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旅のチカラ、旅のカケラ

タイの漫画喫茶

2009.01.04 12:00


宿を移ることにした。

1泊2500円の部屋を出て、

初日に泊まった1泊300円の安宿へ向かう。



幸いなことにシングルルームが空いていた。

薄い壁と簡素なベッド、窓はなく、

低い天井には小さな扇風機が備え付けられている。

まるで留置所のような部屋だ。

でも、この狭さと質素な空間がちょうどいい。


バスでも狭い端っこの席が落ち着くし、

小さい頃は押入れの中が好きだった。

きっとザリガニのような習性を持っているのだろう。

それとも極度の淋しがりやなのか…。



この宿に移った理由は2つ。

そろそろ懐具合が寂しくなってきたことと、

1000冊以上ある漫画が目当て。

いい大人がするこっちゃないとはわかっているが、

1日中漫画を読んで過ごしたいのだ。


『スラムダンク』が全巻揃っているので、

まずはこいつから片付けよう。

前回泊まった際は「山王工業戦」を読んだので、

それまでのストーリーを。



日本でもそうだったが、この旅でも

スラムダンクに登場する“名言”はよく口にする。

この漫画は単なるスポ根ではなく、

啓蒙であり、哲学だと思う。

“熱血”から“クール”へと時代は移行したが、

あの頃の熱を再び感じさせてくれる。


だらしなくベッドに寝転び、黙々とページめくっていく。

機械になったみたい?

今、この身体はページをめくるためだけに存在し、

脳だけが忙しく働いていた。

仰向け、うつ伏せ、横向き、壁にもたれて、

本と顎を支える肢体のだるさが

身体が存在していることを辛うじて教えてくれた。



午後2時、ここでハーフタイム。

いつもの屋台で、いつものメニューを注文する。

たくさん店があるのに、決まってここに来る。

席も同じ。何もかもが自動再生。

これは変化を恐れているのではなく、

海外でひとりきりだから、

「ここにいるよ」って誰かに認識してもらいたい証だと思う。

ほら、いつも見るでしょ、この顔。覚えてる?



ベッドに戻り、後半戦を開始。

1日で20冊を一気に読みきり、

その内容に胸と目頭が熱くなったが、

現実はダメ人間の1歩手前。

逃げ出すように部屋を飛び出し、

外の空気を吸って、カチコチに固まった身体に活力を注いだ。



夕方のカオサン通りは優しいオレンジ色で、

とろりと甘い時間が流れていた。