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「劇的な昨夜」インタビュー(第4回:木村友哉 / ザジ・ズー)

2022.10.24 05:57

「せっかく演劇をやるんだからまずは楽しみてぇし」

(日付 2022年9月18日) 聞き手:平井寛人

おんがくのじかんで催される、バーでの演劇ショーケース『劇的』

その第一弾の「劇的な昨夜」を、6つの個性豊かな劇団とお届けします☆彡

【公演詳細】

バーでのショーケース公演「劇的」vol.01 『劇的な昨夜』

2022年10月13日(木)ー16日(日)@東京都 三鷹 おんがくのじかん

みなさん、はじめまして。インタビュアーの平井です

当事務局スタッフがイチ押しの、一癖二癖あるような団体さんから、ここでしか聞けないような話を聞きだしてきました!

「劇的な昨夜」参加団体のカタログ、第4回目のゲストはザジ・ズーの木村友哉さんです。

【ゲストプロフィール】

◎木村友哉

https://twitter.com/Aga_aga_gaaa

(ザジ・ズー https://12062020.wixsite.com/zazizoo)

1999年6月23日生まれ。多摩美卒、在学中から作品制作を始め、役者、劇作、諸々やる。みなさーん、こんにちは

〜おうち時間にオススメの一品〜

「大乱闘スマッシュブラザーズ」の界隈を知ること


企画集団として流動的になる

木村:ザジ・ズーという団体の木村友哉です。

   9月に旗揚げ公演『はっぴーなひびび」という作品を東京都 上野毛の郵便局の上のマンションの1室でおこないます。

   同じ1室で4月ごろにオムニバス形式で、作演出を1人1作品担当し、出演も兼ねる形でおこなったのがきっかけです。

   そこで結構楽しくやれたので、今度もやってみようみたいな形です。

   代表者はアガリスクティ・パイソンです。

   この人物は架空の人物で、もともと明確な代表者を作らず企画集団として流動的になることを目指してスタートしました。

   企画者は存在するけど、それが演出家であるわけじゃない。

   俳優や美術をやりたい人も企画を出して、流動的になれたらいいと思って、その母体みたいなものを立ち上げました。

   だから基本的に集団創作の形でやっています。そこでアガリクスティ・パイソンという架空の人物を代表としていています。

   それから劇場という場所だけじゃなくて、マンションの1室や、今度出させていただくバーだとか、色々な場所がこの世の中には色々あって、「その場でできること」を目的として、何かしらの表現をしていきたいと思っています。

   今のメンバーは多摩美術大学の卒業生(木村)と在学生で構成されています。在学中から仲良くなっていたんで、日々、同じ空間で過ごしていても何かしらの発展がないと消耗していくだけだから、「やってみようか」というところから始まった形ですね。

   構造的な仕組みのところから、ザジ・ズーではアプローチしたくて。今回の集団創作でもそうだし、団体で企画をやるとなると「絶対に参加しなきゃいけない」となると疲れちゃう。

   そういうのじゃなくて「それ、楽しそうだから、興味としてあるから参加してみようかな」という形。だから、結構ラフにメンバーにもなれる。全然興味がなかったら、3~4年ぐらい何もやらなくてもいいですし。

   やりたいことがあった時にやれる場がないと、やっぱり始められない。その体力、筋力的なものが生まれないというのが、自分の中であったので、集まる場としてある。

   一番最初は4人でやっていました。

   今回の旗揚げ公演では10人が関わってくれています。

   そこでも「これをやってください」と言うのって、すごく一方的な関係だから、それだとあんまり良くない。

   どっちかというと「あ、これやりたいんだよね。一緒にやんない?」みたいなところから始まる。

   今回から関わってくれた人にもテキストを書いてもらったり、「こういうシーンがあったらいいよね」というのを制作さんからも言ってもらったり。

   今作っていて「(公演は)マジで1年に1回くらいでいい」と思っているんですけど笑 

   「一個人が考えたイメージが出来上がる感覚」というより、「なんかよく分かんないけど、集合的に面白いものが作れる感覚」「どうなるんだろうという感覚」、好奇心が勝ってはいるけど、そういう感覚でちゃんと進められています。


