Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

決めきれないところとか、相手任せな部分とか、三井は自分を見ているよう。『Every Day』主演・永野宗典さんインタビュー

2016.12.04 15:00

12/10(土)~12/16(金)の1週間、大阪は第七藝術劇場、兵庫は元町映画館で公開される映画『Every Day』。京都を拠点に活動し、演劇のみならず映画やテレビ番組、携帯アプリ制作など多方面で活躍する劇団「ヨーロッパ企画」のメンバーである永野宗典さんは、本作で昏睡状態にあるはずの恋人が突然現れて戸惑いを隠せない主人公・三井を演じています。永野さんに本作に出演するまでのいきさつや、撮影中のエピソードなどを語っていただきました。

永野宗典さん演じる三井。今までにない役だったそう。


ぼく松潤じゃないですけど大丈夫ですか?と思いました。


──永野さんは今回『Every Day』に主演をつとめられたわけですが、手塚監督からオファーがあったのはいつごろですか?


2011年に「ロベルトの操縦」っていう僕らの劇団の本公演があって、それを手塚さんが見に来てくださってたんです。その公演には山本さんも出てて。軍隊を舞台にしたコメディで、僕は使いっぱしりの一番下っ端として、あだ名が「少年兵」という役をやってたんですけど。少年じゃないけどそうやっていじられているみたいな。手塚さんは山本さんとお知り合いで、その縁で舞台をご覧になってくださってて、そこで決めていただいたそうです。

僕は、山本さんを通してっていう間接的な関わりはあったんですけど、まだその時は手塚監督の作品も観てないし直接お会いしてもいない状態で。手塚監督はマネージャーとやり取りされていたんですけど、すごい(手塚監督が)丁寧な人だから(笑)「これは受けることにしました!」ってマネージャーから言われて、あ、そうなんだと。


──この『Every Day』の三井という役をオファーされた時はどう思われましたか?


「ぼく松潤じゃないですけど大丈夫ですか?」って思いました(笑)

こういうタイプの役って、個人的な好き嫌いの話とかではなくて、男女の仲の話をする時に、ある程度イケメンの方がやった方が、すわりがいいっていうのはあるじゃないですか。僕自身はこれまで下っ端とか債務者とか、血を這うような底辺の役しかやったことがなかったから、なんかすごい違和感はありました。「あれ、ぼくがこの球を受けていいのかな?」と。松潤だったらこのシナリオ見えますけどって(笑)


──僕が演じていいんですか?と思われたんですね。


そうですね、お客さんが見て大丈夫なのかなとか考えたり。とは言え、僕の素の部分みたいなものを監督が演出してくださったので良かったです。松潤感はけっきょく出なかったかもしれませんが(笑)

山本さんとは劇団でもそうだし、テレビドラマのお仕事とかでも一緒になることも多くて、割とナチュラルに話せる関係性だったので、今回の現場ではそこはとても助かりましたね。


──手塚監督に始めてお会いした時の印象はどんな感じでしたか?


ちっちゃい監督が来たなと(笑)僕も背は低い方なんですけど、腰もすごい低いのでより小ささが際立ってましたね。僕自身もけっこうナヨッとしてるところがあるので、そこはシンパシーを感じました。監督だっていう感じはあまり出してなかったです。撮影が始まってからも、周りのスタッフさんが割と手塚監督に強く当たったりして。(その様子を見てて)あー、これは弱ってるだろうなとか。でも自分の意志は曲げないというか。そういう中身の強さみたいなものは感じましたし、出来上がった作品を観てより強く感じましたね。腰は低いけどこの人ちゃんと見えてたんだなと。


こういうトーンの映画をやったことがなかったから、どうなんだろうっていう不安があった。


──永野さんはシナリオを読まれて、三井という役をどういう人だと捉えられましたか?


すごい自分臭いというか。決めきらんし。


──決めきらん(笑)そうなんですね。


はい。決めきらんし、なんかちょっと相手任せなところがあるし、事なかれ主義で、自分を見ているような感じはしたんですよ。根幹の部分を見て。セリフに書かれていない部分でも、多分こういう気持ちなんだろうなと、分かった気にはなってましたね。

戸惑った部分はテーマですね。男女の仲っていう。キャラクターの部分で戸惑いはあまりなかったので無理なく演技が出来ました。演技なのか演技じゃないのか、っていうラインの所でお芝居できた気がします。声色を作ったりっていう演技もあるじゃないですか。そういうアプローチで出来る役ではないなとは思いましたね。


