福江島
https://kotobank.jp/word/%E7%A6%8F%E6%B1%9F%E5%B3%B6-123907 【福江島(読み)ふくえじま】より
日本大百科全書(ニッポニカ)「福江島」の解説
福江島 ふくえじま
長崎県五島列島(ごとうれっとう)南端の島。面積326.34平方キロメートル。行政的には五島市に属する。島の南東部には鬼岳(おんだけ)、火岳(ひのだけ)、箕岳(みだけ)などの臼状(きゅうじょう)火山(ホマーテ)群や、富江(とみえ)の只狩山(ただかりやま)を噴出点とする低平な台状火山が噴出して、それぞれ半島部を形成し、北西部には京(きょう)ノ岳(たけ)の楯状(たてじょう)火山(アスピーテ)が噴出して三井楽(みいらく)の半島部を形成している。島の中央部は花崗(かこう)岩地帯で山内(やまのうち)の侵食盆地があり、ここを貫流する鰐川(わんごう)は長崎県屈指の長流で、下流部は岐宿(きしく)溶岩台地を刻んで峡谷状をなしている。島の北部はリアス式海岸で、奥浦(おくのうら)湾、唐船(とうせん)ノ浦(うら)、白石浦(しろいしうら)などの湾入があり、島の西南部でも著しい溺(おぼ)れ谷の地形が示され、玉之浦(たまのうら)の湾入がある。湾の西側に架橋された島山島(しまやましま)があり、湾内には七浦の入り江がある。東シナ海に面する大瀬崎(おおせざき)では、高さ50~100メートルの海食崖(がい)が延々20キロメートルも続いて雄大な景観を展開している。遣唐使の寄港地であったため、関係史跡が多い。また、キリシタン信仰の地であり、各地に天主堂が建てられた。現在も集落の信仰拠点として生きており、国や県の文化財に指定される教会も多い。ヘゴ自生北限地帯として国の天然記念物に指定される地域がある。国道384号が島内を巡り、福江港からは長崎港および五島各地への定期船が就航する。福江空港からは長崎空港、福岡空港への便がある。人口3万9096(2009)。
[石井泰義]
『『五島列島―九十九島―平戸島学術調査書』(1952・長崎県)』
[参照項目] | 大瀬崎 | 溺れ谷 | 海食崖 | 岐宿 | 臼状火山 | 五島(市) | 五島列島 | 楯状火山 | 玉之浦 | 富江 | 福江 | 三井楽 | 溶岩台地
鬼岳
大瀬崎〈五島市〉
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「福江島」の解説
福江島
ふくえじま
長崎県,五島列島南端の主島。1市4町からなり,福江市が中心であったが,2004年8月奈留島も含め1市5町が合併し五島市となった。島の中部を流れる鰐川の流域は山内盆地と呼ばれ水田地帯。その周囲は古第三紀 (おもに砂岩) の山地で,その外側に鬼岳 (317m) ,京ノ岳 (183m) ,および富江台地などがある。農主漁従の島で,五島牛の飼育で知られ,ミカン,葉タバコの栽培も行なわれる。漁業は沿岸の一本釣りと定置網漁が中心。玉之浦と岐宿 (きしく) 海岸はリアス海岸の景勝地で,玉之浦湾には荒川温泉がある。玉之浦湾は大正から昭和初期に漁船の前進基地として栄えた。火山岩の地域とリアス海岸地域の多くは西海国立公園に属する。遣唐使,倭寇の遺跡が多く,江戸時代に移住した隠れキリシタンの集落もある。面積 320.82km2。人口4万 3321 (2000) 。
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デジタル大辞泉「福江島」の解説
ふくえ‐じま【福江島】
長崎県西部、五島列島南端にある島。同列島の主島で、五島市に属する。面積328平方キロメートル、海岸線の長さ322キロメートル。最高点は島西部の父ちちヶ岳(標高461メートル)。楯状火山・臼状火山など火山地形が随所に見られる。深い入り江は遣唐使の停泊地として利用された。現在は、ハマチ・タイ・真珠の養殖が盛ん。北部と南西部の海岸はリアス式海岸が発達し、西海さいかい国立公園の一中心地となっている。
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百科事典マイペディア「福江島」の解説
福江島【ふくえじま】