「ゼロ観客」という状態

木村:アガリスクティ・パイソンの命名は自分が勝手にしたんですけど、急に頭に降ってきたからその名前にしました。

   一番最初にTwitterでフォローしたのはコロンビア大使館で、たぶんコロンビアの人なのかな。それから結構大柄な人ですよね。

   作品や演出の決定権とまでは言わないけど、メンバーがお互いの力を踏んだり押した結果のところに、パイソンさんがいます。

   10年後、アガリクスティ・パイソンという人が同時に色んな場所で公演をおこなっているというのが、日本全国各所に伝播していたら面白いなと思っています。

   あとは海外の山奥でやりたい。

   「なにもない空間」ていうことがあんまり分かってなかったから――基本「なにかがある空間」の方が多くて。今住んでいるこの部屋もそうだし、例えば人が住んでいない森とかにも「人がいない」ということがあるってことだと思うから、そういう空間と共に寄り添うというか、対峙したい。

   メンバーについて、厳しく人を選ぶみたいなことで集団を作る気ではいない。

   「あ、この人と一緒に作りたいな」と思った人は全然誘った方がいいし、千人や1万人いる劇団って見たことないっすよね。

   それはやれないのかっていうと、やれる。やれるし、労力が必要かというと必要ではなくて、ただその場に集まるみたいなこと。

   自分が関わってないところでも、自分の公演がおこなわれてたらいいなと思っています。

   海外で1人で旅したいなと思ったら、大変じゃんね。だから自分がいなくてもやれる仕組みを作りたい。誰かがいたらいいけど、誰かがいなくてもできるという仕組み。

   そこで自分たちの面白が担保されていればいい。

   その場で、その人たちとその時間で、というのが鍵な気がします。

   他には「ゼロ観客」という状態を目指しています。

   1万人集まったという時に、その1万人の中で見せ合うというか、そういう観客が0人になっているみたいな状態。

   そんな関係性として作っていけたら、他者を喜ばせようとすることが自分を楽しませることになるんじゃないかっていう。

   創作も結局、自分のためにやっているのかなと思うけど、そういうことにも繋がっていく。


もはや「演劇よりスマブラ」

木村:俺は多摩美術大学を去年卒業して、今年はアルバイトをしながら大学院に行こうかなと考えたりしながら、こういう活動をしています。

   ザジ・ズーの話に繋がっていくけど、別に「俳優です」「作・演出」という肩書きということではなくて、今回の旗揚げ公演では俳優や作・演出をやったり、宣伝美術のgifを作ってみたり、「こういう曲があったらいいよな」という曲を即興で創ってみたり、ラフに今はやっています。

   外でなにかやる時には、「役者さん」を名乗ることが多いです。

   高校から演劇を始めて、大学に入ってから色々な作品を作り始めました。

   最近は『大乱闘スマッシュブラザーズ』ばっかりやっています。

   もはや「演劇よりスマブラ」という感じなんですけど。

   最初は遊びでやっていたんですけど、「スマブラの界隈でどういう人たちがドラマを起こしている」というか、「界隈はどういう仕組み」みたいなのに興味が出て、調べていくと結構面白くて、演劇を好きになった瞬間と同じくらいの衝撃でした。

   「演劇に関わっている人たちの中には、こういう人がいるんだ」「こういう仕組みなんだ」みたいな、そういう感じです。


喋っていくことを諦めたくない

――創作をつづけるにあたって、エンジンになっていることを教えてください。

木村:「俺のことが嫌いな奴が演劇をやっているのが嫌だから、演劇やってる」っていうエンジンが一つ。

   これは、なんか急に大学に入って生まれた怒り笑

   自分が「素敵だな、この人」と思っていても、やっぱり演劇をやめちゃう人もいるわけじゃないですか。

   そういう時に率直に、「あの人がやめたのに、この人はなんでやめないで続けられるんだろう」みたいな。

   あと創作活動は単純に楽しいと思うのも一つ。

   ある種妥協したり諦めざるえないことを、ギリギリまで諦めないでやれるのも魅力。

   なにかしら溢れちゃうものがあったりすると思うけど、それも全部すくい取れないかなって思うし、その分作っていて死ぬ程たいへんだともめちゃくちゃ思うけど、どうなるのかわからないことを、創作だったり喋っていくことを諦めたくないなと思った。

