ジェリー・フィッシュ(原題)
ジェリー・フィッシュ(原題)
Jelly Fish/Meduzot
2007年11月20日 有楽町 朝日ホールにて(第8回東京フィルメックス)
(2007年:イスラエル:78分:監督 エトガー・ケレト、シラ・ゲフェン)
コンペティション作品
共同監督のひとり、エトガー・ケレトという人は、本来は作家だそうで、映画は初監督だそうです。
しかし、映像は透明感に満ちており、人々は可愛らしくもなんとなく哀愁が漂う、わたしはとても好きな映画です。
イスラエル・・・とひとことで言っても、テレビのニュースで見るような「戦争にあけくれる中近東」とは全くかけはなれた、テルアビブの海辺のリゾート地での3組の人間模様。
1人暮らしの女性、バティアは、結婚式場のウェイトレスをしています。
イキイキと、というより、髪につけたぴかぴか光る電飾のティアラは曲がり、髪はくしゃくしゃ、服のボタンは掛け違え、名札も曲がっていて、マネージャーから、「だらしない、くびにするぞ」とお小言をくらってばかり。
結婚したばかりの若い夫婦。新婦のケイトは、結婚式場で、なんと足を骨折してしまい、折角、海辺のリゾートホテルに新婚旅行に来たのに、部屋に閉じこもるばかり・・・。
予約した部屋は気に入らない、音がうるさい・・・と夫を困らせる。
そんな時、出合った不思議な女性。
フィリピン人のジョイは家族を置いて、ハウスメイドとして出稼ぎに来ています。
自称、舞台女優の娘から、母の面倒を見て欲しいと言われたものの、ジョイは英語しかできなくて、気難しい母親と一緒に過ごすことになる。
・・・という3組の話が交差して描かれます。
バティアは、クビになってしまい、海に行った時、迷子らしい3歳くらいの女の子に出会う。
浮き輪をお腹につけたまま、何を聞いても答えないけれど、とにかくついてくる女の子。
警察に行っても、届け出がなくて、バティアはその女の子を(浮き輪をつけたまま)、アパートに連れてくることになる。
この3組は、それぞれコミュニケーションが上手くとれないのですね。
でも、それでもなんとかなるさ・・・とその場しのぎで時間を過ごしているようです。
それを、海辺に打ち上げられたクラゲのよう・・・・。
いきなり子供を押しつけられて、どうしよう・・・しかもこの女の子が猫みたいで、呼ぶと来ないけれど、呼ばないと来るというきままな子。
アパートが古くて水が天上からぼたぼた・・・を下で口開けて、飲んだりします。
絶縁している母の所へいって、子供の時の服を持ってきて、着せようと、浮き輪をとろうとすると、「キィーーーー」と叫ぶから、浮き輪の上からワンピースを着せる。
ヘブライ語が出来なくて、でもハウスメイドとして働くジョイは、会話が出来ないながらもどうにかしようと思うけれど、母親は頑な。
ホテルにこもってばかりの若夫婦は、だんだん疲れてきて会話がなくなってしまう。
この映画は、「しぶしぶながら自分でどうにかしなくては・・・」と気がつく3組で、それが海辺という風景で上手くつながっています。
フィリピンにいる息子に帆船のプラモデルをプレゼントしたいな・・・とウィンドウを眺めるジョイ。
ホテルの窓から綺麗な海を憂鬱に眺めるケイト。
海辺で拾った?女の子に手こずるバティア。
でも、その女の子がいなくなると、心配で心配で、探し回る。
そして、3組にはそれぞれ小さな幸せの結末が待っている。
それをさらり・・・と透明な空気で出した所が、小品映画ながら、とても可愛らしく、また、哀愁も漂っていて、笑ってしまうような、しみじみするような・・・喜びと哀しみを綺麗に描き分けた映画ですね。