──永野さんは演じる時にどういうアプローチをされることが多いですか?憑依型なのか、「カット!」って声が変わったらすぐに切り替わるタイプなのか。


役によりますかね。そうやった方が自分のエンジンがかかるからとか、カットがかかっても役が自分に近いからオンオフがはっきりしてなくてそのままでいられたり。ぼくこの前は乞食のおっさんの役をやったんですけど、その時は本当の浮浪者を見たりして。もらった役と自分との距離感によってアプローチの仕方は変わってきますね。


──三井に関しては特に作り込む必要がなかったと。


監督が間違ってなかったらそのままを出しますよ、という感じでしたね。それよりも台本に書かれていることに対して僕が実感を持ってやれるか、というのが一番大事な気がしましたね。


──最初の撮影が三井が職場で怒られるシーンだったとのことですが、そこでストンと三井に入っていった感じなんですか?


これかなー、っていう感触でした。監督の表情を見ながら、「オッケー」って笑顔で言ってるのを見たりしながら、あ、今のセーフだったんだって最初は探りながらという感じでした。三井を怒っている人は普段すごい気さくな方なんですけど、あれのイメージで今でも怖い人っていう印象を持っている人もいて。僕も持ってます(笑)


──山本さんとのお芝居は撮影の後半という事なんですが、今回は同棲中のカップルで、結婚するかしないか、みたいな関係性だったんですけど演じてみていかがでしたか?


そうですね。これまでお仕事は一緒にしてきましたけどむちゃくちゃ仲が良いというわけではなかったし、失礼な言い方になるかもしれませんけど、あんまり構わんくてもオッケーな人、っていうか。あっちも別に気にしてないし。楽な人だなって。芝居自体も結局その関係性で行ったかなと。でも一瞬ドキッとするような表情をする時もありましたけどね。


──僕は映画を観てこの2人のシーンが印象に残っている部分が多くて。例えば2人がキャッチボールをするシーンとかは、キャッチボール選ぶの?って思ったり。


会社をわざわざ休んで二人でどう過ごすか、って時にキャッチボールね。確かにね。


──他にも、三井が咲と二人で映る写真をカメラで撮るじゃないですか。三井さんってこの時代にわざわざカメラで写真を撮る人なんや、って思って。スマホじゃなくて。しかもいわゆる一眼レフでばりばり写真撮るぞって感じじゃなくて。思い出をちゃんと写真で残したい、っていう感じが三井さんの人柄が出てくる気がしました。永野さんも、そういった部分も三井と共通するところですか?


劇団にカメラ部っていうのがあって入ってるんですけど、まだまだ詳しいこととか全然分からないまま撮ってるんですけど、そういう所は無理なくやれました。あれでキャッチボールが上手くてカメラオタクだったらヤバかったですね(笑)


──三井が剛速球投げれたらちょっと嫌ですよね、フォームもキレイで。撮影を進めていく中で、迷わず三井に入り込めたという感じなんですね。


そうですね。まあもちろんチューニングと言いますか、監督の顔を見つつ。でも信じていいんだなという気持ちにだんだんなっていきました。だからすごい迷ったとかはなかったです。


──手塚監督の演出というのは、何か他の監督さんとは違ったりしましたか?


あぁーどうだろう。監督はでっかいキャッチャーミットというか。ストライクゾーンが広い方なのかなと。やっぱり迷いながらやっていたところもあるんですよ。どこまでコミカルにやっていいのかなとか。でも監督はそこの揺れも楽しんでたのかなと。迷うセリフがなかったわけではないんですけど、それすら受け止めてくれた印象です。監督の中にはきちんと確信しているものがあっただろうから、僕が迷ってても動じなかったんでしょうね。そういうのはすごい大事です。


──あんまり撮り直しとかはなかったんですか?


そうですね。あっさり進みました。僕も監督をしたりするので、もうちょっとこの角度から撮った方がいいんじゃないかなとかは思いましたけど。これでもう終わるの?ということの連続でしたね。


──永野さんはご自身で監督もされますもんね。自分の撮影の仕方とは違いましたか?手塚監督は。


違いましたね。自分が撮影するときは、台本書いた段階で自分の中のビジョンはあります。僕は細かく割りたいとか、そういうところで全然違ったし。自分自身が役者でもあるので、「もっと出せるはずだ」って人に対して強く言ったりもするから、そういう意味では真逆の感覚だったから、監督として見た時にいいのか?って思うことはありました。


──でもそれは、信頼してくれているという安心感もあったんじゃないですか?


