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酒場BETTAKO

BETTAKO laboratory file 2

2022.10.05 10:38

JR志布志の駅から南に進路を取る。

448号線、時折広がる志布志の海原を、

眺めながら菱田川を超えると、その先に

ひとつの蒸溜場が佇んでいる。

120年の歴史ある蒸溜場は1901年創業の蔵は、

【老松】という名で私の中にしまわれている、

貴重な思い出として今も残っている。

【老松酒造】の120年の歴史は、2010年新たな

航路を進むべく、【天星酒造】となり今も

大崎町菱田の地でニッポンの蒸溜酒を醸している。

 

今回選出した銘柄は「呑酔楽」。

あくまで個人的な見解ではあるが、ふと…。

この2022年の呑酔楽を研究してみたくなり、

古いお付き合いをさせて頂いている、鹿児島の

小さい商店からこの銘柄を取り寄せて、

BETTAKOのlaboratoryで解析を試んでみた。

 

瓶蓋を開け、香りを嗅ぎ生で味わってみる。

幾つもの新酒がこの時間、産声を上げる中、

薩摩半島の風味とは異なり、その技術力が

中身に織り込まれている銘酒と印象を覚えた。

 

【ストレート時の分析結果】

Am:a+3.66(2.65mm) Kr:ba-3.72(2.84mm) At:a -3.45(3.0mm)

 

芋焼酎に限らず、瓶の中で眠る性格達を、

覆われ纏う衣を一枚一枚、丁寧に剥がしてゆけば、その土地に、そして個性という風味は、

瓶の中身の中でも、呼び起こす事ができる

酒類でもある。

さてと…この銘柄が持つ性格を引き出す方法を、

少しだけ思考と模索の時間を頂戴してみた。

 

6種類の水質異なる水を用意し、パターンの異なる

焦点を変えながら、その工程複数回試みた。

湯温と割り合は、数ミリ単位で調整しつつ

この銘柄が持つ、菱田の物語が含まれる、

将来のあらすじをひとつひとつ紐解いてゆく。

呑酔楽という銘柄を念頭に置き、造り手が施した

プログラムの中にある味、つまりこの銘柄の

ポテンシャルを微調整を重ねながら、ギリギリの

ラインを探索してゆく。

 

【お湯割り時の分析結果】

K1:Am:bb-3.64=21s(4.0mm) Kr:bc+4.12=38s(3.9mm) At:ba-3.86=44s(4.10mm)

K2:Am:a+3.86=58s(4.45mm) Kr:b+4.25=32s(3.96mm) At:b-3.66=46s(4.2mm)

N:Am:a+4.8=77s(4.54mm) Kr:a++3.92=113s(4.76mm) At:b-3.87=113s(3.99mm)

O:Am:b+4.6=92s(4.0mm) Kr:a+4.2=79s(4.5mm) At:a+4.21=152s(3.86mm)

Bo1K :Am:b+4.13=72s(3.56mm) Kr:b+3.34=64s(4.0mm) At:bc-4.13=134s(3.96mm)

B1o2K :Am:ab-4.6=67s(4.54mm) Kr:c++4.4=104s(4.2mm) At:bc+4.15=124s(4.60mm)


◾️Best bo1k134s(3.96mm=b+39.32)

 

ロックで試みた。

毎回同様、厚みと材質の異なるグラスを2種類

用意し、氷のキューブ面積は一定、氷の個数と

解溶時間を考慮し、ロックの深みを探る。

ロックの場合、その素材の甘味を引き出す方法は、

銘柄ごとに溶解の際に生じる回流がポイント。

 

 【ロック時の分析結果】

ロックA:Am:b+k/1(113s=5.3mm) Kr:b-k/1(133s=3.9mm) At:b++(151s=4.43mm) 

ロックB:Am:b+k/2=3(93s=4.45mm) Kr:b-k/2=3(125s=4.15mm) At:c++(131s=4.23mm) 


◾️Best b-k/2=3(125s=4.15mm)

 

次は水割りで試みることにした。

この瓶の中で眠っている本来の性格を

呼び覚ます事、それは最も重要性が高い

事でもあり、ひとつのポイントでもある。

今回、水割りとして試みる5種の水を用いて、

深く探ってみようと思った。

 

【水割り時の分析結果】

K1:Am:b/a-m39.5%=(4.23mm) Kr:b/b+m46.5%=(4.3mm) At:a/c-m51.5%(4.73mm)

N:Am:a/a-m44.9%=(4.15mm) Kr:b/b-m51%=(4.4mm) At:b/a+m58.5%=(4.75mm)

O:Am:a/c-m61.4%=(4.34mm) Kr:bb-m55.6%=(4.24mm) At:a/b-m45%=(4.38mm)

K2:Am:b/c-m50.5%=(4.29mm) Kr:c/c+m60.5%=(4.77mm) At:a/c-m52.5%=(3.95mm)

M2:Am:a++m64.5%=(4.40mm) Kr:b/a+m55.0%=(4.60mm) At:a/c-m59.2%=(5.02mm)


◾️Best M2m62.5-63.7%=a+(4.60mm)

 

私にとって【燗】とは、単なる銘柄を温める

だけが燗ではなく、多くの銘柄達の個性には、

長所と短所がある。

短所が強めならば、長所とのバランスを

引き合わせながら、短所を長所へと誘う。

そのバランスを一瞬で見極めるの事こそが、

燗つけという見極めの技でもある。

 

今回の酒器は2種類、異なる水質を4種を使用し、

割合・温度・タイミングを見計らい、

菱田で生まれた、この【呑酔楽】の性格という

ポテンシャルをひとつひとつ拾い上げてみた。

 

【燗付け時の分析結果】

K1:Am:c/c+m51.5%=(4.72mm) Kr:b/c-m45.4%=(4.42mm) At:c/b+m55.5%(4.47mm)

N:Am:a/c-m44.5%=(4.65mm) Kr:b/b-m56.8%=(4.26mm) At:a+m60.5%=(5.05mm)

O:Am:a/b-m52.5%=(4.85mm) Kr:b/c-m55.8%=(5.45mm) At:b/a+m51.8%=(4.74mm)

M2/O:Am:a/c++m57.5%=(4.32mm) Kr:b/b+m.56.6%=(5.05mm) At:a/b-m60.6%=(5.86mm)


◾️Best M2/O m56.6%-67.5%=a+(5.45mm)

 

今回、BETTAKOの2階Spaceの空間内で、

久方ぶりに行うLaboratory fileの解析を行った。

新酒という分野は、製品それぞれの個性がある。

一年に一度の味。という表現を用いることも

出来るが、ある意味20年造ったとするならば

20回しか造れないという事にもなる。

 

今回、大崎町菱田の本格焼酎を分析したが、

菱田の素朴な風味の中に、新風を願うコンセプトが

この瓶の中に詰め込まれていた。

私は、美味いとも不味いという表現も用いる事は

ない。ただ用いる表現とするならば【面白い】、

【補う】という表現を用いる。

微かに眠る各々の性格をピンポイントに引き出す

それは容易くは無い。

ただ単に嗜むのも酒の魅力ではあるが、ここ数年の

本格焼酎達は、嗜む人がどう飲みたいか…という

自分なりのカスタマイズ製品としてプログラム

されているかのようにも思う。

美味い・不味いに翻弄されるのでは、いろんな

飲み方で、STYLEを楽しむのも酒としての魅力。

この【呑酔楽】を造り上げた、天星酒造株式会社

スタッフ一同に感謝致します。