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山翠舎のブログ

フースタ繁盛ゼミ3月度レポート-前編-

2018.03.09 01:56

こんにちは!

デザイン営業部の酒井です。


今回のブログでは、フードスタジアム主催の毎月開催されるセミナー、

フースタ繁盛ゼミの3月度の内容です。

今回のテーマは、

”「日本酒新時代」のネクストシーンを語り尽くす”。


日本酒マーケットを牽引する講師の方々が講師として登場。

ゼミの前半は、

GEM by moto 店主の千葉麻里絵氏による講演でした。



GEM by moto  店主 千葉麻里絵氏

新宿の「日本酒スタンド 酛(もと)」の店長で活躍後、"日本酒と人は宝物”をコンセプトに2015年、恵比寿に「GEM by moto」をオープンしました。大学で科学を専攻し、これまでにはない科学的アプローチで日本酒の可能性を追求しています。「GEM by moto」では、マイナス5℃で日本酒の熟成が可能な氷温冷蔵庫を設置し、日本酒の管理を行っています。現在は、店長として店に立ちながら、日本酒の魅力を世界に発信すべく、イタリアン、フレンチ、中華など幅広いジャンルのシェフたちと「口内調理」をテーマにマリアージュを追求、コラボを進めています。


「日本酒の価値向上のために、いまやらなければいけないこと」

GEM by moto  店主の千葉麻里絵氏は、日本酒の店としてオープンするGEM by motoを、あえて日本酒の店と分からないような、バル風を狙った内装にしts。

このお店の特徴は、冷酒は四合瓶オンリーであることや、10年ほど前から千葉市の取り組んでいる日本酒を科学的にアプローチすること。

科学的にアプローチすることでお酒の作り手と共通言語で語ることができ、美味しさ、相性の良さ曖昧にならないからだ。

ヴィンテージの日本酒、古酒などを知らない人も多いことから、お店の日本酒メニューの表記は酒米とヴィンテージを載せている。

有名なお酒でも一緒に食べる物によって新しい味を感じることができ、可能性が無限であることを提案するのがこの店だ。



お店の特徴の一つは、マイナス5℃の大きな氷温庫を置いていること。

この氷温庫は酒蔵からヒントを得た。マイナス5度でお酒を保管することで滑らかさや艶っぽさ、熟成酒の可能性を広げることができる。

たとえばお酒に含まれる成分のカプロン酸エチルは、通常の保管方法だとフルーティーな香りが次第にムレてしまうが、マイナス5度で保管すると香りが締まる。

今回の講義の主題でもある「日本酒の値段が安すぎる」という問題提起に対しても、質のいい状態のお酒の管理が価値を上げることにもつながっていく。

だからこそ、テーブルを増やしたり厨房区画を少しでも広げることではなく、

この氷温庫を置くことを重要視した。


先ほども挙げた四合瓶も、お酒の品質管理の面から見ても重要なポイントだ。

一升瓶のほうがお酒の量に対して値段も安いので通常の日本酒を取り扱う店では一升瓶を置くことが多いが、千葉氏の店では四合瓶を仕入れる。

それは、同じお酒でも栓を開けたのが昨日か今日かではお米の違い以上にお酒の味の違いが出るから。四合瓶であればお客様にその違いを感じてもらうこともできる。

4合瓶は一般家庭の冷蔵庫にも入れやすいサイズなので、ビールやワインのように家庭の冷蔵庫に四合瓶がある生活の人を増やしたい、という思いがある。

四合瓶のメリットは他にもある。昨今は食べたもの、飲んだお酒をInstagramに投稿する人も多い。四合瓶はスクエアサイズの写真にうまく収まりやすいので、お店で写真を取りお客様が発信してくれる機会もよくあるという。

(写真は千葉氏のInstagramより。)


料理に適度な違和感を

GEM by motoのお料理は、ジビエ、スパイス、ハーブ、魚のタルタル、ハムカツ、などなど色んなメニューがある。

共通で意識することは、適度な違和感をもたせること。ただ美味しいだけではあっという間に忘れられてしまう。だからこそ、意図的に引っかかるような、記憶に残る適度な違和感をもたせ、ピースの足りない違和感を日本酒を飲むことで完成する味にするのだ。

また、日本酒の初心者と上級者の好みは必ずしも一致しないことや、体調など体の状態にによって好みに違いが出ることも留意する必要がある。フラットな状態で'美味しい'を考えお客様に提案をすることが大切だ。



