Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

20年以上ホルマリン漬けだった脳が蘇る! 脳死と意識の定義完全に覆るか(カナダ・米大学研究)

2018.04.08 08:49

http://tocana.jp/2016/12/post_11845_entry_2.html    より

画像は「Thinkstock」より引用

 人体最後のフロンティアとも言われる「脳」。脳地図の作成など、各部分が身体に及ぼす機能については研究が進み、全容解明も間近だと騒がれているが、こと意識についてはまだまだ分からないことだらけだ。今回ご紹介するのは、そんな脳と意識の不思議な現象についての研究である。

■「脳は死なない!」驚愕の最新研究

 今月1日、カナダ・ローレンシャン大学の神経学者が、査読科学雑誌「PLOS ONE」に「いつ脳は死ぬのか?(When Is the Brain Dead?)」という謎めいた論文を発表し、物議を醸している。一体彼らはどんな発見をしたのだろうか?

 専門的な内容の論文であるが、結論はシンプルである。なんと、死んだ人間の脳を蘇らせることに成功したというのだ! 電子刺激と複数の薬品の注入により、活動を停止したはずの脳に“生きている脳と同じレベル”の反応が見られたという。

画像は「Mysterious Universe」より引用

 研究チームによると、20年以上ホルマリン混合液(EFA)内で保存されていた脳に、解離性麻酔薬ケタミンとニコチンを投与したところ、生きている脳と同じレベルの認知反応が確認されたそうだ。これだけでも驚きだが、アミノ酸の一種グルタミン酸を注入すると、さらに奇妙なことが起こったという。なんと、生きている脳と同程度の光子が放出されたというのだ!

「これらの結果から、死後の脳の一部は、生きている脳と同じように刺激に対して反応する潜在的な能力を保持している可能性が示唆されました」(同論文)

画像は「PLOS ONE」より引用

 たった1種類のアミノ酸を与えただけで蘇るとは、死んだとされた脳は、実は何十年も長い眠りについていただけということだろうか? もし脳が完全に活動を停止することがないとしたら、「全ての脳の活動の不可逆的な停止」と定義される“脳死”は存在しないことになる。いつ脳は死ぬのだろうか? いつ人は死ぬのだろうか? 謎は深まるばかりだが、さらに大きな疑問は「蘇った脳に意識はあるのか?」という問題だろう。

 実は、活動レベルが低下した脳が外部刺激によって回復する例はこれまでにも報告されている。

■超音波でこん睡状態の患者が回復、学者困惑

画像は「UCLA Newsroom」より引用

 今年7月、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究者らが、こん睡状態の患者の脳に“超音波”をあてることで意識の回復に成功したという。

「UCLA Newsroom」(8月24日付)によると、「低強度超音波パルス(low-intensity focused ultrasound pulsation)」を発生させる特殊な装置を昏睡状態の患者の頭頂部に設置し、感覚の伝達や意識の制御に関係する視床を中心に超音波で刺激したところ、患者の意識レベルが回復し始めたという。実施直後はそれほど変化が見られなかったが、3日後には首を左右に振ったり、拳で軽くこづいたりすることでYes/Noの意志表示をするまでになったそうだ。

 実験は完全に成功したが、患者の意識が回復したメカニズムについては研究チームもまだ分かっておらず、UCLAのマーティン・モンティ教授によると、今回の成功は「まぐれ当たりの偶然」だという。なんとも頼りない言葉だが、専門家も匙を投げるほど脳と意識の相関関係は複雑怪奇であるということだろう。

 モンティ教授らの実験は、こん睡状態の患者に対して行われたものであるが、死んだ脳が認知レベルを回復することが分かった今、脳死患者に対する臨床実験も期待できそうだ。今後の研究次第であるが、脳が活動を停止した後も、潜在的な意識を残していることが確定されれば、肉体の死後にも意識や魂は身体にとどまると信じるスピリチュアリズムや宗教的実践が科学的に裏付けられることになるだろう。

ダライ・ラマ法王「The Wall Street Journal」より引用

 チベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ法王も、仏教やインド哲学に比べて「内なる心の世界の科学に関していえば、西洋の心理学は幼稚園のようなレベルに過ぎません」(『ダライ・ラマの般若心経: 日々の実践(三和書籍)』)と述べているように、意識に関しては科学よりも“非科学的な”実践の方が一歩も二歩も進んでいる。とはいえ、今回の研究で示されたように、徐々に脳科学も意識の理解に近づきつつあることは確かだ。小中学生レベルになる日もそう遠くないと信じて、今後の発展に期待しよう。

(編集部)