それはそうですね。一番大きかったのはキャッチボールのシーンで。「すごい良かったですよ」と言ってもらえて。それを言われたのは大きかったですね。安心したというか。僕も迷いなくやったとか言ってたけど、こういうトーンの映画をやったことがなかったから、これで合ってるのかな、どうかなっていう不安はあったと思うんですよ。キャッチボールのシーンを撮るまでは。そこで答え合わせが出来たというか、間違ってなかったんだなと思いました。


──影の期間っていうのは、役者さん同士であったり、役者さんと監督であったりスタッフ間であったり、実際の撮影以外の場所でコミュニケーションを取ったりはされたんですか?


メイクさんとか、衣装さんとかは近くにいるんで話したりはしますけど、監督は忙しいから、撮影に入ってからはあまりしゃべったりはしないですね。撮前の事前の時ぐらいですかね。そこで喋らないといけないことは終わらせたかなという感じです。


──映画とかドラマの現場って、みんなでワイワイ仲良く撮影してました、とかすごいみんな真面目にシーンについてディスカッションしながら撮影しました、とかいうイメージがすごいあるのですが。


一緒に衣装を選びに行ったんですけど、それぐらいですかね。撮影期間中に現場以外で喋ったのは。いかに地味なスーツを選ぶか、というところでグレーの濃淡の違いをずっと見てましたね。それは濃密でした。他の現場だと、その場で言われたことにどう打ち返すかっていうのがほとんどだから。

ドラマの現場とかだったら、主演の人と監督はディスカッションはしたりしますけど他はそんなにないですね。主役は責任もあるし、自分の顔が一番前に出る作品なわけだから、細かい部分とかを詰めたりはしますけど。

手塚さんに何回かお会いして、現場に入るまでに台本を読んだ自分の感想を、しかも割ときつめなことを言ったりはしました。僕はこれ幸福論の映画だと思うんですよ、とか。こういうファンタジーな設定の映画はよくある話だと思うんですけど、とか。なんかちょっとエラそうな感じには言ってた気がして。手塚さんは「僕はそうは思わないですね」と言ったり。そういうやり取りは一度した記憶があります。神保町で。思っていることは最初に全部言った、っていう感じはしていますね。


──撮影に入る前にお互い思っていることを言ったから、撮影が始まったらもうスムーズに行けたと。


そうですね。まあ、あとは監督の表情で(笑)それはよく見ています。

三井と恋人・咲の2人がキャッチボールをする河原で。


セリフを読むだけで然るべきシーンになるというとても得がたい経験


──撮影を進めていく中で印象的だったシーンってありますか?


いくつかありますけど・・・撮影2日目に撮った屋上での津嶋ちゃんとのシーンとか。そこと、咲のお父さんと喋るシーンと、ラストシーンですね。


──津嶋さんとのシーンは、三井との間に何かあったんだろうな・・・と匂わすシーンになっていますよね。


グレーな関係ですよね。エッチなシーンやなあと思いましたね。


──あそこだけ何だかやたらと生々しいですよね。恋人である咲さんとはほとんど触れる場面がないにも関わらず、津嶋さんとはがっつりですもんね。肉体的には一番津嶋さんと絡んでますよね。


そうですよ。柔らかいなーと思いましたよ。


一同 (爆笑)


まあそれが三井だったのか、永野だったのかは分からないですけれど「ああ柔らかい!!」ていうのは、ありましたからねえ(笑)


──リハーサルも丁寧に行ったとのことですが、あれは難しいシーンでしたか?


三井は受け身だから、その点では津嶋さんの方が大変な気はするんですけど。咲のことで落ち込んでて、割と気持ち悪い状態じゃないですか。複雑な感情が絡み合うシーンだったから、そこははき違えないようにはせんとな、とは思いました。


──映画やドラマの撮影って、台本の順番通りに撮らずに終盤のシーンから撮影、というのもあると思うんですが、役者さんはそういう時どうやって気持ちを持っていくんですか?


ひたすら読みますね。愚直に。いまどの段階かって。ただ、お父さんとのシーンとかラストシーンが初日だったら、出来なかったとは思いますね。最後の方にしてくれ、って頼んだと思います。積み上げていくものですね、割と。


──三井さんとの屋上でのシーンの後、津嶋さんが個室トイレで、1人で三井のために作ったお弁当を食べるじゃないですか。あれが僕はけっこう切なくて。でも、元町映画館支配人の林さんとかはあのシーン見て津嶋さんに対して「いや、気づけよ」って思ったらしくて。永野さん的にはああいう女性どうですか?


