【試し読み】銀の河を漂い彷徨う2(第一章全文)
1.イベント参加に知名度は必要か
いつだったか、ツイッタのTLにこんな話題が流れてきて大変に驚いたことがある。
曰く。
『まだ有名じゃないので文学フリマへの出店を悩んでいる、という呟きを見たが~』的な(すみませんうろ覚えで)。
イベントに参加するハードルというのは各々思うところがあるだろうが、ひとつ声を大にして呟いてよろしいか。
我が『銀河書店』は! 文学フリマに参加するために立ち上げられたサークルである!!
言わずもがな、無名も無名。大手同人誌即売会に乗り込む勇気も度胸もなく、とにかく「サークル参加というものを経験してみたい」という動機でスタートしたのが弊サークルである。決して文学フリマが大手ではないという意味ではなく。敷居が低いというか、入り口が非常に広いイメージだ。
もう少し厳密に言えば、ネット界隈が苦手で自作品の発表に消極的だった私が、それでもどこか、オリジナル作品を発表できる場があれば……と酒の席で友人らに愚痴をこぼし、もとい相談したのが大元のきっかけである。
無論、イベント発足当初から参加しているという大ベテランもいらっしゃるだろう。全国7カ所で展開しているのを、可能な限りハシゴしている猛者もいると聞く。
その反面、初参加者が結構な割合でいるというのも印象的なデータだったと記憶している。勿論、多種多様なイベントにすでに出店経験があり、「文学フリマへの参加は初である」という出店者も、決して少なくはないだろう。そこに有名無名はあまり関係なく、動機は「参加してみたい!」の一言に尽きるのではないだろうか。
どんなイベントでも、開催期間や回数が増せば、ベテラン勢というのは増えていくのが道理だ。
そして、毎回一定数の初参加者がいてこそ、規模は年々大きくなっていくものであろう。事実、文学フリマ大阪は第10回目(2022年9月25日開催)にして、出店数・来場者数共に、コロナ禍以前も含めて過去最高を更新した。
まぁ、実際には開催場所や出店料、規模、イベント特有の特色なんかも関係してきて、最終的に自分に合うかどうかがカギになってくるのだろうが。
非常に内輪な話を正直に明かせば、私は初回の参加時から出店料の元を取れたことはない。せいぜい交通費が精一杯で、過去参加分の半数以上はそれすらも達成できていない。
それでも可能な限り、関西圏の開催に顔を出しているのは、何よりあの場の空気が好きだからである。
頒布物は勿論、売れるに超したことはない。が、私の場合、売れなくても構わないし、別にいちいち落ち込まない。いちサークル参加者として、ブースのいすに座っていたい。会場を行き交う人々を眺めて、その一部であることを満喫する。運が良ければお知り合いが増える。
そして何より、イベント前後というのは眠っていた衝動が叩き起こされるのか、はたまた未知のものを吸収するからなのか、それまで滞っていたいろんなもの(創作に限らない)が急に動き出すことがままあるのだ。
発表した作品は、できれば読んでもらいたい。お買い上げ頂けるとなお嬉しい。欲を言えば、感想もちょっとはほしい。
けれどそれ以前の、なんというか、書くエネルギーを補給したい。同人界隈に居続ける動機にしたい。私にとってそれは今のところ、リアルイベント会場が最も適している。
出店料はその補給エネルギーの対価であるので、頒布によって元が取れなくても構わないのだ。
参加頻度的に言えば、弊サークルも、もう初心者ではないだろう。
だが、有名かと問われれば本人も首を横に振るしかない。毎回新作を用意できるわけでもなし、凝った装丁の分厚い本を持ち込む予定も今のところない。
それでも、その日、その場で得たいものがあって会場に赴いている。
そんなイベントの参加のしかたがあってもいいじゃないかと、勝手に思っている。
あなたはいかがだろうか?