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夢のカップミュート

2018.03.03 21:57

先日ミュートを買ったお話をしましたが、このカップミュートという種類のミュートを持っていたときの話です。


人が多いところでトランペットにカップミュートを装着した状態でスタンバイをしていたところ、小学校3,4年生くらいの男の子とお母さんが近くを通りかかりました。


初めはお母さんのほうが、


「あ、トランペットだよ!」


と僕の楽器を指さして子どもに伝えていました。子どものほうも「ほんとだ!」といったリアクション。



トランペットを吹いているか、興味があるか、何らかの理由で知ってるといった具合です。




男の子はトランペット本体ではなく、ミュートのほうに意識が向いているようで、


「お母さん、ぼく、あのミュート知ってるよ!」


なかなか渋いなあ。

と思った矢先、男の子の口から意外な言葉が出てきました。



「お母さん、あれはね、『夢のような音が出る』ミュートなんだよ!」




夢のような音が出るミュート

夢のような音が出るミュート

...




頭からバケツの水をかぶったような衝撃。

頼んでもいないのにアイス・バケツ・チャレンジを男の子に強要させられた気分。





俺はいつからこんなに心が汚れてきたのだろうか。



幼い頃は何を見てもキラキラと輝いて見えていたじゃないか。


桜並木

夏の木漏れ日

一面に広がる紅葉

雪が降れば街がすべて遊び場になり

何日でもワクワクしながらスパルタンXで遊んでいたじゃないか。



ああ、俺はいったい今まで何をやってきたのだろう。




子どもの純粋なひとことで、心が洗われました。



でも、ごめん、男の子よ、



この夢のような音が出るミュート、



音量がうるさいから強制的に付けさせられているだけなんだよ。





ごめんよ、



ごめんよ...







荻原明(おぎわらあきら)