ああ・・・確かにイラッとはしたんですよ。いまお前をフォローできないっていう。俺のキャパを超えてるしっていう。でもそうなってしまう津嶋のことも分かるから、むげには出来ないっていうのもあるし。傷つけたくない気持ちも働いていたと思います。


──次に印象的だったのは咲のお父さんとのシーンだそうですが。


お父さんとのシーンは、差し替えで想定の台本より長いセリフが来たんですよ。当日に。もともとはもっと短い、3行ぐらいのセリフだったものがけっこう増えてて。


──当日にあんな長セリフが来るってなかなかですね。


あの段階ではすっとセリフが入ってきたんですよね。だからそんなに苦労した、というのは無かったですね。気持ちも溢れてくるから、ああいう経験は初めてのことでしたね。セリフを読むだけで、然るべきシーンになるっていう経験は、すごい得がたいものでした。けっこう間が空きながら撮影してるんですけど、あんまりブランクとか感じなかったですね。間にウシジマくんとかやってるんですけど、全然関係なかったなあ。

あのシーンは、切なさと軽さのバランスが読めないというか。そこが面白いシーンだと思いました。僕自身あのシーンでめちゃくちゃ泣きそうだったんですけど、ここで泣いちゃいかんと思って。なるべく笑わせにいきました。


──お父さんの後ろに咲が出てくるじゃないですか。おどけて出てきて。自分だったらちょっと嫌だなって思っちゃうんですけど。


それすら嬉しい状態なんだと思います、三井は。「涙こぼれるな!」って思ってる冷静な自分もいましたし。


──誰かが亡くなりそうとかそういう緊迫した状況の方が案外、冗談を言ったりしますよね。涙がこぼれるかこぼれないかのギリギリのバランスだったと思います。


俺のここ(涙袋)よう耐えたな!と思いましたよ(笑)


──これもあまり撮り直しはなく?


そうですね、カットが変わるたびに何度か芝居はやってますけど。


──屋上のシーンの時みたいにリハーサルもなくですか?


僕とお父さん役の山内さんは待ち時間に読み合わせはしましたね。山内さんも演劇の方なので、稽古を快く受けてくださいました。


──お父さんが三井に「死んで責任とってくれって言ったら、君は死ぬのか」と言うじゃないですか。あれもきついですよね。ぼくはこの映画の中でヒロインは三井だと思ってるんですけど。三井ってそれこそ流されやすい性格で、普段「へへ、すいません」ってペコペコしている人が、恋人が交通事故で昏睡状態っていう状態に追い込まれて、そこで病院のシーンで恋人の父親の前でガツっと言うっていうのが、成長じゃないですけど、実は三井さんが持っている強さみたいなものが出たシーンなのかなと思って印象に残っています。特に永野さんのファンの方には多分めちゃくちゃ印象に残るかなと。


ファンからの声はなんにも届かないですけどね(笑)でもやりがいのあるシーンではありました。またそういうシーンとか役とか、出来ないだろうなと思ってすごい好きなシーンですね。


※↓ラストの結末について触れています。未見の方はご鑑賞後に読まれることをおススメします。※


──ラストシーンになるのですが、あれがやはり一番悩まれたシーンだとか。


あのシーンが怖かったんですよ。台本を読んでここを体現できるのかなって。ぼく、前の日にお母さんに電話したんですよ。


──え!?


ここのシーンどうやったらいい?って聞いて。


──よく困った時は相談とかされるんですか?


よくはしないですね。誰に相談していいか分からなくて。劇団のやつもこんなん知らんやろうし、教えてもらうのもしゃくやし、っていうのもあったと思うんですけど。でも、誰かに頼るしかなくて、監督に聞いた方がよかったのかもしれないけど、なんか監督には聞けなくて。そこでお母さんに電話して。単純に涙が出る出ない、ってところだったんですけど。「家で台本読んだら泣けるんよ、でも本番でいけるかな」って電話で聞いて。


──お母様はどういうアドバイスを・・・?


すっごくいいアドバイスしてくれて。「あんた小説とか読んでるときに、ずーっと入り込んでたら泣くやろ?だから頭から台本読んでみたら?」って。すごい具体的なアドバイスをくれて。それを愚直にやりました。それでなんかつかめたような気がして。流れに乗れた、っていう感じですね。幹が見えたというか。それでもだめだったら本番で思いっきり嘘泣きしなさいって言われて。奥の手を使えと(笑)


──あのシーンは咲との約束の7日目じゃないですか。「ただいま」「おかえり」ってお互いに言い合ってついに咲は帰ってこなくて、電話がかかって、三井は「さて」と言う。永野さんはあの「さて」はどういう想いで言ったんですか?あれは現場の中でもラストの解釈はそれぞれに任せてたんですか?


