ぐるぐる回る
私がまだ記憶が無いほど小さい頃。幼稚園年少さんくらいかな。 毎日なぜか夕方決まった時間に、居間のテーブルの周りをグルグル回る、という奇行を繰り返していたらしい。
で、5分くらいグルグルしたあと、大泣きして床に倒れる。倒れたあとぐっすりねる。
これはてんかんかなにかか?って事で、お医者にも連れて行ったらしいんだけど治らず。原因もわからず。 しかも、幼い私はグルグル→大泣き→ぐっすり。の間の事を覚えていないらしく、 なんで回るのか聞いても応えないし、 グルグルの途中で抱き上げたりして止めるとエライ暴れるので、(一度口を噛んで血が出たらしい) どうしようもない。 ただし、家以外の所では回らなかったらしいので、外に連れ出す事で乗り切っていたが、 弟(乳児)がいたのと、ちょうど時間が夕飯のしたくにも重なるし、結構大変だったみたいだ。 意味がわからなくて怖いし。
お母さんがちょっとノイローゼになりかけた時、ある事に気付いた。
「居間のテーブルをどかしたらいいんじゃないか?!」 私はここまで聞いて大爆笑してしまったが、お母さんは大真面目。 で、さっそく部屋のまんなかにあったテーブルを、壁につけて配置。 変なインテリアになったが、とりあえずそれで様子をみることに。
夕方いつもの時間、どきどきして私を見ていたらしいが、回る気配なし! 喜んだお母さんが、お父さんに報告電話をかけようと立ち上がった時、 ふと居間のでかい窓から見える庭に目がいった。(居間から庭に面して縁側みたいになってた)
庭には大きな木があるんだけど、その下に、なんと、私がいる!
そのもう一人の私は、居間のほうを向いて立っていて、目があったらしい。 はっとして小さく声が出た瞬間、その『私』は木の周りをグルグル回りだした。 じゃあ、横にいる私は?と思って見てみると、ちゃんといる。 一緒にその木の下の私を見ていたらしい。普通の顔をして。
お母さんが、は??なにこれ?って感じで硬直していると、 隣にいる私が「お母さんは、見ないほうがいいよ」って言って、窓のカーテンを閉めた。 怖がってる様子とかもなく、テキパキと。
状況が飲み込めずに、カーテンを閉める私をみていたお母さんだったが、 ちょうどその時に、弟が泣き出して我にかえった。 急に怖くなったお母さんは、それから速攻で私と弟を抱きかかえ、近くの友達の家にダッシュ! お父さんが帰るまで、そこでブルブルしてたらしい。
それから引っ越すまで、ずっとテーブルは壁についたまま。 その後『木の下で回る私』は、お父さんにも目撃される。 見たのは雷の日で、しかも夜。超怖かったけど、やっぱりカーテンを閉めたらしいもう一人の私以外にもいろいろ出たらしいので、お父さんは「家が良くなかったんじゃないか」と言っていた。
間取りもおかしいし、誰も入りたくない部屋というのも存在してたという謎の家。
社宅だったから、それからすぐに引越しした。
だから私には、その家の記憶はほとんどない。
この話を聞いたときは、小さいときの自分が自分じゃないみたいで怖かった~。