国際課税勉強会23(レポ取引事件)
本日、国際課税研究会「一角塾」に参加しました。今回は、レポ取引事件(東京高裁平成20年3月12日)についての報告を聞きました。
「レポ取引」(repurchase transaction)というのは、一般個人や中小企業とはあまり縁がない取引ですが、一言でいえば、買戻し条件付きの有価証券(債券)売買です。売主は、特定の債券を買手に譲渡しますが、一定期間後に、その同じ債券を買主から買い戻すことが予め決められているという特殊な取引です。
主には、資金調達のために用いられることが多いようで、「譲渡担保」という取引にも似ていますが、登記などの手続が不要で、金融機関等にとって使い勝手がよいのだろうと思います。
原告Xは、ケイマンの支店を通じて、海外の取引先との間でレポ取引を契約し、いったん債券を譲渡した後、契約期間経過後に、所定の金額を上乗せした額でこの債券を買い戻し、税務上はいずれも債券を売買をしたものとして扱いました。
ところが税務署は、これは法形式は売買であっても、実質的には有価証券を担保とした金銭貸借であり、Xが買戻し時に上乗せして払った金額は、借入金利子に該当するので、源泉徴収もれとして課税したわけです。
争点は、このレポ取引が売買なのか貸借なのかということですが、裁判所は結局、契約内容と法形式が売買であることを重視し、Xの主張を認めて源泉徴収課税を取り消しました。
レポ取引はたしかに、金銭貸借の性質が強いので、レポ差額を利子に近いものと考え得ると思います。しかし、だからといって、私法上成立している形式を無視して別の形式を当てはめて課税することはできないという原則が示された判決として注目されます。
メモ
法形式は売買でも、会計基準上(実務指針)は、レポ取引は金銭貸借取引として処理することになっていて、Xもそのように経理している。公正処理基準(法22条4項)に照らせば、国税側の主張にも妥当性あり。
ただ、ビックカメラ事件では、課税庁は、法形式が売買だから、会計基準上金銭貸借取引として処理することが求められたとしても、税法上は売買取引とすべきと主張している。矛盾しているようにみえる。
「入門国際租税法」38頁。日米3条2項。メルフォード事件。債務保証の保証料を利子として課税した事件(カナダ)。当時の条約では「利子」とされており、「保証料」が課税対象とは書いていない。裁判所は課税取消し判決。直後、カナダは「租税条約の解釈に関する法律」を制定。利子所得に保証料も含めるという、判決とは対立する解釈法を作ってしまった。
平成21年税法改正で、レポ差額はマージンコールによる調整部分も含めて利子に。