「奇跡の食品・納豆」の効果
フェースブック・Yoshihito Hashimotoさん投稿時期
もう一度知っておきたい、「奇跡の食品・納豆」の効果(週刊現代)
日本人の「ごはんのお供」の定番。だが、食卓でよく見かけているわりには、私たちは意外とその「全貌」を知らない。健康への効果、保存方法、食べ方……あらゆる観点から、納豆のすべてを明らかにする。
血栓を溶かす強力な効果
「納豆はすべての食品のなかで唯一、血栓を溶かす力を持った食品です。しかも、実験用の人工血栓なら一瞬で溶けるほどの強力な力を持っている。それゆえ、脳梗塞や心筋梗塞を予防する効果は非常に大きいのです。
しかし、これは納豆が持つ健康効果の一端にすぎません。納豆はほかにも、腸内環境の改善、殺菌作用、骨を強くする機能など様々な効果を持っています。私は納豆を研究し始めて30年を超えますが、この食品が秘めた力にはいまでも驚かされています」
こう語るのは、医学博士の須見洋行氏。同氏は長年にわたり納豆の研究を続け、'82年には納豆に含まれる「ナットウキナーゼ」という酵素を発見した。いわば「世界一納豆を知る男」である。
須見氏が語る通り、納豆は近年も様々な研究に基づいて新たな効果が発見されており、その効果は多岐にわたる。
そのため、この食品の「全貌」については意外と知られていないが、実に驚くような健康効果を秘めているのだ。
ここでは、その効果の全体像をご紹介しよう。
●脳梗塞、心筋梗塞を予防する
まずは、脳梗塞と心筋梗塞を予防する効果。日本人の死因のトップ5のうちの2つだが、納豆による予防効果が明らかになってきた。
納豆をよく食べる食習慣を持つ人は、そうでない人に比べて、脳卒中(脳梗塞、脳出血の総称)で亡くなる割合がおよそ3割も低くなる――こんな研究の結果が、アメリカの臨床栄養学の学術誌『American Journal of Clinical Nutrition』に掲載されたのは昨年2月のこと。岐阜大学の永田知里教授らのチームによる研究だ。
岐阜県高山市で約3万人の住人を対象に、食生活についてアンケート調査を実施。16年間にわたって追跡調査を行った結果、納豆の摂取量が多いグループは、少ないグループに比べて循環器の疾患による死亡率が低いことが分かった。
なかでも脳卒中、とくに脳梗塞による死亡のリスクが大きく低下していることが明らかになったのである。なぜなのか。
「脳梗塞や心筋梗塞は、血液の塊である血栓が血管に詰まることによって発症します。血管が詰まった先に血液が回らなくなり、細胞が壊死してしまう。
納豆に含まれるナットウキナーゼは、前述したように一度できてしまった血栓を溶かす強力な作用を持っており、それが脳梗塞などの予防につながっているのです」(前出・須見氏)
こうした納豆の効果によって、岐阜大学のチームの研究結果が生じたと考えられる。
●動脈硬化を防ぐ
同チームの研究によれば、納豆を食べることによって、脳梗塞だけではなく、循環器疾患「全般」のリスクも下がった。
これは、納豆が動脈硬化を防ぐ力を持っているからだ。
須見氏が続ける。
「納豆に含まれる『レシチン』という物質は、血液をドロドロにして動脈硬化を引き起こすLDLコレステロールや中性脂肪を除去する力があるのです」
血糖値の上昇を抑える
NTTデータや佐賀県有田町などが共同で行った研究ではその効果が如実に現れている。
男女52人に、4週間1日30g(1パック相当)の納豆を食べさせ続けた結果、コレステロール値が高いグループ、中性脂肪血が高いグループでは、それぞれの数値が10%以上も低下していたことが明らかになった。
「さらに『リノール酸』や『リノレン酸』は、血管を強く、しなやかに保つ力を持っています。血管を健康に保つ効果は非常に大きいのです」(須見氏)
最新の研究では、納豆には、動脈硬化の主要な原因となる「肥満」を改善する効果があることも分かってきている。東京都立食品技術センター主任研究員の細井知弘氏はこう語る。
「血液中には『AIM』というタンパク質があり、これが少ないと人間は肥満になりやすい。しかし、納豆を摂取することで、このAIMの濃度を適切に調節できる可能性があるのです」
●糖尿病を予防
厚生労働省の調査によれば、いま日本には「糖尿病が強く疑われる者」が、約1000万人いると推計されている。