   親も応援してくれているし笑

   スマブラだと追いつかないんですよ。これは問題です。

   スマブラは同じ土俵で、相手に勝つみたいなことがあるわけじゃないですか。

   創作は各々違う山を登るって感じだから、それはそれでやっぱりその楽しみが違う。


「中間」な作品

――最近刺激を受けた作品を教えてください。

木村:濱口竜介『偶然と想像』を最近観ました。

   なんかすごいね、会話がエロくて。言葉やテキストのツヤがすごかった。

   めちゃくちゃクールだし、役者さんもすごいよかった。別に全員が何かを起こそうとしているわけでもないのに、何かが満ちていて。

   すごい長回しがあったり、見方を間違えるとめちゃくちゃ眠くなる作品だなとは思った。

   でも、すごい「中間」な作品だった。「誰かだけに受ければいい」と「みんなに受ければいい」という中間を狙っている感じがして、自分の感触として良かった。

   最近そういうものを体感すると、なんかテカテカになってしまうっていうか。

   (濱口竜介『偶然と想像』の鑑賞後にも)ツヤツヤになって帰ってきたらしくて笑

   日常でも「いや、そうだわ」みたいな瞬間。普通にバイトしていてお客さんの会話でハッとする瞬間があるというか。

   その人たちは別に何気ない会話をしているわけだけど、そこに自分が対峙しているという感覚が好き。


そういう時間を共有したい

――演劇の原体験というと、どうですか。

木村:一番最初、小学校の頃に劇団四季を観ました。

   そこから入った高校の演劇部は、結構強いミュージカルをやる学校でした。

   その時は「何か作品を作る」という感覚じゃなくて「与えられたものをやる」という感覚だった。

   大学に入っていかがわしい出会いもあり、それから色んなものを作って、色んなものを浴びて今に至ります。

   大学での衝動も、ムカついたから、みたいな感じでやっていましたけど。

   あと「こういう作品作りたいわ」と観ていて思う瞬間もあるしね。

   いくらでもパクる。パクるっていうか、100個パクればオリジナルになるでしょうみたいな笑

   その上でどっかで「自分の方が面白いものを作れる」という謎の自信からみんな始まる気がするし、そういうところからだと思う。

――創作は普段どういうふうにおこないますか?。

木村:全部iPhoneのメモから立ち上げる。

   パソコンでカタカタやるより、フリック入力の方が(脳や指先の感覚と)つながる。

   フィジカル的になんかいい感じにいける。

   鉛筆でも書けない。鉛筆も出力が遅すぎる。自分の「あああ」の出力に追いつかない。

   これ(フリック入力)が一番速い。あとは反射神経勝負。

   メモで「このイメージ面白いな」とか書いたり。最近は急に頭に歌詞が流れ始めるから笑

   シャワーを浴びていて「あ、これ面白いな」と思ったらとか、基本全部残す。

   でも風景は写真で残す。動画でも残す。

   なんかすごい覚えてるのは、東京って音がどこでもする場所なのに、散歩していたらなんにも音がしない道が急に現れた。

   音はするんですけど、音っていうよりでも、水が流れる音だけが聞こえる道。

   それで感動して、道とマンホールの写真を撮った。

   マンホールにカメラを近づけたら鳥の「カー」みたいな声が聞こえたりして、感動した。

   その瞬間に起きた事はその場でしか起きないことで、そういう時間を共有したいのかなとも思う。

   前回の作品では部屋そのものをモチーフにしていたけど、今回の旗揚げ公演では部屋に、違う空間をぶつけるというか、違う空間にしようっていう作品で、結構すごいと思う。その空間の場として、すごいというか。


そのどっちもなんだよな、なんか

――「劇的な昨夜」に参加する作品はどうなりそうですか。

木村:まずはその場を観察して、その場でやれることを探りたいなと思う。

   今回参加する作品では、「おんがくのじかん」という会場で五感がテーマになると思う。

   特に音。

   コロナに罹った時にて嗅覚味覚まで無くなって、その時の体験から多分思いついている。

   その場で出来ることを最大限にやりたい。

   まぁ、でも、楽しい作品にしたいですよね。

   切実さもすごい大事だけど、濱口竜介みたいにその中間を狙って、せっかく演劇をやるんだからまずは楽しみてぇし、と思う。

   「辛くなりたくない」や「しんどいしやめてぇ」のどっちもあるわ笑

   「そのどっちもなんだよな、なんか」って思う、最近。


そういう連想を楽しみたい

木村:メンバーについても、選民するみたいなのとか、なんかやめた。

   やめたっていうか、自分が面白いと思っていないものって、この世で面白い訳ではなく誰かが面白いものなんだろうなと思って、自分が面白いと思ったものを自分は作れるけど、みんなの面白いと思うものに参加したいし、参加してもらいたいみたいな気持ちもあるから、普通に喋っていくところから始めます。

