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更夜飯店

無用

2018.03.14 10:11

無用

Useless/Wu Yung

2007年11月17日 東京国際フォーラム・ホールにて(第8回東京フィルメックス)

(2007年:中国:84分:監督 ジャ・ジャンクー)

特別招待作品

 ジャ・ジャンクー監督は、アーティストのドキュメンタリー三部作を作っているそうで、これは、第二弾。

第一弾は、やはり特別招待作品として上映された『東 Tong』で、画家を撮り、この映画では、ファッション・デザイナーを撮っています。

これから撮る予定のアーティストは、建築家とのこと。

 ジャ・ジャンクー監督が、映画の後に言っていたのですが、「フィクションを撮るとドキュメンタリーのようだと言われ、ドキュメンタリーを撮るとフィクションのようだと言われる」そうです。

 いわゆる、ドキュメンタリーの手法・・・からかけ離れた感じがします。

字幕による説明もナレーションによる説明もなく、ただ、その場を撮影しているだけ、のように見えるのです。

訴えたいものがありますっ、という力みが全くなく、カメラの前の監督は、風景をただ、じっと目を細めて見ているだけ、のよう。

 だから、場所の説明もないし、人についての説明もないから、劇的なものはない。

ジャ・ジャンクー監督の映画はフィクションでも、ドキュメンタリーでも「動かない」のですね。

 この映画では、ファッション・デザイナー、馬可さんという若い女性だけでなく、最初は、中国の縫製工場の様子を撮り、その後、いきなり、前衛的・・・ともいえるファッションショーをする馬可さんになり、突然といっていいほど、監督の故郷である山西省の労働者たちの出入りする縫製店のある一家をじっくりととらえます。

 メイド・イン・チャイナ・・・中国製の衣服は安い・・・そんなイメージから抜け出そうと、あえて、土をイメージしたファッション(このブランド名が「無用」という名前)を作り上げる馬可さんもいれば、昔ながらに、大工場でミシンを踏む人たちもいれば、家族だけで細々と縫製店をする人たちもいる。

 たかが、服、されど服。

馬可さんの作る服と縫製工場で作られる服は全く違うけれど、どちらも「メイド・イン・チャイナ」なのです。

変わりゆく中国・・・という見方も出来ますし、監督自身も変わっていく中国の姿を・・・と話されていましたが、わたしが一番感じたのは、「服」というものの基本的な不変さです。

 普通、人は服を着る。

何を着るか・・・そんなことも話題になる。

ブランド品の目玉は服。流行の目玉も服。

しかし、普段の生活・・・下着や靴下など欠かせないのも服。

布地をこれだけ映した映画も少ないのではないかと思います。

その布地で、「服」というものが作られていくのです。当たり前で気がつかなかった服の存在感。そんなものを感じました。