現場ではっきりと監督が言った、とかはないですけど咲は死んだ、ということで演じました。あれは、ちょっとした解放感も感じるシーンだったんですよね。妄想とか何かに振り回されてて、何か一個答えを出してくれたっていう感じの「さて」だったかなと。


──でも、あの状況で「さて」って難しいですよね。


難しいですね。もう行くしかないというか。その現実にもう向かうしかない。向かえなかった7日間なのかなと思ったり。自分をだますのはもうやめようと、そういうことともとれるし。


──三井ってこの映画の中でやっぱりちょっと成長しているというか、その兆しが見える気がします。これから1人でお父さんとも会わないといけないし。・・・でもどうなんでしょう、本当に彼女が亡くなって、それを電話で聞かされて行くってなったらいい大人だからわんわん泣くわけにもいかないし、永野さんがもしそうなったとしてもああいう風にできますか?


いやあ、多分もっと引きずる気がする・・・。「さて」は相当苦しいですよね。いったん寝室に行く気がしますよね。でもいずれ「さて」を言わないといけない時は来ますよね。


※↑ラストの結末について触れています。未見の方はご鑑賞後に読まれることをおススメします。※


──撮影が終了してから作品として完成するまでは期間が空いたんですよね?

そうです、監督がご病気で倒れられて。それを聞いたときは未完の作品になるのかと。山本さんと連絡を取り合いながら徐々に回復に向かっているというのは知ったので、安心したんですけど。その経験があったから、たぶん手塚監督は誰よりも毎日の大切さを身に染みて感じられたと思います。


──出来上がった本編を観て、これが手塚監督の作品か、という印象でしたか?

やられた!と思いましたね。あの現場でも腰の低かった手塚監督が、っていう。欺かれたというか、爪を隠してたなっていう感じでした。


これから誰にでも起こりうる風景が広がっている


──映画が完成して、満を持してと言いますか、永野さんの本拠地である関西での上映になります。僕たち映画チア部は同世代の学生に向けて活動しているんですけれど、学生に向けてどういうところを観てほしいですか?


そうですね・・・難しいですね・・・。興味が湧かなかったら観なくていい映画だし。すごい何気ないことが描かれているので、どこをどうこうっていうのが言いづらい作品ではあるんですよね。多分それぞれがどうやって生きてきたかによって見え方が全然違うから。ひょっとしたら何の共感も得られない作品かもしれないし・・・。すごい当たり前のことを描いてて、プッシュしづらいっていうのも正直なところで。

でも、この映画のポスターであったりこの記事を読んだりして、少しでも観てみたい、って思ってもらうのが第1歩かなと思って。淡い映画ですけど、もしよろしければって感じですね。


──例えば彼氏彼女がいる子とか、ああもしかしたら将来こんな感じになるのかなっていうのはあるかもしれないですね。


これから誰にでも起こり得る話ではありますよね。恋人だったり家族だったり友達だったり。誰にでも起こりうる風景だとは思うので。悲しいことかもしれないんですけど。


──一週間だけなんですが、なるべく多くの学生に観ていただきたいですよね。


でも、チア部さんも同じ学生なわけですよね。若いのにこの作品を観て何かを感じてくださったわけじゃないですか。僕自身にも若さに対する偏見みたいなものはあったかもしれないです。これは泣けるシーンなんですよ、っていう分かりやすい演出が多いのは確かなので、伝わりづらいかも、と思う部分もあったんですが。でもなにか想像して感じてくれたらうれしいです。

映画『Every Day』予告編


■公開情報

『Every Day』

12/10(土)~12/16(金)1週間限定上映

大阪 第七藝術劇場 連日20:50~

兵庫 元町映画館 連日18:10~

出演:永野宗典(ヨーロッパ企画)、山本真由美、倉田大輔、こいけけいこ、牛水里美、土屋壮、朝真稀、藤谷みき、谷川昭一朗、山内健司

監督:手塚悟

『Every Day』公式サイト


■PROFILE

永野宗典

1978年生まれ。98年、ヨーロッパ企画旗揚げに参加。以降、全本公演に出演。 外部の舞台や、ドラマ・映画への出演にくわえ、ラジオパーソナリティとしても活動。 ’08年、短編クレイアニメ「黄金」が、第1回デジタルショートアワードにて、総合グランプリを獲得。 以降、役者のみならず、脚本・演出家としても、活動の幅を広げている。 映像監督としては、「悲しみは地下鉄で」「タクシードライバー祗園太郎」などを脚本・監督。 また、劇作家・演出家として、「永野宗典不条理劇場」の名義で、不条理劇を上演している。(ヨーロッパ企画HPより)

ヨーロッパ企画公式サイト