「宇田川源流」 習近平三選目の直前に「北京市内に批判のスローガン」がでる中国共産党内の混乱
「宇田川源流」 習近平三選目の直前に「北京市内に批判のスローガン」がでる中国共産党内の混乱
あえて言っておくが、一般論として「何事も新しくすること、新規の事、慣習を破ること、そして改革をすることなど現状を変更する行為に対しては、必ず反発と反対意見が出る」ものである。その内容をしっかりと見てゆくということが、ここでは最も重要なのではないか。そして、それをしっかりと見たうえで、「必ずしも改革者が素晴らしい」というわけではなく、その内容をしっかりと吟味して検討しなければならないし、自分なりの意見を持つ必要があるということは間違いがない。
さて、あえて一般論から始めたのは、中国の全人代が16日、つまり、この前の日曜日から始まっており、まずは、共産党規約の改定から始まるということになっている。ちなみに言っておくと、全人代(全国人民代表大会)は、多くの人は会議であると思っているようであるが、中国の場合「既に根回しが終わっていて決まっていることを広める儀式」でしかない。要するに、全人代の中で、反対意見が出て否決されるなどと言うことはないのである。
その意味で言うと、事前に報道された内容はそのまま採決されることになる。逆に言えば、その事前に漏れ伝わる報道内容に反対する人々は、当然にそれに対して「開催前」に反論を表明することができるということになる。今までは、そのような意見があっても力で封殺していたか、改革開放以外はそれらを「少数の意見」として無視していた。しかし、習近平の時代になって10年、そのような「無視する」ということが出来なくなり、習近平に反発する人々は「反腐敗キャンペーン」の名のもとに全て粛清され、政治の表舞台から姿を消し、また、民衆の中で民主化狙う天安門事件以来の人々は、全て逮捕されるなどのことになったのである。
つまり、「言論の封殺」を行い、中国には言論の自由はなくなった。しかし、それは「不満が無くなった」のではなく、地下に不満が蓄積されているということになり、また、その内容は政治の上層部から民衆の下層部まで全てに行き渡った内容になっているということになる。
「習近平指導部は要らない」「辞めさせろ」北京市内にスローガン 党大会直前に衝撃広がる
16日から始まる中国共産党大会を前に、習近平国家主席を批判するスローガンが北京市内に掲げられ衝撃が広がっています。
北京市内の高架橋に掲げられたのは2つのスローガンです。
1枚目には「PCR検査は要らない、ご飯が欲しい」「ロックダウンは要らない、自由が欲しい」「嘘は要らない尊厳が欲しい」「文革は要らない改革が欲しい」「習近平指導部は要らない選挙が欲しい」「奴隷になりたくない国民になりたい」の文字。
2枚目には「独裁者習近平を辞めさせろ」と書かれています。
記者
「つい先ほど、こちらの橋には習近平国家主席を批判するスローガンが掲げられました。周辺には警察関係者が警戒に当たっています」
スローガンはすぐに撤去されたということですが、習近平指導部が厳しい言論統制を敷く中、党大会直前にこのようなスローガンが張り出されたことに衝撃が広がっています。
2022年10月13日 16時49分 TBS NEWS DIG
https://news.nifty.com/article/world/worldall/12198-1925465/
「独裁」「国賊」異例、習政権批判の横断幕…背景に何が
中国・北京で13日、習近平国家主席を批判する横断幕が掲げられました。こうした形で政権への不満があらわになるのは異例のことです。
13日、北京では「独裁」「国賊」と習氏を痛烈に批判する横断幕が掲げられ、衝撃が広がりました。横断幕には、また「PCR検査は要らない。飯を食わせろ」と生活への不満も記されていました。
地方の農村から出稼ぎにきた人が多く住み“都市の中の村”とも呼ばれています。于さんも生活苦から北京に出てきました。
河南省から出稼ぎに来た于さん(48)「(生きるには)食べていかないといけない。子どもの学校もある。いま仕事を辞めて実家に戻ったら何もできない」
ビル清掃の仕事で月収はおよそ6万円、その半分近くを家賃に取られます。コロナの影響でその仕事も減っているといいます。
河南省から出稼ぎに来た于さん(48)「人口の多い中国にはそれだけ貧しい人もたくさんいる。全員が豊かでゆとりのある社会にはなっていない」
国民全てが豊かになる「共同富裕」を掲げる習政権ですが広がる格差への市民の不満はくすぶっています。
2022年10月14日 14時5分 日テレNEWS
https://news.livedoor.com/article/detail/23022310/
批判、反対、というのは簡単である。日本の政治を見ていればわかるように、自分たちの政策が無くても、ただ「反対」と言えば、支持がくる。反対をしている人々、不満を持っている人の受け皿が完成するということになる。あとは不安を醸成すればよいのであって、その内容を「生活に密着させる」ということをすればよい。日本の場合はそれで民主党政権という者ができ、3年半全く機能しない日本の政治が行われた。その間に、たまたま東日本大震災などがあって、大きな問題になるのであるが、いずれにせよ、結局実力がなければ淘汰される。要するに、日本人はいつまでも反対だけをしている人々に騙されるほどダメな人々ではないということなのであろう。
一方、中国の場合は、その辺がうまく寝られているのかもしれない。実際に、北京のしないなどに全人代の直前に横断幕を張るなどと言うことは、誰かが必ず見ているのであるから、できないはずがない。つまり、「監視する側」にも習近平に反対する人々がいるということに他ならない。そしてその中には「ゼロコロナ政策の批判」というような「生活密着した批判」が書かれていることも特徴の中の一つであろう。つまり「独裁」が「中国人民の生活を苦しめている」という論理構造になるように、横断幕が作られているということになる。当然に、その内容を批判すれば、「富裕層である」というようなレッテルをはられることになり、この内容によって習近平支持派と習近平反対派がうまう分離されるように考えられている。同時に生活に密着しているので、その制作者が一般の人民であるということが類推されるような話になっているということになる。もちろん、それを張り出すということになれば少なくとも北京市の支配層が黙認するということになるのであろうから、上下ともに習近平反対派がいるということを意味しているということになろう。
そのような中で行われる全人代で何が決まるのか。
そことはまた別な機会に行うとして、中国の中心都市(首都)であり、習近平のおひざ元である北京市において、このように反対派が出てくるということは、例えば台湾と戦争するとしても、プーチンによるウクライナ侵攻のように、途中で瓦解したり、国内で反対派が動き出す可能性があるということを示唆している。そのうえ全人代での決定事項によっては、より大きな反対運動に発展する可能性がある。と、このように書けば、革命か何かが起きて習近平政権がなくなるかのように想像する人がいるであろうが、そうではない。この中で見えているのは、中国共産党が一枚岩ではなく、深く地下に潜った習近平反対派がいる中で冷ややかに三期目が始まるということであろう。当然に習近平もそれに対して対策を打つであろう。つまりよりいっそう言論統制や規則による締め付けが大きくなる。しかし、それは、反対運動を地下に潜らせるだけで、レジスタンス的な動きが想起されるだけの事ではないか。
三期目という「改革」がどうなるのか?