アンブシュアって結局何を指している言葉?
すべての管楽器で使われている「アンブシュア」という言葉。これ、人によって使い方や解釈が少しずつ違っています。
「音を出すために必要な口周辺の使い方」について指す場合が最も多いかもしれません。アンブシュアを「作る」とか「良いアンブシュア」「アンブシュアがきれい」とか、それらはすべて「アンブシュアを作り出すことで(その)管楽器は音が出る」といった使われ方をしているように感じます。
しかし、僕の場合は少し違って、アンブシュアとは「音が出ている時の(第三者が見た)表面的な単なる見た目」と考えています。要するにあまり意味のあるものではない、ということです。
第三者(特に、指導者)が「アンブシュアが左右均等ではないから中央にしなさい」とか「楽器はまっすぐ前に向けて構えるべきだ」とか、そうした数学的中心、もしくは軍隊的な均一性(規律)から生まれる発想は、個体差が大きく存在している人間には通用しないのです。
良い演奏ができている時、良い音が出せている時、コントロールの自由度が高い時の、表面的な見た目を「その人にとっての良いアンブシュア」であると言うことはできますが、そこに何の意味もありません。
ただ、自分にとっての良い状態がわからない方や、奏法に悩みを持っている場合、その表面的な状況から推測するこはできます。しかしこれは大変リスクの高い行為なので安易に口を挟むことはしないに限ります。
いろんな考えを持った指導者がいますが、僕の場合は「アンブシュアを直す」のではなく、正しく体の器官が働いてバランスよい状態になってくると、自然とアンブシュアという「見た目」も安定してくると考えているので、表面的な修正のようなことはしないようにしています。
ですから、表面的に直そうとしてしまうので、鏡を見ることも反対です。
アンブシュアはフランス語の「アンブシュール」が元になっています。「谷から平野に抜けるところ」とか「河口(川から海に抜けるところ)」という意味です。そう考えると、どちらかと言えばアパチュア(唇にできた空気の通り穴)のことを指しているようにも感じます。
荻原明(おぎわらあきら)