ふえる日記たち
幸福な一日だった、と思う。
開け放たれたドアから西日が吹き、とおくのくまが遠吠えをきいている
ただそれだけ それだけのことだった。
なにもかも普遍的で、ありきたりで、当たり障りのない、黄金色の、はちみつのなかで
しんでゆくみじめないきものたちのパレード
うれしくてなみだがでそう、と思ってる。もうにじんでいた。なにがそんなに悲しくて、もしかして嬉し泣きなのか、自分ではわからなかった。ただ、あらゆることを好きと思っていた。ほがらかなきもちで。普段なら嫌厭する日差し。西日が、からからと差しこんでいる。それを、享受している。甘やかで残酷なシュガータイム。
嬉しくても涙が出ることを教えてくれた、そうね。とゆきはいってた。これがそうなら、なんてばかばかしくてふざけてるんだろうと思う。わたしは何もかもを、偶然手にとったスイートリトルライズがそうであるように、重ねていた。なにもかもを必然として、受け取ってはこぼれおとしていた。わたしにはなにもない。
何気ない会話も悲しくて、笑いながら涙がでた 昔あげた変な形のぬいぐるみをさわって、これに感動したの ちょっとって誤魔化した 馬鹿みたい
抱き合ってるとき泣けて仕方なくて、しゃくりあげてた 単純に寂しかった。 別れるのにこうしてるなんておかしいと思った これが最後って思ったらばかばかしいくらい泣けた そんなに好きじゃなかったはずなのに。これ以上好きになりたくないってゆった 顔がおもいきり歪んでいる 声が震えないように気をつけながら、キスしてってゆった もう何度目かわからない 顔を離して 今日初めて相手の目と向かい合ったらまるでこっちが睨んでるみたいになった 視線が合う 「泣いてるの?」 口の端が思いきり下がってるのがわかってた ぐじゃぐじゃの濡れた目で ばかみたいな距離感で お互いもうわかってると思った 何もいわなかった 頬を両の手で包まれる 長く深いそれ 二人で慰めるみたいに もっとして もっとって 懇願するみたいに 興奮して泣いてるとでも思ってた?
まるでばかげていた やっぱり冷静にわたしは何かを寂しがってた 好きとかより、ある種郷愁のようなもの 別れの気配はそのとき確かにあったから、やっぱり二人とも知らないふりをしていた。 最初は、こんなになると思ってなかった。(こんなつもりではなかった)という悔しさみたいな変な感情 こんなにかなしいと思わなかった その吐露に うん、うん、と返す相槌が思いきりしめっていた。どちらも、好きなのに離れないといけなくなる いつも
言いたいことがあるならゆって 別れるって、今ゆってくれないなら LINEでゆうくらいなら 今言って、、今ゆって!!!って号泣してた 弁解しながら、わたしを抱きしめてた なんで別れるってゆってくれないのって、思ってそれは半ば怒りだった。
好きだよ、大好きってそれは伝えようとして発されてた。子供が親を離さないときみたいな 冷静で固い あのひとが使いそうもない言葉。 二人で不安だった 拠り辺がなかった 常にふわふわと浮いている 繋ぎのない浮き輪 他の人がそうなるなら、それくらい魅力的だってことだよ、といっていた 付きまとう男のSNSのブロックボタンを、押そうとしててわたしが止めた 大きな座椅子みたいな安心感 強すぎる抱擁 肩に顔を埋めるときの恥ずかしいくらいの熱 溺れることができていた ふたりとも溺れることができていた 悲しい 長すぎるキスは別れの前兆だって思ってた してるときの もっとくっついて ぎゅってして 離さないでって、スイートリトルライズの台詞 実際に自分も言うと思わなかった これからどうなるのかわからない
たのしかったね たのしかった 短い時間 だから楽にできた気もする 雨が降ってて、車がきて、手を、ひいて守ってくれた わ、と声が出て、それは本心だった 手をつないだね 雨が降っていた もうピンク色ではない世界 寂しさも透けてみえる でも色がなくなったとして、そこはまだ愛しいと思える