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みみをすます

インドで出会った青年

2022.10.24 12:31

何年か前に環とふたり、新婚旅行でインドを1ヶ月ちょっと旅をしたときにある一人の青年と出会った。


旅の終盤、僕らはガンジス川沿いにあるバラナシという地にたどり着いた。

そこで目にした衝撃的な数々の現実。

心身ともにボロッボロの雑巾みたいだった僕にはその世界感がなんとなく心地よく感じられた。いまでももう一度行きたいと思う地だ。


その町のルドラゲストハウスという日本人の女性の方が営む宿に泊まった時、宿のオーナーさんが僕らが会津から来たことを知り、「これから会津若松出身の方がくるよ」と教えてくれた。


程なくして、やって来た彼は僕の2つ下の青年だった。

仕事を辞めて、人生を求めて数ヶ月アジアを中心に一人旅をしている最中だった。

これまでの旅の道中で色々揉まれたようで、まさにそんな雰囲気を放っていた。


会津から来たということでなんとなく息があい、短い間だったがバラナシの町で一緒に一時を過ごした。ガンジス川で沐浴し、ボートに乗って川の上から夜の町を見、焼かれる人の煙を、燃える炎を眺め、その世界にたいしてしんみりとなにかを語り、なにかを共有した瞬間。


次の日僕らはそれぞれの地へと旅立ち、別れた。彼とはまた近いうちに会えるような気がした。

インドから帰り、春を迎えたころ、彼が僕らのもとに訪れてきた。

再会に、溢れる喜びに浸った。


そんな彼は頻繁に僕らのもとに遊びに来るようになり、暮らしの断片を一緒に楽しんだ。

そのうちに太郎布の地が気に入ったようで「引っ越します!」と言ってきた。

はじめて会ったときに何となくそんな感じがしたが、まさか本当にそうなるとは驚いた。


それでもすぐに住める空き家がなく、彼は2年間ほど町中の他の集落の家々を転々と引っ越し、太郎布に住める機会を待っていた。


それがついこの前のこと。

ついに空き地を借りられることとなり、

自分で山から木を切り、その木で小屋を作り、住むということとなった。


小屋作り、それは彼がずっと夢見ていたことだった。

それを聞いた時の嬉しさといったら果てしないもの!

この2年間の色々な苦難を思えば思うほどの喜び!


なんだか、いつかの自分自身を見ているようで。

あの頃の僕には持っていて今はもう持っていないものを彼は今持っている。

それが輝かしくて輝かしくて。


人生という短い旅のなかで、他の人の小屋作りを一緒に体験できることになるとは。


彼は今、喜びの中にいる。

その喜びを一緒に思い切り楽しんでみようと思う!