そんななか納豆は、糖尿病を予防する力を持っているとして注目を浴びている。
前出の須見氏が解説する。
「糖尿病は、血糖値の急激な上昇と低下が繰り返されることによって発症しますが、納豆にふんだんに含まれる食物繊維やビタミンB2には、糖質と一緒に摂取した際に血糖値の上昇を抑える効果があるのです。
また、レシチンは、糖質の吸収を促すインスリンを分泌させる力を持っています」
●認知症の予防
さらに、こうした血糖値の「急激な上昇」は、認知症につながることも分かっている。食後高血糖が続くことで産出される有害物が脳細胞にダメージを与えるのだ。それゆえ納豆は、認知症の予防につながると考えられている。
認知症については、納豆に含まれるほかの物質の効果も見逃してはならない。
「納豆には、神経伝達物質(アセチルコリン)を合成するレシチンや、伝達物質そのものであるアスパラギン酸、脳の活性物質として知られる不飽和脂肪酸などが含まれています。これらは記憶力を高める効果があるのです」(須見氏)
●骨折を予防
納豆が持つ力のなかで、意外に知られていないのが、骨を強くする効果だ。全国納豆協同組合連合会の緒方則行氏が解説する。
「納豆に含まれるビタミンK2は、骨の形成を促進する性質を持っており、骨粗鬆症を予防する効果があります。ジャコやシラスなどカルシウムをたくさん含む食品と一緒に食べるといっそう効果的です」
40代以上の男女の大腿骨骨折者の割合を都道府県別に調べたデータがあるが、それを見ると明らかに「西高東低」。とくに関西圏の骨折者の割合が高くなっていることが分かる。
これはもともと、関西では、納豆を食べる文化がなかったことの影響だとする専門家もおり、日本ビタミン学会の報告によれば、納豆の消費量が多い都道府県ほど、骨折の割合が低いという。
腸内環境を整える
●がんを予防する
いま研究が旺盛に行われているのが、納豆の「がん予防」の効果だ。納豆にふんだんに含まれるイソフラボンは女性ホルモンと似た働きをし、乳がんや前立腺がんを予防できるということが知られてきた。
最新の研究では、納豆由来の「抗菌ペプチド」という物質が、がん細胞の死滅に効果があることが分かってきている。その研究に携わっている秋田大学理工学部の伊藤英晃教授が言う。
「私たちの研究で、抗菌ペプチドが、各種がん細胞や肺炎レンサ球菌などを殺傷する強力な力を持っていることが分かりました。
納豆を食べることで、体内のがん細胞が死ぬかどうかという点についてはまだ研究の途上ですが、アメリカでは抗菌ペプチドを用いた皮膚がんの治験も行われており、今後、様々な応用が期待されています」
●アレルギー性鼻炎を改善する
NPO日本健康増進支援機構理事長の榎本雅夫氏が語る。
「我々の研究で、納豆は、ハウスダストやダニを原因とする『通年性』のアレルギー性鼻炎に効果があることが分かりました。
納豆を4週間食べ続けたグループで問診の結果が改善し、アレルギー症状が出る際に増える『好酸球』の数が抑えられていたことも明らかになりました。1日1パック程度の納豆を食べることで、症状が改善する可能性は高い」
●腸内環境を整える
「納豆菌は、腸内の『活性酸素種』を除去し、乳酸菌やビフィズス菌が住みやすい環境をつくり出します。
納豆菌には消化の働きを助ける効果もあり、大豆に含まれるオリゴ糖や食物繊維の働きとあわせて、腸内環境を整え便通をスムーズにしてくれるのです」(前出・細井氏)
●O-157感染を予防する
病原性大腸菌O-157は、高齢者、幼児や免疫が弱っている人が感染すると死亡することもあるが、納豆はこの細菌への対抗力を秘めている。前出・須見氏が解説する。
「納豆の『ジピコリン酸』という物質が強い抗菌作用を持っており、O-157を阻害すると考えられています。
また、そのほかの抗菌作用も強く、納豆を食べることで感染症になりにくくなるのです」
●長寿効果
納豆には長寿効果もある。カギを握るのは「ポリアミン」。
「ポリアミンは、肌のハリをよくする、動脈硬化を防ぐなどアンチエイジング効果が高く、老化そのものを食い止めるというイメージです」(前出・須見氏)
人間の中年期に相当するマウスにポリアミンを投与したところ、毛並みのツヤが維持され、死亡率が低下したという実験結果も出ている。
食べれば確実に健康に資する「奇跡の食品」。それが納豆なのだ。
「週刊現代」2018年1月27日号より