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粋なカエサル

「探梅の魅力」①

2018.03.05 22:45

  梅の木の間をそぞろ歩きながら、梅の香りを楽しむ梅見。探梅(たんばい)と呼ぶほうがしっくりくるが。梅は別名、「匂草」(においぐさ)。「香散見草」(かざみぐさ)、「香栄草」(かばえぐさ)などという洒落た別称もある。かつては、新しい着物を着て出かけたようだ。着物に梅の香りを移すためだ。また通は、昼間ではなく夜梅見に出かけた。香りをより深く楽しむためだ。

       「白雲の 龍をつつむや 梅の花」(嵐雪)

 この梅は、亀戸梅屋敷の「臥龍梅」(がりょうばい)。白雲のようなまわりの満開の梅が、臥龍梅という竜を包んでいるように見えることを詠った句だ。

「実に龍の臥したるがごとく、枝はたれて地中にいりて、また地をはなれ、いづれを幹ともさだめがたし。」(『江戸名所花暦』)

 露沾(ろせん)はその姿を見事に形容した。   

       「登る花 くだる花もや 臥龍梅」

 素丸(そまる)は、その素晴らしい香りが消えないことを願ってユーモアあふれる句にした。

       「この梅に 散らぬ鍼(はり)する 人もがな」

 この「臥龍梅」。外国でも結構知られている。歌川広重「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」をゴッホが模写(「花咲く梅の木」)したからだ。広重は、画面手前に梅の枝を大胆に配置した対角線構図、「前景ー後景」対比といった印象派の画家たちに多大な影響を及ぼした構図をとっている。ゴッホはトレース素描まで行ってその構図はそのまま採用したが、色彩は原画から自由にゴッホらしく表現。さらに画面左右に漢字を配置し、エキゾチックな効果も加えている。

 まもなく桜の季節。喧噪の季節がやってくる。その前に静かに香散見草を楽しみたい。

(歌川広重 「江戸名所 亀戸梅屋舗)

(歌川広重「東都名所亀戸梅屋舗全図」)

(歌川広重「東都名所亀戸梅屋舗全図」)部分  そぞろ歩きながら、眼で、鼻でたのしむ 

(歌川広重 「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」)

(ゴッホのトレース素描)

(ゴッホ 「花咲く梅の木」)構図は広重そのままだが、色彩はゴッホらしい大胆さ