『W旦那+(プラス)』第162話 三代目妄想劇場
2018.03.12 23:00
「理愛ちゃん‼」
「剛典さ…ん!?」
理愛は慌てて席を立ち、エレベーターの方へ走った。
(嘘でしょ?何故ここにいるの?)
銀髪を揺らし、エレベーターホールまで来た所で、追いついてきた剛典に後ろから抱きしめられた。
「は…離して下さい…」
息が止まりそうになる。
剛典の頬が耳に触れた…
息が荒い…
「しゅ…主人が待ってるので…離して」
「臣さんから全て聞いたよ」
ズキンと胸が痛んだ…
目を大きく見開き動揺を隠せない。
「子供は?生まれなかったの?」
「え…ええ…駄目でした…」
「理愛ちゃん…」
剛典は理愛と正面に向き合った。
両肩を持つ手に力が入った。
「俺の目を見て、ちゃんと答えて」
「も一回聞くよ。俺たちの子供は?」
理愛の目から涙が溢れた…
「理愛ちゃんの涙…初めて見た…」
真っ直ぐに理愛を見つめる眼差し…
もう嘘はつき通せない…
「生まれたんだね…」
全てを悟ったように剛典が言った。
その目は強い意志を持っていた。
「一歳になる女の子か…」
二人はロビーのソファーに横並びに座っている。
「地球に連れて来れる?」
理愛はなにも答えずただ泣きじゃくっている。
「理愛ちゃんがそんなに泣くなんて…なんか新鮮だね」
「あなたに子供なんて…まだ早すぎる…」
剛典は理愛を優しく抱きしめた…
「わかった…もうなにも言わなくていいから」
「……」
「子供を連れて地球においで」
「結婚しよ」
End