が3人。梅毒にも苦しんだ。教皇領を拡大するために、おなじカトリックのペルージアとボローニャを討伐するため自ら軍を指揮し「戦士教皇」とも呼ばれた。とんでもない教皇。こんな教皇が、いやこんな教皇だったから盛期ルネサンスの偉大なパトロンになりえたのかもしれない。

(ラファエロ「ユリウス2世」ロンドン ナショナル・ギャラリー)

(ティツィアーノのコピー「カール5世」プラド美術館)

(サッコ・ディ・ローマ)教会での殺戮

(システィーナ礼拝堂 外観)

(システィーナ礼拝堂 内部)正面はミケランジェロ「最後の審判

(ミケランジェロ「システィーナ礼拝堂天井画)

(ダニエラ・ダ・ヴォルテッラ「ミケランジェロ」メトロポリタン美術館)

(映画「華麗なる激情」)