13歳、スア
13歳、スア
Wonder Years/Yeolsesal, Soo-ah
2007年11月21日 有楽町 朝日ホールにて(第8回東京フィルメックス)
(2007年:韓国:95分:キム・ヒジョン)
コンペティション作品
この映画は女性監督、キム・ヒジョンさんの長編第一作目だそうです。
監督が、言っていたことですが、「10代の女の子が引っぱっていく映画」です。
もちろん、13歳の女の子、スアが主人公ではありますが、日本映画『14歳』と同じようでいて、この映画は13歳の立場から10代を描いているし、『14歳』という映画は、大人が14歳を振り返る映画でした。
同じ10代を描くにしても、細かい所の違い・・・というものを感じます。
スアは父を事故でなくして母と2人暮らし。
母は最近、廃品回収業の男性と仲良くなって、10代らしい潔癖さで、それを疎ましく思っています。
この映画の特徴は、13歳だから、中学生であっても学校のシーンがひとつも出てこないところです。
スアが学校から帰った後、または、学校へ行く前・・・といった家庭を中心としていて、13歳のたまり場である「学校」は一切出てきません。
学校でのあれこれもあるけれど、学校以外の過ごし方・・・というのが、微妙なんですね。
学校が終わった後、誰と一緒に過ごすか・・・が結構大事です。
仲良くなった、と思ったお金持の女の子は、すぐに離反してしまい、密かに傷つくスア。
ちょっと不良みたいな子とつきあっても、なんとなく居心地が悪いスア。
母と一緒にいても、いつも余計な男の人がいて、癪にさわるスア。
・・・自然とスアは無口になっていきます。
スアは、家へ帰る途中、ずっと自分の歩数を頭の中で数えています。
映画の冒頭は、そんなスアが「・・・・78、79、80・・・」とぶつぶつ自分の歩数を数えてながら市場を歩く様子です。
もう、友だちも親も考えたくないことばかり・・・だから、無心になりたくて、意味なく自分の歩数を数えるようになる・・・そんな繊細な13歳の女の子の気持。
スアを演じたイ・セヨンという女の子は、もう色々なテレビドラマや映画に出演している俳優さんですが、この映画で初めて「演技」をした、と思ったと言ったそうです。
本当は可愛い顔ですが、それを隠すようなメガネに仏頂面。
反抗期の繊細な不機嫌を見事に演じていました。
映画は友人たちよりも、母親との関係がクローズアップされていき、スアが少しだけ、大人たちを受け入れる・・・その結果、友人たちの色々な面も冷静に見られるようになる、そんな些細な事を丁寧に映画にしています。
自分が13歳だったころ・・・を思い出す・・・というより、ひとりの女の子、スアを見守るような気持になる映画。スアの気持がすっと観ている側になじんでくる映画です。