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Classic Music Diary

BEETHOVEN The 5 Piano Concertos

2022.10.16 14:22

Zhang Haochen(张昊辰)、Nathalie Stutzmann / Philadelphia Orchestra 

(BIS) 96Khz / 24 bit

上海出身のチャン・ハオチェン。2009年第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで史上最年少優勝してから既に13年経ち、着実にピアニストとしてのキャリアを積んでおり中国でもチケットが取りにくいアーティストとなっている。北京の大ホールでは満席になる。

3年ぐらい前に北京の国家大劇院交響楽団がアメリカツアーをする際の共演ピアニストはもちろんスーパースターのラン・ランだったが手の故障で同行できなくなりその際の代役に指名されるほど実力を認められている。

今まで出したアルバムは3作。2017年のデビューアルバムはシューベルト、ブラームス、リスト、ヤナーチェックというデビュー作としては随分と渋めの地味な構成だったが、その表現力豊かな抒情性が素晴らしく良かったので、以来何かと注目している。前回はチャイコフスキーとプロコフィエフの協奏曲で、今回はベートーベンの協奏曲全集という王道路線。

共演が名フィラデルフィア管弦楽団、指揮者が女流のナタリー・シュトゥッツマン。シュトゥッツマンはフランス出身で元々コントラルトの歌手だが、来年バイロイトでタンホイザーを振ることが決まっている注目株で非常に興味深い組み合わせとなっている。録音はフィラデルフィアでのセッション。BISレーベルの高音質録音なのでSACDまであり随分と制作側も力を入れたことが窺える。

こうやって、1番から5番まで通しで聴くとベートーベンのピアノ協奏曲作曲時期の変遷(1788−1809の約20年間)に応じたハオチェンの解釈アプローチの違いも聴けて面白い。1番と2番はハーモニーバランスと古典派の形式美を追求し軽やかに。3番での作品自体の風格の変化に応じて力強く、4番5番は完成形に向かって更なる高みへと向かっていくような深み。ベートーベンの精神がハオチェンの演奏を通じて展開されているようで、一つのストーリーのように聴けるアルバムだった。ラン・ラン、ユンディリー、ユジャ・ワン同様中国を代表するピアニストになると思っている。

2022-1201