3人のキャンプ
一年に一度しか会わない友人がいる。 AとB、そして俺。
高校時代の友達で交流のあるのはこの二人だけ。 集合するのは7月末の土日。Aの召集で、二泊三日のキャンプをする。 お互い現在の仕事なり住居なりの場所は大体分かるのだが、詳しく聞いたり行ったりしたことはない。 信州の未整備の森の中で渓流の水を汲み、米を炊き、肉を焼く。
40歳に手が届きそうな男三人が、その三日間、焚き木をかこみ、小学生がするような話をする。
この夏、おそらくキャンプを初めて10周年になると思い起こし、 焚き木を囲んで、一年目からのエピソードをお互い思い起こしながら語り合った。
しかし、どうも要領が得ない。 Aはこの集まりが、大学院を卒業した25歳の夏であると断言したが、 自分は東京から帰ってきた27歳であると考えている。 一方、Bは29歳の結婚式にAと俺を式へ招待し、再会してから交流が復活したとのこと。
アルコールにやられた、よくあるおっさんの勘違いと笑いあったが、 話を進めるうちに、だんだんと嫌な空気になっていく。
キャンプが始まったのは、どれぞれの人生の転機からであり、
自分においては、27歳まで地元に帰るのは正月とGW、そして祖父の死去したときだけであった。
会えるはずがない。
Bの結婚式へだって、本人を前にして失礼であるので言えなかったが、
次の朝Aと確認したのだが、呼ばれた記憶もない。
「呼ばれたなら、自分の結婚式にも呼んでるからな」とA。
この言葉で、自分たち三人がすでに既婚者であることが判明した。
エピソードはほぼ符合している。 しかし、このキャンプが始まったきっかけが曖昧かつ、始まった年が符合していない。
いらいらしていたAが冗談めかして、「みんな何年生まれよ。何歳よ」との言葉に、 俺が「昭和47年」と答えてから、場の空気が凍りついた。
それぞれ違うのだ。生まれた年が。
あわてて互いに財布を出し免許証を確認しあったが、AとBは4つ違いであった・・・ 高校時代にダブったってこともないのに。 「水○会の名簿見たら何期生かわかる」とB。 「ハア?お前、三○高校だろ?」とA。
ここで、三人のうちBの高校が違っていることが判明。
孤独だった高校時代。それが三人の共通点らしい。 なぜなら、共通の友だちの話題から、もっと早く気づいていたはずだから。
しかし、徹夜した文化祭前夜の記憶や、その出し物。 Aのうちがたまり場だった時の様子。そこでしたゲーム『ポピュラス』。ディスクドライブの『ザナック』。 高2の時、初詣でBが急性アルコール中毒になったこと。
これらはこの場で思い出し、笑いあったことではなかったか? 俺たちはどこで知り合い、そして10年も馬鹿話しているのか。
今年のキャンプは、ことのほか盛大であった。とくにアルコールの量が。 しかしその底には、冷たくよそよそしい雰囲気が横たわっていた。
来年もAからの携帯電話が鳴れば、11周年を行うでしょう。