   何かを無視するとかじゃなくて、「何でそれを面白いと思っているのか」っていうことにすごい興味がある。

   今までの経験とかがすごい関係してくる。例えばミュージカルが好きな人って、なんでこんなにミュージカルが好きなんだろうなと気になって訊いてみると、「そういうところが面白いんだ」ってすごい感動する。

   こっちは浅い肌触りだけでしか体感していないことに、深くまで関わっている人の話とか面白い。

   ぱっと見のつまらなさだけで「この人とは関わらない」みたいなことが無くなった。

   そういうことに諦めず、って言いながら、生存本能的な無意識下で「この人は無理だ」みたいことはあるんだろうけど、出来るだけ自分の意識としてはそうありたい。

   今回の旗揚げ公演では、みんなで作るとか言いながらも誰かが急に「これにするわ」とか言い始めたりして、そのインスピレーションを優先している。

   どんなに他の人が言っても譲れないというか、それって本当にその人がやりたいことなんだなって思うし、それは優先したい。

   だから旗揚げ公演のタイトル「はっぴーなひびび」も誰かをパッと思いついたから、すぐにそうなった。

   でも、なんとなくふらっと決めたことが何かしらには繋がっているから、そういう連想を楽しみたいとやっている気がするな。


負けた時のリアクションも含めて面白い

――おうち時間にオススメの一品を教えてください。

木村:オススメは「大乱闘スマッシュブラザーズ」。

   オンライン対戦もいいけど、人とその場でやるのも楽しい。「アーっ」みたいな負けた時のリアクションも含めて面白いですよね。

   大学の時の友達が、身内ネタについての話題の時に「なんか、もう、全人類身内だろ」みたいなことを言っていて。

   「確かに全人類身内だろうな」なんてことを思ったから、「0観客」の話に繋がる気がするけど、みんなで楽しむためにも、みんなで楽しむためには自分を楽しませることだと思うし、みんなで楽しむ事が大事なんだろうなと思います。


マジで全然関係ない人と知り合いになりたい

木村:「集団として開いていく」という言葉より「一緒にやっていこう」という感じだから、ゆくゆくはお客さんが「お客さん」というメンバーでいてもいい気もする。

   友達を増やしたい。仲良くなりたい。

   仲良くはなれなくても友達になれなくてもいいかもしれないけど、知り合いになりたい。

   だからとりあえずTwitterでたくさんフォローします笑

   でも、最近スパムとかも多いから不安だよな。

   なんかマジで全然関係ない人と知り合いになりたいなって。

   全然関係なくはないんだけど、世の中。

   お気軽に話しかけてください。こっちも話しかけます。

   堅苦しい演劇界とかじゃなくて、それこそファッションやっている人でもいいし、歌手やっている、音楽をやっている人でも、なんか別に演劇をやっていなくても、どっかそういうものが身近にあるようにしたいですね。

――例えば自宅の誕生日会に招かれて、出し物として上演をおこなうみたいな事も団体としてはアリですか?

木村:その家族だけにみたいなね笑

   公演じゃないのかもしれんね。それって展示なのかもしんないし、その時に合った表現をするんだろうな。

   普通に単純にイベントを開く。ちゃんと凄い面白い誕生日会をやります。

   それを一方的に言うんじゃなくて、こっちからも「どんな感じなんですか」と訊いて、「あぁ、すごい静かにやりたいです」「あれ、なら僕ら行かない方が良いかもですかね」みたいな笑

   そういうところから打ち合わせして始めるわ。

提示して交換していく 

(インタビュー後の寄稿)

木村:集団創作っていうスタイルは今作品ではとってるけど集団としてその時に取りたいスタイルを取ってくみたいなの、それが演劇だけじゃなくて展示なのかもしれないし、音楽なのかもしれないし、作演出が一人でというスタイルも取るし、それは企画提案者が提示して交換していく。

◎作品情報◎

ザジ・ズー/ZAZI・ZOO「IIOII」

~あらすじ~

必ずしもあるものと思ってるものがどんどんなくなっていく話

~出演者~

今井桃子、柿原寛子、木村友哉、徐永行、西﨑達磨、他

~参加チーム・タイムテーブル~

βチーム

2022年10月

14日(金)19:00

15日(土)15:00

16日(日)19:00※

※終演後にアフタートーク有(約20分予定)

受付・開場は開演の20分前。

上演時間は約90分予定(1団体につき約20分の上演+OP演奏15分)。