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脉状に応じた手技手法の大事

2018.03.09 15:33

浮脉は浅く刺鍼します。

沈脉は深く刺鍼します。

数脉は手早く刺鍼します。

遅脉はゆっくりと刺鍼します。

虚脉は生気を補います。

実脉は邪気を瀉します。

これを原則として、遠心性に広がっている脉は締まるように刺鍼します。

求心性に締まっている脉は余り締めすぎないように刺鍼します。

■遠心性に広がった脉

現す病理状態は陰虚内熱です。

陰という冷やす、潤す、引き締める性質の気が虚損した状態ですから冷やせないので熱を持ち、潤せないので乾燥し、引き締められないので広がります。

そうして生じた虚熱が上昇拡散し肩こり、のぼせ、不眠などの虚熱病症が現れます。

だから脉状もどんどん発散しようとして広がった脉になります。


手技手法は脉を締めるように刺鍼します。

その大要は抜鍼の際に左右圧をかけて抜くことです。

■求心性に締まった脉

現す病理状態は陽虚外寒です。

陽という温める、乾かす、緩める性質の気が虚損した状態ですから温められないので冷え、乾かせないので水が溢れ、緩めることができないので緊張して堅くなります。

手足が冷え、元気がなくなり、浮腫みなどの気虚や陽虚の病症が現れます。


もうひとつ、陰実証でも脉が締まってきます。

気血が滞るので発散できず瘀血という病理産物による様々な病症が体を蝕みます。


陽虚外寒の脉状は陽気を逃がさないように締まった脉になります。

締まって弱い脉です。

陰実証の脉状は気血が停滞して陽気が発散できず締まった脉になります。

締まって硬い脉です。


締まって硬い脉は毫鍼で脉が締まりすぎないように刺鍼します。

鍼を45度以下にしできるだけ寝かせて刺鍼します。

そして抜鍼の際には左右圧をかけずに抜きます。

脉は充実しますが締まらずに緩んだ脉になります。


締まって弱い脉は毫鍼ではドーゼを過ぎるのでてい鍼で刺鍼します。

てい鍼は尻尾に丸い玉がついているので脉が締まらないようにできています。


沈んで硬い脉の患者にてい鍼で刺鍼するとドーゼが足らないのでスッキリしません。

沈んで弱い脉の患者に毫鍼でいくら締まらないように刺鍼してもドーゼを過ごすので具合が悪くなります。


病理の違いはあるにせよ、不妊症で見えられる患者さんのほとんどが脉が締まっています。

細虚とか細堅細緊の脉状です。

脉状に応じた手技手法ができないと、スッキリしないとか具合が悪くなります。

患者の口をついて出てくるのが「私は鍼があわない」です。

鍼のあわない患者はいません。

正確には患者にあわせた鍼ができないというのが本当のところです。


適切な治療のドーゼやそれに応じた手技手法を鑑別するための究極のツールが脉状です。


補法にはここに挙げただけでも三種類の手技手法があります。

瀉法は六種類あります。

これらは最初に手技手法があって脉状があったのではありません。

あくまで脉状(患者の病理状態)を糸口にして手技手法が編み出されたのです。


脉状に従って手技手法を選び刺鍼することは、断崖絶壁を最も安全なルートで渡るのと同じようなもです。

経絡治療家にとって最も信頼のおける水先案内人です。