長崎県五島列島南西端の島。列島中最大で,面積326.31km2。楯(たて)状火山の京ノ岳,臼状火山の鬼(おん)岳,溶岩台地の富江台地など各種の珍しい火山地形がみられ,海岸は屈曲に富み,西海国立公園の一中心。島全体が五島市の一部。
→関連項目岐宿[町]|西海国立公園|玉之浦[町]|富江[町]|三井楽[町]
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事典 日本の地域遺産「福江島」の解説
福江島
(長崎県五島市)
「美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。
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世界大百科事典 第2版「福江島」の解説
ふくえじま【福江島】
長崎県五島列島南端の島。面積327km2で,列島中最大である。行政的には福江市のほか,南松浦郡の富江,玉之浦,三井楽(みいらく),岐宿(きしゆく)の4町からなる。南東部には鬼岳(おんだけ)火山群があり,鬼岳(315m)には直径約200m,深さ70mの火口があり,なだらかな草原となっていて,頂上からの展望はすばらしい。また箕(み)岳(144m)の火口底は中学校の運動場に利用されている。南部の富江半島は標高平均20mの玄武岩の溶岩台地で,ところどころに井坑(いあな)と称する溶岩トンネルがみられる。
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世界大百科事典内の福江島の言及
【五島列島】より
…列島の胴体部は地塁山地で,その後の沈水により多くの瀬戸や湾入を生じ,美しいリアス海岸をみせる。地塁山地の東側には福江島の鬼岳(おんだけ)火山(315m)や富江溶岩台地が,西側には宇久島,小値賀島などの火山島や,京ノ岳火山(福江島北西端,183m)が形成されている。列島は日本の西端にあり,中国大陸に近く,かつて遣唐使の寄港地や倭寇(わこう)の根拠地となり,その遺跡は多い。
https://www.city.goto.nagasaki.jp/s014/010/010/020/290/20210322151509.html 【火山が生んだ絶景と豊かな暮らし 鬼岳(令和3年7月掲載)】より
季節ごとに表情を変える福江島のシンボル鬼岳
ちょっとユーモラスな形の鬼岳(標高 315m)。数年に一度の野焼きによって維持される、多種多様な草原植物は、春には一面緑色、秋には黄金色へと、季節ごとに表情を変えます。場所によっては、お椀状や盾状に見え方が変わるなど、登っても眺めても楽しい、福江島のシンボル的存在です。
約50万年前から噴火活動を開始した鬼岳周辺の11の単成火山を、総称して「鬼岳火山群」と呼びます。中でも約1 8,000年前に噴火した新しい火山の鬼岳は、その際の噴出物(スコリア)で出来た「スコリア丘」です。私たちの暮らしは、火山群の噴火で流れ出た溶岩台地の上に成り立っています。
鬼岳中腹にある五島椿園は、私の大好きな場所のひとつ。高台からは、同じ火山島である赤島・黄島・黒島が一望でき、爽快な気分にさせてくれます。天気の良い日には、時折友人とお弁当を持って出かけますが、子ども連れの家族が草スキーを楽しんでいたりして、なんとも微笑ましい光景に出会えます。
穏やかな姿からは、かつて噴火した火山とは想像できませんが、それがよくわかるバームクーヘンのような地層の断面を、鬼岳の麓で見ることができます。元々湾曲した地面に、噴火によりスコリアが降り積もり、滑らかな曲線美が完成されました。スコリア中の鉄分の酸化具合によって変化する色や、粒子の大きさなどから、噴火
の規模や時期までが分かるそうです。この地層は、この島の成り立ちを教えてくれる貴重な資源。多くの方に見てほしいなと思います。
知れば知るほど魅力的な五島。ジオガイド養成講座を受け、その思いはより強くなりました。今後も五島のあらゆる場所を訪れ、ジオの観点から、隠れた魅力を自分なりに発見していきたいです。
https://www.yamakei-online.com/yamanavi/yama.php?yama_id=18250 【鬼岳おにだけ】より
