ZIPANG-6 TOKIO 2020 デザイン・色彩実践講座−6 今後のデザイン・色彩の判断基準−1 「むやみに」と「ですし」・・・寄稿文 林 英光
「むやみに」は前向きに物事の冷静な判断を促し、
「ですし」 は物事の結果の予測の喚起を促す。
これはつい先日名古屋市政資料館の整然とした構内を見て歩き、
ハッと閃いた言葉であリ…その美しい理由を述べる。
当時の国や関係者の思想と感性の高さが偲ばれる名古屋市政資料館ホール
その基本は、やさしく日本の風土に合い、あるいは世界の国それぞれの風土と伝統にも沿うことが、グローバル化とは言え、都市も建物も衣類も化粧にも、各国各地の調和・美しさの判断基準である。
名古屋市の優れた文化財のひとつ名古屋市政資料館
明治維新から太平洋戦争の敗戦に至り、わが国は大きな独自性を見失い混乱し、風土と伝統と流行とで容姿までが世界一混濁し、美の判断もバラバラで、混迷の真っ只中にある。
筆者も1国民としてその行くへを考える毎日ですが、つい先日ある答えに偶然出会った。それは実に洋風ではあるが、実に日本人に合う美しき環境であった。
それはおもてなしなどと言った、曖昧で表層の無責任言葉でなく、大きな心で物事の判断の正しさを、個人も集団も自発的に答えを出すことを要求される、実に奥深く柔軟な「むやみに」と「ですし」である。
当初からあまり歓迎出来ない残念な事例である前回の東京オリンピックは、施設からキャラクターに至るまで心の欠落した「むやみに」であり、物事の結果の喚起反省を促すことの「ですし」の欠落にあった。
なんともまあ材質と色彩構成の見事な和洋感覚の調和 2階通路へ
この名古屋市の指定文化財は誰でも自由に観覧でき、元の厳しい現実の法廷の役割、地下室の鉄格子のあることとは正反対の、あるいはそのことの根底にあった当時の人間の優しさがこの公共建築環境の美しさなのだと思った。
厳格な時代によくもまあ、これほどのものを造った当時の指導者達の生きる姿勢を見た思いである。公共物の安上がりの効率と経済性が基準の現在は、肝心な人の心も含む機能性を忘れた理由が、現在の物質文明の行き詰まりであろう。
「人が環境をつくり、環境が人をつくる」と言う言葉の実践である。
現在世界が、大事なビジョンを見失い、物質文明経済の競い合いの果てが戦争である。
それは今世界の課題の中心であるSDGs やレジリエンスの実践の逆行であり、それらを正しく進めるにも、物事をあらわにせず、末永く平和を、良き伝統を、深き精神性を伝えるには、中庸の呼吸を大切にする古来の日本人の心の奥に静かに届く、共有の基盤となる言葉が大切であると思う。
人類の歴史、文明、そして日常生活の中で、強制的でなく、広く物事を考え注意を喚起し、ひとの共有幻想に戻る心豊かな思いの悠久の慈悲の心が、物事の判断に必要である。
元第二号法廷 喫茶室
木漏れ日の美しい憩いの喫茶室は市民の憩いの空間に
爽やかな2階通路の色彩構成
通路の控えめな立て看板 「・・ですし」に説得力が
なにげない言葉や行為が古代以来の心がつながり、文字でも唄でも詩、声だけでも、その一言が人の心に共有の連帯を醸し出し、自然界とのやりとりが幸せの呪言の繰り返しが、心優しい慈悲の文化になる。
白地に黒字の小さな緑地の看板、「むやみに」の意味が深い
小鳥や小動物のためにか綺麗な水が据えてあった
洋風でありながら存在の違和感もなく彫刻と建築が調和している珍しい公共施設の事例
次回は
今後のデザイン色彩の判断基準−2「未来コンビニは衰退日本を救えるか」
【寄稿文】林 英光
環境ディレクター
愛知県立芸術大学名誉教授
東京藝術大学卒業
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発行元責任者 鎹八咫烏(ZIPANG TOKIO 2020 編集局)
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