ガレージ
ガレージ
GARASI
2007年11月4日 NHKふれあいホールにて(第8回NHKアジアフィルムフェスティバル)
(2007年:インドネシア:110分:監督 アガン・セントーサ)
この映画のインドネシアのインディーズ・ロックバンド、GARASI。(GARASIはガレージのこと)
もう、めちゃくちゃ、かっこいい!!!!
もう、スクリーンから発せられる、音楽が迫力で、ほれぼれしちゃう。
それもそのはず、この映画は、スターを使ったのではなく、オーディションで、歌、楽器、作詞作曲、演技が出来て、役柄に合う3人を選んで、実際にGARASIというバンドを結成。
映画で、歌われて演奏されている曲はすべて、GARASIが作ったオリジナル曲です。
ありがちな、ロックの名曲をコピーするなんてことはしないで、オリジナルにこだわった所が、芯の通った映画で、とても好きです。
母ひとり子ひとりの女の子、ガイアはギターを弾きながらボーカル担当。ちょっと無愛想で、パンク風ファッション。
民族音楽一家の次男、アガは、生真面目な性格で、ギター、キーボードなどを担当。伝統音楽ばかりの家では、孤立している。
アガの友人のアワンは、日本の音楽学校に行っていた、というドラム担当。明るくて、そのくせ、気が利くいい奴。
青春物語を作るのに、最低限の3人というバンドにしたことが良かったと思います。
話はちょっとそれますが・・・わたしは、ポリスが好きでした。
ポリスは、3人のバンドで、歌詞も曲も比較的わかりやすいのです。
後に、バンドが趣味の人に、「ポリスなんか、やりやすいんじゃないの?」と何気なく言ったら・・・・
「とんでもない!!!3人なんてねぇ。よっぽど上手い3人でないと成り立たなくて、大勢だったらごまかせるけれど3人はごまかせないんだよ。ポリスなんて、ものすごく上手い3人で、とても出来ないよっ!」と、反論されて、なるほどそうなのか・・・と思いました。
この映画で、その「上手い3人」が出合うのはCD・レコード屋です。
このお店の店員さんは、何かを買おうとする客に「クイズ」を出す。その音楽クイズに答えられないと、売ってくれないのです。
実際、小学生くらいの子がロック版を買おうとすると、クイズ!ぶぶ~~~不正解だから、ダメ。といって「初心者読本」なんて渡すのです。
ロックが、音楽が、わかっている客しか相手にしないよ!というすごい店です。
わたしが行ったら、即、「初心者読本」だっ!
しかし、真面目なロック青年アガは、上級問題なんか軽くクリア。むしろ、店員よりもくわしかったりします。
ガイアがとりおきしておいたテープを買ってしまう。
後から来たガイアが、「えっ!でも、クイズは????」
そこには、ライブハウスで歌うガイアを、見ていたアガがいて、一緒にやらないか、と誘う。
ドラムには、日本で音楽学んできた、アワンがいるから・・・3人でGARASI結成。
本当にロックが好きでたまらない、というのは、「同じ」ではなくて3人それぞれベクトルが違うのですが、試行錯誤を重ねていく内に、だんだんGARASIの曲を作り上げていく3人。
何でもそうなのですが、好きなものに一途になれるのは、若者の特権かもしれない、と思います。
仕事、家庭、お金、健康・・・そんなものに、まだ完全にしばられない、一途に好きなものに突進する体力というか。
まさに、3人はその特権街道をつっぱしるのです。
レコード屋から出発して順調に、ライブハウスへ、CD発売、ラジオ番組出演・・・と上手くいくはずが、実は惹かれ合っているガイアとアガはお互いを意識するあまりぎくしゃくしてしまう。
間に立つアワンですが、それでも、技術はあっても、頑固で生真面目すぎるアガとギクシャクする。
ガイアをなぐさめるアワン・・・それを見て、嫉妬をするアガ。
いや~~~若者像だなぁ。いいなぁ。それがなんとも照れくさくなく、さらり、、、と描くのですね。
しかし、有名になってきたGARAIですが、ガイアが私生児である、という事をすっぱぬかれてしまう。
日本だったら、まぁ、私生児でもねぇ・・・ですが、そこはインドネシア。
不倫の子だったなんて!!!って大バッシングされるのです。大家さんからも、出ていってくれ、と言われてしまう。
母は、ずっと隠していて、縁を切った両親とまた仲良くしたいし、店も持ちたい・・・とガイアはひとりになってしまう。
自分のせいではないのに、汚れの人間、犯罪者のように追い回されるなんて、ガイアは可哀想ですが、これがインドネシア事情なのかもしれません。
アガもアワンもさすがに驚く。
さて、GARASIは大ピンチ・・・しかし、そこで3人は逃げたりしないのです。
「音楽がロックが好きだった頃に戻ろう」と周りの目などはねとばす演奏で、実力で、口さがない人々を圧倒してしまう。
もう、ここら辺になるとわたしはすっかりGARASIのファンだから、つい、観ている側も力が入る。
ガイアを演じた女の子が、女の子らしくない、かっこいいファッションとインパクトのある歌。
アガを演じた男の子が、背が高くてハンサムだけれども、どこか高慢のような頑なな雰囲気を持つ。
アワンは、愛嬌があって、男は愛嬌だね、なんて思います。
そのくせ、ドラムは重みがあって、演奏迫力。普段のおちゃらけた感じとドラムを叩く時の顔が全く違う。
本物志向で、インデペンデント精神を描いた映画として、素晴らしい映画であり、見終った後の爽快感もたまらなく、すっきり。
いや、本当にこの映画、好きですね。若いのに骨太でね。