五島列島の福江島にある鬼岳火山群は、福江市上崎山町(現・五島市上崎山町)にあり、主峰鬼岳、火ノ岳(314m)、城岳、箕岳、臼岳の総称である。福江市の背後に優しい女性的な5つの連なりを見せている。特に南側からの眺めがよく、300年前の噴火による楯状火山(アスピーテ)の上に、次の噴火が起こってできた臼状火山(ホマーテ)で、その区切り目も遠望できる。こんな火山は世界的にもまれで、全山芝生に覆われており、古くから行楽地として人気がある。
毎年5月3日には、鬼岳凧合戦が催される。また噴出した火山弾は天然記念物に指定されている。
登山は福江港の近くの福江城祉を出発、五社神社から参道脇の旧登山道に入る。ほとんど直進していくと、鬼岳東側の駐車場のある登山口に着く。なお、五島福江空港から鬼岳登山口までタクシーの便がある。空港前から福江市に向かい、すぐ右折すると立派な舗装路が登山口の駐車場まで通じている。休憩舎や天文台の施設があり、そこから鬼岳神社に登り、広い稜線をピークを1つ越して最高点へ登る。五社神社から約1時間30分。展望は360度、五島灘に浮かぶ黒島、鐙瀬(あぶせ)海岸も南に見下ろせ、臼岳、箕岳、火ノ岳まで見渡せる。
http://www.kazan.or.jp/J/QA/topic/topic22.html 【火山の形状と地形 アスピーテ・トロイデ・ベロニーテ・ホマーテ】より
Question #92
Q 単成火山に特に興味をもっています。昨年夏、五島列島の小値賀島に 行ってきましたが今年は福江島を訪問しようと思っています。福江市 西南にはホマーテが8つ以上地図で認められます。この狭い地域に 海上(黒島、黄島等)もふくめて全てホマーテであるのはなぜで しょうか。 (6/18/98)
平木 英治:会社員:49
A
福江市の西南ではなくて南東には,鬼岳を含む複数のスコリア丘が密集した 玄武岩溶岩からなる地域があります.御指摘の小値賀島も同様にスコリア丘が 狭い場所に密集した玄武岩火山の地域です.これらのスコリア丘は伊豆半島の 大室山と同じような単成火山です.単成火山は地殻が引っ張られている場所に よく出現します(質問42の小山さんの回答も参考にして下さい).福江島や 小値賀島にこのような単成火山が密集する理由は,五島列島周辺の地殻が部分 的に開いているためであると思います.なお,ホマテとは形の割に大きい 火口を持つ火山砕屑丘のことで古くに用いられた言葉ですが,アスピーテ・ト ロイデ・ベロニーテなどと同様に,現在の火山学ではほとんど使用しません. (6/20/98)
中田節也(東大・火山センター)
Question #618
Q 鹿児島県山川町の者です。私の町に「竹山」という山が有ります。今,私の職場で,この山が「トロイデ」か「コニーデ」か問題になっています。是非,判定をお願いします。また,「トロイデ」「コニーデ」の違いをわかりやすく簡単に説明してください。 (05/19/00)
こーじ:地方公務員:31
A 竹山は確かに変わった形の山ですよね.3月に近くまで行きましたが,海岸へりにぬ っと烏帽子のように立っている姿はとても印象的です.この山はどうやってできたん だろうと不思議に感じられるのも当然でしょう.
さて,トロイデ,コニーデなどの言葉は,20世紀の始めごろドイツ人のシュナイダー が,火山を地形で分類した言葉です.簡単に言うと,トロイデは釣鐘のような,急傾 斜で上に凸の山腹を持つ火山,コニーデは富士山のような円錐形で,上に凹な山腹を 持つ火山のことです.シュナイダーの分類には,他にもアスピーテやホマーテなどが あり,学校の地理の授業で習った方も多いのではないでしょうか.ところが現在では 日本や世界の火山研究者の間では,使われていないのです.理由の一つには,火山を 外形だけで分類しているので,実際の内部構造や発達成長史を反映していないことが あります.そのため現在では,構造や成因を反映した,成層火山や溶岩ドーム,盾状 火山という言い方を使うようになっています.おおまかには,トロイデは溶岩ドーム ,コニーデは成層火山に相当しますが,実際には異なることがよくあるので,できれ ばシュナイダーの分類は使わないほうが良いかと思います.