美味しいの先〜ペアリング〜

飲食店のできることとしてあげられるのは、ストーリーを伝えること。

お酒の作り手のこと。酒造のある場所の景色が連想されるようなこと、そんな情報がさらに食事を豊かにする。

また、従来あるお酒で新しい組み合わせをすることで、経験をしたことのない"美味しい"に出会うことができるのだ。

ここで大事になってくるキーワードがペアリング。

ペアリングとは、お酒と相性のいい食材や料理の組み合わせ。そして、千葉氏の考える日本酒のペアリングとは、従来の日本酒と料理が寄り添うこと。

フランスの食べ方・マリアージュとは、コース料理のように順番に料理を食べ、ワインで流し込み、次の一皿が出てくるような食べ方。日本の三角食べ(口内調味)とは、御飯と味噌汁とおかずを一緒に食べるような食べ方。千葉氏の提供する日本酒と料理のペアリングは、この口内調味の感覚だ。


例えばお店で出るメニューのペアリングの一例は、ブルーチーズハムカツと民宿遠野どぶろく水酛のペアリング。

誰もが好きなハムカツと、一般的に苦手とされるどぶろくの組わせの違和感を利用する。酒の原料米とハムチーズの塩の掛け合わせ。衣の脂身と水酛の酸味の組み合わせ。

今までにない組み合わせでも、美味しく寄り添い合う組み合わせの一例だ。

また、この時のハムカツにはソースを掛けない。それが違和感の一例だ。いつもはソースの役割だった補いを、日本酒が担当する。


記憶のペアリングという手法もある。

ポテトサラダに満寿泉2013貴醸酒を組み合わせる。ポテトサラダは温めて提供する。ホットケーキにメープルシロップをかけるような、温かいものに甘いシロップを掛けるイメージで記憶をペアリングするのだ。

甘いもの同士には少しの塩味と苦味を入れて、輪郭を出すことも特徴だ。



実際に会場で口内調味を体感できるようにと

GEM by motoのオリジナルの6年寝かせた甘い熟成酒をバーボンの樽で香り付けした日本酒と、台湾産の生山椒が一粒配られた。

オリジナル日本酒だけでももちろん美味しくデザートワインのような感覚になる味が、山椒を一粒かみながら飲んだ一口では違う香りと口当たり。爽快感のある爽やかな風味。


今まで減点法で評価されrてきた日本酒だが、加点法にしたい。オフフレーバーのない評価の高い日本酒だけでなく、実際に美味しいと思うもの。作り手の個性の生きる、そこにしか無い日本酒を作れるようにしたい!

そう語った。



雑誌の連載、レストランとのコラボ、イベント限定のお酒の提案など幅広く活動の幅を広げている千葉氏が今回語った取り組みの一つは「dot SAKE project」。

dot SAKE projectとは日本酒の楽しみ方を広げて、一人でも多くの人を日本酒好きにするためのプロジェクトで、

GEM by motoの酒ソムリエ、千葉麻里絵が日本全国の酒蔵とタッグを組んで、日本酒の楽しみ方を提案していく。

その第一弾である「ゴリさんボトル」は、山口県宇部市の酒蔵「永山本家酒造場」の作品。

杜氏、永山貴博氏の顔にちなんで、ゴリさんボトルで登場!

今回のフースタ繁盛ゼミの会場に永山氏も駆けつけてくれた。


このボトルに入ったおすすめの飲み方が書いてあったり、

QRコードを読むと、千葉氏と永山氏の対談動画でストーリーも知ることができる。

例えばこのお酒のおすすめの飲み方は、氷を入れたりライムを絞ったり。

そんな楽しく優しくスペシャルなボトルがこれからますます生み出されていく予定だ。



最後に会場からの質問の時間が設けられた。

Q.

値付けの重要性の話がありましたが、どうやって挙げていけるのか見解を聞きたいです。

A.

千葉氏:日本酒を日本酒と捉えず、’アルコール’と捉える。

10年熟成酒をヴィンテージ酒として扱う。

そうすると、自ずと今までと違った値付けになっていくと思っています。

東京ならそれができるはずだし、世界へ向けて日本酒の値付けをするべきではないかと思っています。

永山氏:私は夫婦でカフェ巡りが趣味です。カフェに行くときはコーヒーにお金を払うのではなく、時間と空間にお金を払っています。それが夫婦の中での暗黙のルール。

その感覚に近いのではないでしょうか。


Q.

酒蔵さんとして、ロックスタイルでお酒を飲むことへの抵抗感はありませんか?

A.

永山氏:一昔前までは、飲み方のバリエーションが少なかったです。一方で今は多様化している中で、お店に来るお客様が"楽しい"、"美味しい"ことが重要だと思います。

お店をステージに見立てたとき、舞台監督である店主がそのステージに必要だと思うことを、店主の思うように動いてほしい、そう思っています。



あっという間の70分の千葉麻里絵さんの講演でした。熱く、真剣に、楽しそうに笑みを浮かべながら話す姿はセミナーを受ける人達を惹きつけ、熱気ある講演でした。

日本酒の飲み方、楽しみ方、認知度、価格。その他にも様々なことが変わっていき面白くなる時代にいる、そう思わずにはいられない楽しい時間でした。


次回はフースタ繁盛ゼミ後編、

3名の対談の様子をご紹介します。

お楽しみに!