〈らしさ〉と〈新しさ〉の同居するJUDAS PRIESTの新作。
3月7日、世界の何処よりも早く日本でのリリースを迎えたJUDAS PRIESTの新作『FIREPOWER』が素晴らしい。火力発電かよ、と突っ込みたくなるベタなタイトルを最初に知った時には少しばかり不安をおぼえたものだが、思えばこのバンドには特撮ヒーローや戦隊モノを思わせるようなタイトルや歌詞を伴った代表曲も少なくない。メタル・ゴッド=重鎮=仰々しい作風、というイメージから敬遠する向きもあるのだろうが、実は昔から彼らにはそうした表現を伴ったキャッチーな楽曲がとても多いのだ。そして実際、本作もまた大作主義の真逆といえるフックに富んだ比較的コンパクトな全14曲が詰め込まれている。
もう少しだけ具体的に言うならば、『POINT OF ENTRY』(1981年)、『SCREAMING FOR VENGEANCE』(1982年)、『DEFENDERS OF THE FAITH』(1984年)あたりの曲と並べた時にとても相性の良さそうな曲が目立つ。しかも、敢えて言うなら、名盤とされることが多いながらも実は必殺チューンの合間にそうでもない曲が挟まっていた『SCREAMING~』などよりも、ずっと楽曲が粒揃いだという印象がある。
しかも、そうしたたたずまいをした作品でありながら古くささは感じられない。コンセプチュアルな意味での近未来志向の作品では決してないが、あくまでこのバンドが80年代に確立していた〈型〉に則っていながらも、聴感的に現代的なクオリティを伴った1枚だと言っていいだろう。トム・アロム、アンディ・スニープという世代の異なるプロデューサーによる異例の共同制作体制がとられているのも、バンドが目指したのがそうした作品像だったからであるに違いない。
アルバム完成から発売までの間に、グレン・ティプトンがパーキンソン病を患っていてツアーに不参加であること、プロデューサーのアンディ・スニープがその代役を務めることが報じられ、それをめぐって元メンバーのK.K.ダウニングが「どうして俺に声を掛けないんだ?」と憤慨していることや、それに対するバンド側の言い分なども伝えられてきた。正直、K.K.に対しては、本当にバンドのことを思っているならばメディアではなく当事者にそれを言えよ、という気がする。が、まずはそうした話は一旦すべて忘れて、まっすぐにこの作品に向き合いたいものだ。というか、意識的に雑音に耳を塞ごうとしなくても、研ぎ澄まされたリフとフックに富んだ楽曲群、そしてロブ・ハルフォードの唯一無二の歌声が耳を捉えて離さないはずだ。現在の僕はこのアルバムに点数を付ける立場にはないが、敢えて言うならば迷わず90点以上を付けたくなる作品である。
『FIREPOWER』JUDAS PRIEST(2018年)
http://www.sonymusic.co.jp/artist/JudasPriest/