さて肝心の竹山です.正確な年代はわかっていませんが,これは古い火山のマグマの 通り道が,硬いために侵食に耐えて残ったものと考えられています.こういうものを ,火山岩頸(かざんがんけい)と呼びます.竹山は,もとは地下にあったものが,今は 侵食されて地表に飛び出しているように見えるわけです. (6/05/00)
川辺禎久(工業技術院・地質調査所・火山地質)
Question #2758
Q こんにちは。火山の分類についてお伺いします。日本の中学校では溶岩の粘性によって楯状、成層、釣鐘状火山の3つに分類していますが、外国ではFissure, Shield, Dome, Ash-Cinder, Composite, Calderaなどに分けて教えられているようです。これらもまた溶岩の粘性による分類なのでしょうか?分類の基準とその種類について教えてください。 (09/27/02)
ナオッグ:教師:27
A こんにちはナオッグさん.火山の分類ということですね.
昔はもっぱら火山の地形だけで分類していました.例えばシュナイダー(1911)のコニ ーデ,トロイデといった分類は今でもマスコミや観光地の説明などで残っています. しかし今は表面の地形だけでは,その火山の成り立ちを必ずしも反映していないこと がわかってきたので,シュナイダーの分類は学術用語としては使われません.現在で は内部構造により注目した,成層火山,盾状火山などの用語が使われます.
盾状火山は粘性の低い,あまり爆発的噴火をしないマグマが,主に溶岩となって重な り,傾斜が緩やかな山体を作った火山です.ハワイが盾状火山の典型で,英語では Shield Volcanoです.一方,成層火山は粘性がやや高く,爆発的噴火による熱いマグ マのしぶき(火砕物)の割合が多いため,溶岩と火砕物の互層からなる傾斜の大きな山 体を持つ火山です.英語ではStrato Volcanoです.成層火山はスコリア丘(Scoria Cone, Cinder Cone)や溶岩ドーム(Lava Dome)などを火山体全体として含むことが多 いので,外国ではComposit Volcano(複合火山)と呼ぶことがあります.富士山や三宅 島など日本の火山の大部分はこの成層火山です.
釣鐘状火山というのは火山学用語では使われません.おそらく溶岩ドームのことだと 思いますが,粘性の大きなマグマが爆発的な噴火をすることなく地表に噴出してでき ます.有珠山の昭和新山や雲仙の平成新山が典型例です.マグマが地下を移動すると きは板状になって移動すると考えられていますが,この板状のマグマが地表に達する と,割れ(Fissure)噴火を起こします.粘性の低いマグマの噴火に多く見られます. 1983年の三宅島噴火がその例です.
カルデラ(Caldera)は,噴火や崩壊でできた大きな火口状地形のことで,おおよそ直 径1.6-2km以上のものをいいます.大量のマグマが爆発的な噴火で一気に噴出してで きたもの(例:阿蘇カルデラ)や,噴出物は多くないが地下でどこかにマグマが移動し てしまってできたもの(例:2000年三宅島噴火のカルデラ)などがあります.
これらの火山の形の違いは,どんな噴火様式で,どんな噴出物を,どのくらいの噴出 率で噴火するかで決まってきます.その噴火様式を決める大きな要因としてマグマの 粘性がある,と理解されればいいかと思います.なお,Q&Aの#3010にもありますよう に,自然は完全に分類できるものではなく,中間的なもの,複合したもの,例外的な ものが少なからず存在します.学校の先生にはマグマの粘性だけで一意に火山の形が 決まるわけではないということも,頭の片隅にでも記憶にとどめておいていただける と幸いです.
(10/29/02)
川邉禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門)
Question #3736
Q 高校で地理を教えていますが、アスピ-テやトロイデなどの火山地形は何語でしょうか。語尾からするとイタリア語などのラテン語起源のような感じがするのですが、いかがでしょうか。またいつ頃誰が提唱したのかも教えてください。 (12/31/02)
おおしま:高校教師:40
A 1911年にドイツ人のシュナイダーが火山を地形によって7つの基本形に分類し ました。アスピーテ(Aspite)は盾状火山で、トロイデ(Tholoide)は鐘状火 山 と訳されていますが溶岩ドームと同じです。これらの用語は地理の分野では まだ使われているようですが、火山学の分野では今はほとんど用いません。も はや日本と韓国以外ではこれらの用語は使っていないらしく、インターネットで 検索しても2国以外は引っかかりません。
(01/04/03)
中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)