映画メッセージからの圧巻のメッセージ。それはたった一人のヒーローの物語【大人の感想文】
映画『メッセージ』を見ました。英題は『ARRIVAL』。「到着」という意味だそうです。
公式サイトは、こちら。
ストーリーはこんな感じ。
突如地上に降り立った、巨大な球体型宇宙船。謎の知的生命体と意志の疎通をはかるために軍に雇われた言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は、“彼ら”が人類に<何>を伝えようとしているのかを探っていく。その謎を知ったルイーズを待ち受ける、美しくそして残酷な切なさを秘めた人類へのラストメッセージとは―。
ずっと気になっていた映画なのですが、なかなか見れなくて、やっとDVDを借りて見てみました。原作も読んでみたいんですよね。
感想は、想像以上でした。「レベルが違う!」や「すべての人の胸を打つSF超大作」など大層なキャッチコピーが付いていたので、けっこう期待値上がっていたのですが、軽く越された感じです。
これは確かにSF映画なのですが、その真髄はSFに非ず。宇宙人が来る時点でサイエンス・フィクションの大作に変わりはないのですが、そこがメインではありません。
そして、そのメインの物語に触れた時、あなたの中に確かな感動が残ることをお約束しましょう。以下ネタバレの感想です。まだ見てない人は、ここで引き返してぜひ見てみてね。
見ながら思い出した映画は、『宇宙戦争』や『今会いに行きます』や『シックス・センス』。でも、派手なシーンはほとんどありません。宇宙人との派手なドンパチを期待して見る映画ではありません。
生徒たちにも見て欲しい良作です。
メッセージ 大人の感想文
『たった一人のヒーロー』
もしも、この先に起こることが全てわかっていたら、
その先に、辛い別れや悲しみが待っていることを知っていたら、
それでも、あなたや私は、大切な人とともに過ごす道を選ぶかな。
これはそんな問いかけすら与えられなかった、一人のヒーローの物語だ。
『メッセージ』の主人公は、言語学のスペシャリスト。
宇宙人の言葉の解読のために軍に呼ばれ、彼らが「何のためにここへ来たのか」をはっきりさせるという役目を負う。
彼女はそこで、特殊な宇宙人の言語に触れ、「ある力」を授かる。この映画の全編を通して垣間見えるその力によって、世界は救われる。武器や争いや戦いなど経ずに、たった言葉一つで平和的に危機は去る。理想的な力だ。
でも、映画を見終わった後の私たちは、ふと、こんなことを思う。「彼女にとってその力は、はたして本当に必要なものだったのか」と。私たちは考える。「これは幸福な結末だったのだろうか」と。
昔からヒーローは、自分の身を投げ打って、何かを失って、世界を救うものだった。まさしく彼女はそんなヒーローだ。世界を救った。
でも、それによって失われたものは、彼女にしかわからないものだった。他の誰にも気づいてもらえない痛み。誰かに伝えたら、何かが壊れてしまうような苦しみ。
そんな何かを失い世界を救う主人公の心の機微を、名女優エイミー・アダムスが見事に演じきる。
パートナーである数学者を演じたジェレミー・レナーもすごく良かった。この人、アベンジャーズでよく見るけど、アクションよりこっちの方が向いてるんじゃないか。
彼らの知的な会話もこの映画の魅力の一つだ。洋風ジョークがよくわからない部分もあったけど、「なるほどね」って雰囲気を醸し出して見るとちょうどいい(ストーリー自体はわかりやすい)。
前半はちょっと退屈なところもあって、また昼間に見るには画面が暗くて多少見づらいところもあって、途中ね、少し眠くなることもあったけど、ちょうどいいタイミングで少しずつ驚きもあって、どうにか寝ずに後半までいけました(当たり前でしょ)。
そんなウトウトしながら見ていた前半戦だが、後半の怒涛のフラッシュバックの連続には、「おお」とか「なるほど」とか思わず声を出しながら見入ってしまった。圧巻。張られた伏線の解明とつながりには脱帽だ。
そして、例の力のくだりで程よく休憩していた脳と好奇心が掻き立てられ、私は想像を巡らせた。選ばれし者が、自分だったらどうするだろうか。あえて違う道を選び、未来を変えようとするだろうか。
映画のラストシーンで彼女はパートナーである数学者にこんな質問をする。
「これから起こり得ることを全部知っていたとしたらどうする?」
数学者の彼は、こんな風に答える。
「その時に感じた気持ちをもっと大切にするかもしれない」
なら、起こり得ることを知らない私たちは、なおさら一瞬一瞬を大切にすべきではないか。
もう一度言おう。この映画は、只のSF映画ではない。この映画はその物語を通して私たちへ問いかける。一人の女性の人生を通じて、武器とは何か?平和とは何か?生き方とは何か?よりよく生きるために必要なことは何かと。
そして、この映画は教えてくれる。大切なものの、守り方を。
そう、これは、ヒーローの物語だ。
私たちは、いつの時代だって、彼らから学ぶ。起こり得ない物語からだって教訓を得て、その勇姿に歓喜し、その姿勢を胸に刻みこむ。決して彼らのようになれはしないけれど、憧れ、近付こうと努力し、苦闘する。そして、成長する。思考が、想像力が、成長するのだ。
これは、世界を救った孤独なヒーローの物語。
そこから、私たちは何を学ぶだろうか。何を大切にして過ごすだろうか。
想像を巡らせて、頭を働かせてみよう。『メッセージ』は既に、投げかけられている。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
ちなみに、物語終盤、戦争を回避したあの中国語の一言とは何だったのでしょうか。私も気になって調べてみました。こんな意味らしいです。
「戦争には勝者はいない。ただ未亡人だけが残される」
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