花蓮の夏
花蓮の夏
盛夏光年/Eternal Summer
2007年11月18日 渋谷 ユーロスペースにて
(2006年:台湾:95分:監督 レスト・チャン)
後から知ったことですが、この映画の監督、レスト・チャンは1981年生まれで、今(2007年)26歳で、この映画を撮った時は、多分24歳くらいでしょう。
しかし、映画は、とても落ち着いており、監督が言うように25歳までにこういった「迷い」のある青春ものを撮っておきたかった、というのがわかる、しっとりとした青春映画です。
去年の東京国際映画祭では英語タイトルの直訳「永遠の夏」で公開されたそうですが、花蓮というのは、主人公たちが住んでいる県の名前で、花蓮県からだそうですが、綺麗な名前です。
漢字ならではの伝わるニュアンスですね。
男の子2人と女の子1人の恋愛感情。
といっても女の子を2人の男の子がとりあう、のではなく、AはBが好き、BはCが好き、そして、CはAが好き・・・・という気持がゆれる様子です。
表面上はあくまでも親友だったり、ちょっとした恋心だったりします。
台湾の子供時代の風景というのが、日本の風景によく似ています。
田園の緑が美しくくて、制服を着た男の子が、自転車で二人乗りをする。
小学生の時から優等生だったジェンシン(ブライアン・チャン)と勉強は出来ない、厄介もののショウヘン(ジョゼフ・チャン)
小学校のテストでは、点数が低いとおでこに点数を書かれて教壇に立たされたりします。
もちろん、優等生のジェンシンはそんなことはなく、ショウヘンは、おでこに点数書かれてたたされても平気です。
小学校の先生が、優等生のジェンシンに、厄介者で友だちがいないショウヘンと友だちになってあげてくれないか・・・と言われたことから、仲良くなった2人。
しかし、高校生になると2人は同じ高校に通う親友同士。
しかも、ジェンシンは、どうもショウヘンに対して親しみ以上の気持が出てきてしまう・・・同性への恋心。
ひたすら隠そうとしますが、おおらかなショウヘンは全く気がつかない。お前やっぱり親友だよな、同じ大学行こうな!なんて言われて、気持複雑なジェンシンです。
好きになると突進するばかりでなく、むしろ近づきがたくなってしまう・・・そんな惑いが出てきます。
そこへ、孤独な女の子、ホイジャ(ケイト・ヤン)が転校してくる。
皆と騒ぐことなく、なんとなく、暗い影を持つ女の子ですが、ショウヘンはホイジャが気になる。ホイジャは、ジェンシンが気になる。
なんだかんだいって3人で一緒が多いけれど、それぞれが、想いを秘めているけれど、おおっぴらにしたらこの3人の輪はくずれてしまう。
そんなことを心配すると、自分の気持ばかりを押しつけるわけにはいかない・・・・と違う大学に行こうとするジェンシンです。
最初から気があった同士でなく、先生に言われて優等生らしい義務をはたしただけなのに・・・。
どうしてこんなことになるのかな・・・美しい自然の風景の中で、惑いの表情を浮かべる男の子。
しかし、そんな想いもそれぞれ口に出す時がくる・・・そんな、夏の風景の中での「夏の惑い」
そういうしっとりとした雰囲気がとても良くて、空気が綺麗な映画。
確かに今の年になってみると、自分の考えというのはある程度決まってくる、自信がついてくるけれど、「好きな人にどうしたらいいかわからない」という迷いはなくなってしまいました。
いつ、どこでなくしたか、忘れてしまったような所で、わたしは忘れてしまいました。
この映画はそんな「迷い」という線を飛び越える一瞬を綺麗な映画にしていて、自分の忘れてしまった何かを、ああ、と胸の中に甦らせる映画なのですね。
ただの昔は良かった、だけの映画でなく不変的な気持をスムーズに写真的に映画にしているところがとてもいいし、きっと、監督が年をとって、30代、40代になったらこのような映画はもう、作れないだろうと思います。
そこにもう、若干24歳で気がついていた監督は、大変、頭の良い、冷静な人のように思えます。