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効果的な印象づくり(1)ネーミングやパッケージデザイン|直販農家のためのFun×Fanマーケティング講座⑧

2018.03.02 11:11

皆様、こんにちは。大平恭子です。  

「直販農家のための、Fun×Fanマーケティング講座」は、今までの実践や講演セミナー内容、指導アドバイス事例を、大平流に連載ブログ形式でお届けするものです。 (これまでの記事はこちら。)本編の8回目のテーマは「効果的な印象づくり(1) ネーミングやパッケージデザイン」です。 


◆コミュニケーションから見たネーミングやパッケージデザインの役割 


そもそも機能性という視点でみると、商品名の目的は「これが何であるか」を識別するものであり、パッケージ(包材)は、中身を保護するものとして存在します。 さらに、他との差別化を図り、お客様に対して 「知ってもらう」「手にとってもらう」「選んでもらう」の行為をスピーディーに促したいもの。


コミュニケーションの観点からみると、商品名やパッケージデザインは、「お客様の認知スピードを高め、個性・魅力を伝達する手段」ということができます。 


◆伝達手段は、分かりやすく「らしさ」が伝わるように 


「伝達する手段」となると、あれこれ「思い」を目いっぱい盛り込んでしまいがちですが、知らない人に対し、「何を一番初めに知ってほしい、覚えてほしいのか?」の観点から、あくまでも分かりやすく、しかも「らしさ」が伝わる視覚的訴求を心がけることが肝要です。


コミュニケーションの分野にある「3・3・3の法則」(注1)では、人は見た目の情報や印象において、短い時間で判断してしまうことが分かっています。またネーミングでは、音感も大事。「言いやすい」「覚えやすい」も決める時の判断基準となります。 


では具体的にはどういうことなのでしょう? 


今回は、単なる一商品のネーミングやパッケージデザインということではなく、その上位概念にある「ブランド」に関わる観点から、ネーミングを農場名に、そしてパッケージデザインを自農場の商品を識別するラベルデザインに置き換えたSucchan farm(スッチャンファーム)の佐藤勧さんの事例からお伝えしたいと思います。 


<Succhan Farm の農薬不使用、無化学肥料栽培のほうれんそう>


◆愛称を農園名に、自身をキャラクター化 


   佐藤さんとの出会いは、2014年あたり。ちょうど自農園の野菜を直販すると決め、その売り方について構築していた頃。スッチャンは佐藤勧(さとうすすむ)さんの愛称であり、袋詰めした野菜を一目で識別させるために、栽培品目ごとに自らをキャラクター化し、ラベルデザインとして展開をスタートした頃でした。そして将来の理想の姿(ビジョン)を意見交換した時に、農業者である自分を通じた地域のコミュニティ形成があり、そのシンボルとして、農園名やキャラクターがあったと記憶しています。


<栽培品目や用途に応じたキャラクター。左から、ナス、和牛、オリジナル、トマト、ひとめぼれ、ササニシキ> 


<トマトバージョンは、Succhan Farm FBページのアイコンとしても活用> 


 多くの宣伝費を持たずに「知ってもらう」「気づいてもらう」ためには、同じ情報の圧倒的な積み重ねが必要です。例えば自己紹介時の呼称、SNSでの発信内容、販売会での呼びかけ、売り場POP、農園看板など人の目や耳に入ってくるものはすべて情報。それらを集約して、まずはどうやって覚えてもらうか、印象づけるかを目的に、自ら意図をもって「魂入れ」をすることが大事です。 


 「どこにおいても生産者が一目でわかるように」の狙い通り、佐藤さんのお客様や応援者は気軽に「スッチャン」と呼び、「スッチャンのトマト」「スッチャンのナス」といった形で、個性づけと識別がなされました。この一連の取り組みや就農から将来ビジョンまでのストーリーは地元新聞に紹介されるとともに、自分と商品が離れた場所にいても、その人となりの存在を感じ、お客様との距離が近くなる「情報伝達」の好事例ということができます。  


◆お金をかけずに知恵を使う。ブレーン開発の有効性 


よく講演会等でお話をすると、「生産者」はデザインにお金がかけられないから、いい「売り方」ができないと主張する方がいらっしゃいます。人の手を借りるとそこに対価が発生するのは経済活動の中では当たり前のこと。それを付加価値化につながる投資ととるのか、経費ととるのかは、個人の経営判断であり、第三者の評価評論の題材ではありません。ましてや「お金をかけることができない=(イコール)いい売り方ができない」でもありません。


解決方法の一つとして、事業計画が明確であれば、助成金等の公的資金の活用もありますし、家族や身近な人で得意技を持っている人がいれば、それを経営資源の強みとし、その技術を活用していくことも手段のひとつです。 


そして、何よりも意識してほしいのは、将来ビジョンに理解・共鳴してもらえる仲間やプロの視点を持ったブレーンをつくっていくこと。その人脈や培われた信頼関係もまた、あなたの経営資源となります。 今回の内容が皆様の気づきや行動促進につながりましたら、幸いです。


※注1; 3・3・3の法則:アメリカの心理学者:レナード・ズーニンにより提唱。 人の第一印象は、見た目3秒で決まり、30秒で第二印象、3分で自分との関係性を決めてしまうというもの。 



※直販農家のためのFun×Fanマーケティング講座一覧




【プロフィール】 ブランドストーリー 代表 大平恭子 

 食農連携の分野で「売り方・食べ方で人と地域を活性」をミッションに、付加価値化と魅力増大を図る専門家。生産者・農産物ブランディング、食事業者に対する健康食材コーディネートやレシピ開発、加工品開発支援、講演セミナー等を行っている。

 健康的でポジティブなライフスタイルを実践するために始めたランニングは1年で10km走れるようになり、2018年3月には名古屋でのハーフマラソンに初挑戦の予定。 

 6次産業化プランナー、野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター